魔法武士・種子島時堯

克全

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本編

近江国衆始末

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1542年11月20日『京・種子島屋敷』種子島権中納言時堯・14歳

「はてさて、公方と弾正少弼は別々に逃げたでおじゃるな?」

「はい、弾正少弼殿は長享・延徳の乱で、父の大膳大夫殿が甲賀郡山間部で遊撃戦を展開して勝った故事に習ったのでしょう」

「そうでおじゃるのか? そのような故事があるのなら何故公方はついて行かなのでおじゃる?」
  
「どちらも将軍家の内乱ですから、それを嫌ったのではないでしょうか」

「そうでおじゃるのか?」

「はい、長享の乱では大膳大夫討伐中に足利義尚公が陣没されてますし、延徳の乱では明応の政変を招き、畠山政長殿は戦死し足利義材公は幽閉され奉公衆は解体されてしまいました。足利義晴公も、自分が幽閉されたり陣没することを恐れられたのかもしれません」

「なるほど、納得したでおじゃる。六角家の家臣衆の多くが権中納言殿に降伏臣従しておじゃるが、甲賀郡だけ手心を加えたのは、2人を分断するつもりだったからでおじゃるな?」

「はい、公方・六角家・比叡山延暦寺を一旦分断して、そののち攻め滅ぼすか追放するつもりでございます」

「それで公家衆に近江国衆へ手紙を書かせておじゃったのだな」

「種子島家を恐れて降るよりも、懇意の公家衆に説得されて降ったと言う、大義名分を与えてあげる事が大切かと考えました」

「まあどちらにしても、城地を失う事に違いはないでおじゃるが、六衛府の将監・将曹や大尉・少尉を与えられ、朝廷から扶持を頂けるとなれば面目はたつでおじゃるか?」

「一門一族家臣を種子島家の家臣に取られたとしても、当主や嫡男が地下家として血脈と家名が残るのなら、戦って族滅するよりはよいと考えたのでございましょう」

「六角家の両藤と言われる後藤家の壱岐守や進藤家の山城守、永原越前守・平井加賀守・山岡美作守などに一騎打ちを応じておじゃったのは、降伏臣従し易くしてやるためでおじゃるか?」

「その通りでございます、当主や嫡男が僅かな手勢と共に六角弾正少弼につき従う事も認め、何があっても血脈と家名が残るようにしてやりました」

「蒲生定秀の一騎打ちの望みを拒んだのは、甥で蒲生宗家当主・蒲生秀紀を謀殺する卑怯をおこなったためでおじゃったな?」

「はい、あのような卑怯者の一騎打ちを受けるなど、我が名誉を汚すことになります」

「蒲生家は六角に付き従って滅ぶしかないでおじゃるな」

「家中の侍や地侍・領民は全て種子島家で召し抱える事になっております、定秀と僅かな手勢など恐れることはございません」

「権中納言殿は恐ろしいで人でおじゃるな!」

六角大膳大夫高頼:南近江国守護職・観音寺城主
六角弾正少弼定頼:室町幕府管領代・南近江国守護職・観音寺城主
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