魔法武士・種子島時堯

克全

文字の大きさ
275 / 300
本編

石見国始末

しおりを挟む
1547年4月:温泉津城砦群:種子島権大納言時堯と大内晴持

「皆の者、よくぞ戦い抜いてくれた! あれほどの大敗を喫したにも拘らず、大内家に忠誠を尽してくれたこと、心から感謝いたす」

「何を申されますか、普段から大殿や若殿の厚恩を御受けしている我ら一同、身命を賭して奉公させていただきます」

「よくぞ申してくれた、この度の働きと共に今の言葉、この晴持決して忘れぬ」

「「「「「はっはぁ~」」」」」

 今回月山富田城をガッチリと包囲した上で、有り余る兵力を使って石見に攻め込んだ。しかし石見侵攻に当たって1つの問題があった。それは大内軍が月山富田城で大敗を喫したにも拘らず、大内家に忠誠を尽して、尼子晴久の逆撃に籠城で対抗してくれた国衆・地侍が多くいてくれたのだ。

 忠誠を尽してくれた彼らを慰撫するためには、大内義隆が直接石見に乗り込むのが1番だ。だが出雲・石見に関しては俺が制圧した上で、安芸・備後・備中に代えて譲渡すると言う約束をしていた。だから相談を持ちかけると言う形態で、大内義隆に石見入りを打診してみたのだが。陶隆房などの重臣たちの猛烈な反対があり、実現できなかった。

 だが俺が護衛を兼ねて軍師・側近を送り込んでいた大内晴持は、岩見入りがいかに重要かを理解してくれていた。義父・義隆を説得して、一条家と種子島家からつけられた護衛軍に護られながら岩見入りをしてくれた。安芸・周防・長門の国境にある、大内に味方する国衆の城砦を巡り、兵力を結集していった。

 そんな彼らを安全に迎え入れる為、尼子家の城砦の1つ櫛山城を攻め取り、そこを中核に1大城砦群を築いた。櫛山城は元々元寇防塁の石見十八砦の一つであったが、尼子家の家臣が拠点としていた。艦隊の停泊に便利な場所に築いた海軍城と櫛島地区の櫛山城を中核に、港を守るように岬・尾根・山頂を内包した大城砦を築いた。

 ここは種子島艦隊の艦砲射撃による支援が可能であり、大量の物資を揚陸することも出来る。月山富田城を攻める後詰の城としては、逆撃された場合も想定すれば最良の場所だろう。それにここなら、将来大内晴持が家督を継いだ際には、石見銀山の産物を日本海側から積み出す場合に最適だ。

 大内晴持を囲んで、種子島家が供与した酒食を石見の大内方国衆が酌み交わしている。喜びに輝く顔の奥底に、僅かな不安が見え隠れしている。周防・長門の大内衆に比べて一段低く見られていると言う不安と不満が、どうしても心の奥底にあるのだろう。

 問題は彼らが大内義隆よりも大内晴持に忠誠を誓い、次代での繁栄を図る事だ。これは当然で、若い頃から大内義隆の側近くに仕えた周防・長門の国衆には敵わない。だが今回の一連の出来事で、大内晴持の側近は土佐一条家と種子島家の者が務めている。その次に石見の国衆が位置することが出来れば、周防・長門の国衆を見返す事が出来るかもしれない。

 問題は、そんな石見国衆の想いと大内晴持の事を、大内義隆の寵愛を受けている今の大内家重臣達が受け入れるかどうかだ。今の権勢を持ち続けるために、大内義隆に実子が産まれるように仕向け、その子を傀儡として大内家を意のままに操ろうとする可能性があるのだ。

 そんな事になれば背後が気になって東征に全力を注げなくなってしまう。はてさて、どうしたものだろう。

 ああそうだ、大内家と尼子家の間で裏切りを繰り返した国衆・地侍は城地を召し上げて追放した。

 最後まで尼子家に忠誠を尽し、農民兵や雑兵が逃げてしまい、僅かな一門衆と本丸に籠城した国衆もいた。彼らには敬意を表し、以前のように一騎打ちの上で生け捕りして、私財を持ち出す事を許して好きな所に逃がしてやった。

 京で六衛府の募集に応募してくれればいいのだが。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

処理中です...