王太子に愛する人との婚約を破棄させられたので、国を滅ぼします。

克全

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第一章

1話

 最初はさりげない誘いだった。
 でも、私には愛する婚約者がいた。
 いかに相手が王太子殿下であろうと、彼を裏切る事など出来ない。
 他の多くの令嬢は、王太子殿下の愛人の座を狙っていたが、私には興味のない事だった。

 私が無視していると、徐々に誘いは強引になった。
 それでも無視していると、側近の貴族が露骨に脅迫してきた。
 実家の男爵家を取り潰すとか、男爵家の領地に盗賊を送り込むとか、恐ろしい事を言ってきた。
 王太子殿下の愛人になれと言う事だった。

 だがそのような脅しなど、私の戦闘侍女には通じない。
 私の戦闘侍女は、愛しい公子様が護衛に付けて下さった強者だ。
 しかも、陪臣とは言え、准男爵の称号を持つ士族なのだ。
 彼女は王太子殿下の太鼓持ち貴族に決闘を申し込んでくれた。

 彼女の投げつける白手袋をかわせる、真っ当に武芸の鍛錬をした、身のこなしの早い太鼓持ちはいなかった。
 まがりなりにも貴族の若様が、女から決闘を申し込まれて、逃げるような恥さらしな真似は出来なかった。

 だから決闘に応じたのはいいが、へっぴり腰で決闘に応じて、一撃で刺殺された。
 正式な決闘の結果だから、王太子殿下も文句は言えなかった。
 だけど、王太子殿下は、色魔の上に根に持つ性格だったようだ。
 今度は才色兼備の戦闘侍女、ネラ・ボナーに狙いを定め、彼女を貶めようとした。

 しかし彼女は、持ち前の機転と戦闘力を駆使して、王太子殿下の罠から逃げ続けた。
 彼女の同僚である、他の戦闘侍女と一致協力して、王太子殿下の企む卑劣な罠を、ことごとく叩き潰していった。

 その分、私への圧力が小さくなった。
 実家の男爵家への圧力も、後回しになった。
 例え実家の領地に、盗賊団に変装した国軍が押し寄せても、寄親であるジェダ辺境伯家が護ってくださる。

 ジェダ辺境伯家は、アンダーソン王家の御陰で爵位を得た、譜代貴族家ではない。
 アンダーソン王家よりも古い歴史を誇り、戦乱時代の末期に当時の国王が頭を下げて、請われて味方に付いた外様貴族だ。
 今では戦乱も収まり、王家も王権を振りかざして外様貴族に圧力をかけているが、そもそも王家が権力を持てたのは、多くの外様貴族家の協力があったからだ。

 愚かな王太子殿下は、その事を全く分かっていない。
 余りにも愚かな行動をすれば、内乱が勃発するのだ。
 今はまだ外様貴族も我慢しているが、婚約者の私が王太子にむりやり乱暴されたとなったら、ジェダ辺境伯家も堪忍袋の緒が切れるだろう。

 もしかしたら、王太子殿下はジェダ辺境伯家を討伐したくて、わざと怒らせるような事をしているのだろうか?
 そんな事はないわね。
 あの色魔にその様な知恵も勇気もないわ。

 でも、私もうかうかしていられないわ。
 聖魔法を極めて、王家の横暴に対抗出来るようにしなければ。
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