妹に悪女の汚名を着せられ、婚約者の第一王子を奪われ、婚約破棄の上に国外追放にされました

克全

文字の大きさ
17 / 24
第一章

第17話:乗り換え

しおりを挟む
「ヒューは好きにしていなさい」

 わたくしはヒラリとヒューの背中から飛び降りて、盗賊達が乗用に使っていた馬に乗り換えました。
 ヒューは姑息にも、わたくしがヨハンの盾になれないように、わざと指示に従わず、ノロノロとした動きをしていたのです。
 わたくしは、そのような小汚い卑怯者の背に乗って安全を図るような恥知らずではありません。

(やれ、やれ、これでは仕方がありませんね)

 今更態度を変えられても、わたくしの決意は変わりません。
 忠誠を尽くしてくれている美少年を見殺しにするくらいなら、神と神使の護りを捨てて、殺された方が遥かにマシです。
 恥知らずな生き方をしていては、天国で母上様に会えた時に、まともに顔をみる事ができなくなってしまいます。

「仕方がないと言われてまで助けてもらおうと思いません。
 わたくしは誇り高きダグラス女伯爵家の当主なのです。
 神であろうと神使であろうと、意のままにできると思わないで」

 今まで抑えてきた神や神使に対する敬いや遠慮など、忠臣の死を賭した働きと比べたら、塵同然です。
 神や神使の玩具にされて運命に翻弄されるくらいなら、母上様の娘として誇り高く死んだ方が数万倍もマシです。
 わたくしは、もうダグラス女伯爵家にはこだわりません。
 それよりも母上の娘である事を優先します。

(アグネス嬢、お待ちください、お願いでございます、アグネス嬢)

「お前達、わたくしを主だと思っているのなら、ヨハンよりも前に出なさい。
 ヨハンの乗っている馬は、ヨハンよりもわたくしの命令に従いなさい。
 わたくしの後ろから付いてくるのです」

「「「「「ヒィヒヒヒヒヒィン」」」」」

 わたくしが本気で怒って命じたからでしょうか、わたくしとヨハンが乗っている馬だけでなく、他の四頭も素直に命令を聞いてくれました。
 命を捨てる勢いで先頭を駆けていたヨハンですが、馬がわたくしの命令を優先した事で、わたくしの後ろにつく事になりました。
 その影響で、ヨハンに降り注ぐはずだった矢が、わたくしに向かってきました。
 ここで死ぬことになったら、少なくとも神とヒューの鼻は明かせるでしょう。

(ここまでされたら仕方ありませんね、矢よ、お前達を放った者の心臓を貫け)

 人間や動物が相手なら兎も角、矢に命じた所でどうなるモノでもありません。
 そう思っていたのですが、神使の力はわたくしが思っていたよりも強いようで。
 それも、想像しているよりも遥かに強いようです。
 矢が命じられた通り、射手の心臓を貫いています。
 中には金属の胸当てをしている者もいるのに、深々と刺さっています。
 恐らくですが、ヒューの力で威力が上がっているのでしょう。

「ジャスパー、ゾーイ、でてきなさい、母上の仇討ちに戻ってきました。
 わたくしを殺したくはないのですか、さっさと出てきなさい。
 出て来なければ城ごと丸焼きにしますよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

婚約破棄?悪役令嬢の復讐は爆速で。

八雲
恋愛
「リリム・フォン・アスタロト! 貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの最中、婚約者である王太子エリオットから身に覚えのない罪を突きつけられた公爵令嬢リリム。隣には「真実の愛」を語るマシュマロ系男爵令嬢シャーリーの姿。 普通の令嬢なら泣き崩れる場面――だが、リリムは違った。

悪役令嬢となって復讐をっ!

杏仁豆腐
恋愛
公爵家の娘でありながら庶民の出身だった母の子として生まれたわたくしを蔑んできた令嬢たちに復讐するお話。 不定期更新となります。色々と見苦しい文章が続きますが暖かく見守ってくれると嬉しいです。感想お待ちしております。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~

阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」 婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。 けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。 セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。 「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。 ――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

処理中です...