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第3話:白銀の義勇・正義の女騎士の苦悩と覚悟

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 ダニエラは圧倒的に強かったです。
 白銀な鎧に身を包み、王太子の護衛騎士や側近を次々と打ち倒します。
 勇敢さと決意を象徴する、純白の羽根飾りが兜の上で優雅に揺れています。

 白銀の胸当てと肩当ては、手間暇かけて彫り込まれた花模様で飾られ、光の加減で美しく輝いています。

 肘から手首にかけては、しなやかな動きを妨げないように設計された滑らかなプレートアーマーが装備されている。

 ダニエラが振るう細身の剣が白銀にきらめく度に、王太子の護衛騎士と側近の命を絶って行きます。

 僅かに動きが止まると、刀身に彫刻された文様が白銀に浮かび上がるだけでなく、柄頭の青い宝石が光ります。

 足元には重厚ながらもしなやかな革製のブーツがあり、地面を蹴るたびに力強さを感じさせます。

 その動き速さと美しさは、彼女の背中に真っ白な羽根の翼が広がっているように見錯覚させ、まるで天使のように見えます。

 ダニエラが王太子の騎士をほぼ全員叩き伏せ、私を助けようと近づきます
 流石としか言いようがありません。

 騎士団は男性社会です、女性が騎士になるなど普通は不可能です。
 武断派のクリントン伯爵家が実家であろうと、普通は不可能なのです。

 ですがダニエラは騎士になりました、天賦の才だけでは不可能だったでしょう。
 絶え間ぬ努力が不可能を可能にしたのです!

「そこまでだ、ダニエラ、それ以上抵抗すればパトリツィアを殺す!
 もはや火刑などどうでもいい、この場で殺してくれる、さあ、どうするダニエラ。
 お前の愚かな行動で、神が救い給う機会を失い、この場でパトリツィアを死なせる心算か?!」

「おのれ卑怯者、それでも王太子か!」

「好きに言っていろ、どのような卑怯な手を使っても勝てばいいのだ!
 さあ、どうするのだ、その手でパトリツィアを殺すのか!?」

 なんて下劣で卑怯なのでしょうか!
 王太子は醜い欲望で愉悦の表情を浮かべています。
 ラヴィーニアも異端審問官も側近貴族も皆同じです。

 このままではダニエラが武器を捨ててしまいます。
 このままではダニエラの誇り高さが悪い方向に発揮されてしまいます。

「逃げてダニエラ、いったん逃げて次の機会を待って、必ず次の機会はあるわ!
 いえ、いっそ王太子と貴族達をこの場で殺してしまって!
 そうすればこの国は元に戻るわ!
 無理矢理遠征に向かわされた民も貴族も帰ってくるわ!」

「黙っていろ、メス豚!」

 痛い、斬られた、顔が、目が痛い!
 左の額から頬にかけて、特に目が焼けつくように痛い!

 左目は潰れてしまったかもしれないわね。
 王太子の未熟な剣技でも、縄で縛られ動けない女を斬るくらいはできるようね。

「やめろ、やめてくれ、私は殺されてもいい!
 だがパトリツィアは助けてやってくれ!」

「ああ、いいぞ。
 剣を捨てて素直に縄目を受けるのなら、パトリツィアを助けてやろう」

「駄目よ、嘘に決まっているわ!
 それよりも王太子と側近を斬って、おねがい、ダニエラ!」

「私を信じろ、ダニエラ、余も王太子だ、約束は守る。
 そうだ、神に誓おうではないか。
 これだけのモノの前で、王太子としてパトリツィアを助けると約束しよう。
 だから剣を捨てるだ、ダニエラ」

「分かった、だが証拠を見せてもらおう。
 私が剣を捨てる前にパトリツィアの縄を解いて開放しろ。
 さっき神に誓うと言ったのだ、嘘でなければ開放できるだろう」

「危ない、逃げてダニエラ!」

 卑怯な王太子は口舌で時間稼ぎをしていただけでした。
 弓兵や弩兵が集まるのを待っていただけなのです。

 私の警告は遅すぎました。
 王太子との交渉で足を止めていたダニエラは、格好の的になっていました。
 多くの矢がダニエラに襲い掛かりました。
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