引きこもり吸血姫に一目惚れ

克全

文字の大きさ
上 下
32 / 34
第三章

第32話:事前通告

しおりを挟む
「最初に言っておくが、もう犬や猫を引き取ることは許さんぞ。
 そう何度も同じ手には引っかからん。
 ヒュウガ、ヤムチャ、ダンボ、クロスケ、ルーク。
 お前達も犬や猫を拾ってくる事を禁じる。
 もちろん鳥も駄目だぞ、当然蝙蝠もだぞ」

 俺の考えている事などお見通しだった。
 それどころか奥の手まで見通されてしまっていた。
 最後の手段として、ヒュウガ達に死にかけている動物を拾ってきてもらう心算だったのだが、今の言葉で使えなくなってしまった。
 眷族であるヒュウガ達がカーミラに逆らえるわけがない。

「分かりました、でもヴァンパイアハンターには備えさせてください。
 前回は上手く急所を外してくれましたが、今度も同じように殺さずに見逃してくれるとは限りません。
 カーミラの協力者として殺される可能性があります」

「だったらとっととここを出て行けばよかろう。
 ここから出て行きさえすれば安全に暮らせるのじゃ。
 前に渡そうとした宝石を持って出れば、一生遊んで暮らせるぞ」

「嫌です、絶対に嫌です、カーミラの側を離れる気はありません。
 いえ、カーミラだけではありません。
 今となっては、ヒュウガもヤムチャもダンボもクロスケもルークも
 俺の大切な大切な家族です。
 家族がヴァンパイアハンターに殺されようとしているのに、一人ここを出て行けるわけがないでしょう」

「……しかたないのう、好きにせい。
 だが先ほども言ったように、絶対に動物を拾ってくる事は許さん。
 もし今度動物を拾ってきたら、力づくで屋敷から叩き出す。
 お前が大切な家族だと言ったこの子らに叩きださせるぞ」

「……わかりました、ただその代わり約束してください。
 わざとこちらからヴァンパイアハンターに見つかるような事はしないと。
 ヒュウガ達を狩りに出して見つかるような事はさせないと」

「しかたないのう、せっかく助けたこの子らが殺されるのも可哀想だし。
 向こうが見つけるまでの間は食べる事や夜の散歩は我慢させるかのう」

 よし、よし、よし、最悪の状況は回避できた。
 ヒュウガ達からは、カーミラの命令には逆らえないが、カーミラを死なせたくないという意思がヒシヒシと感じられる。
 まずはヴァンパイアハンターに見つからない事が一番だが、眷属であるヒュウガ達に力を付けさせることも大切だ。

 神祖ヴァンパイアの眷属であるヒュウガ達にはとても強い力があるはずだ。
 それに眷属が力を取り戻せばカーミラも力を取り戻すかもしれない。
 輸血用パックは購入できないが、血の多い食材を手に入れる事は可能だ。
 だが問題は、ここを見張っているだろうヴァンパイアハンターの眼を掻い潜り、ヴァンパイアに力を取り戻させる食材を手に入れるかだな。
しおりを挟む

処理中です...