20 / 22
1章
13話
しおりを挟む
「お腹一杯食べていいんだよ。
遠慮する事ないんだよ」
エイマが上目遣いでこちらを見ている。
まだ心の傷が癒えていないのだろう。
百婆ちゃんもヘルミも時間が必要だと言っている。
日本にいたときのニュースを思いだすと、そうなのだろうと思う。
思うが、直ぐに何とかしてあげたいと思ってしまう。
「俺は出ているから、ゆっくりと食べな」
俺はエイマが安心して食べられるように、家から出ていった。
出ていった後で、置いて行った肉とパンに向かうように気配が動いた。
とても寂しい、助けてあげたのに信用されていない。
上から目線だと言われてしまうかもしれないが、俺は命の恩人だ。
命の恩人なのに怖がられ信じてもらえない。
哀し過ぎるじゃないか!
「ふぇふぇふぇふぇ。
エイマは人間全てが怖いのよ!
男というだけで怖いのだ!
目の前で抵抗した父と兄が殺され、母と姉はわしらが来る前にどこかに連れさられて行った。
人間が信じられず、男というだけで怖い。
そういう心の傷は一生付き纏うのじゃ。
今風の言葉ではPTSD、心的外傷後ストレス障害というのじゃな。
それと向き合えないというのなら、村の復興など考えない方がいい。
いや、モノだけ分け与えて自己満足すればいい。
この世界は厳しのじゃ。
助けた者や信じた者に裏切られるなど日常茶飯事じゃ。
それでも心が折れる事無く手助けできるのでなければ、この世界でポンランティアなど考えるんじゃない」
百婆ちゃんが異世界に来て初めて厳しい言葉を吐いた。
一瞬反発したい気持ちになったが、グッと我慢した。
じっくりと考えれば、エイマの怖がる顔を思いだせば、反論などできない。
俺のような子供にできる事など限られている。
現に今回の件だって、この村に直ぐに戻って助ける事だけを考えていた。
攫われて売られた者がいる事に思い至らなかった。
人生経験の差だと言えばそれまでだが、助けるというのなら、取りあえず命の危機から救いたした村人よりも、奴隷に売られた人を助けに行くべきだったのだ。
それを指摘されて、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
何も分かっておらず、目先の自己満足で助ける助けると言っていた、自分が恥ずかしかった。
いまヘルミさんが、盗賊達から聞きだした村人の売り先を訪ねてくれている。
闘蜂を売った大金と武力を背景に、強気で女衒や買収宿と交渉するという。
一人で大丈夫かと心配する俺に、必要なら皆殺しにするから大丈夫と笑っていた。
心底強くなりたいと思った。
単に武力の強さだけでなく、心も強くなりたいと思った。
まずはエイマの態度に心折れないことだ!
遠慮する事ないんだよ」
エイマが上目遣いでこちらを見ている。
まだ心の傷が癒えていないのだろう。
百婆ちゃんもヘルミも時間が必要だと言っている。
日本にいたときのニュースを思いだすと、そうなのだろうと思う。
思うが、直ぐに何とかしてあげたいと思ってしまう。
「俺は出ているから、ゆっくりと食べな」
俺はエイマが安心して食べられるように、家から出ていった。
出ていった後で、置いて行った肉とパンに向かうように気配が動いた。
とても寂しい、助けてあげたのに信用されていない。
上から目線だと言われてしまうかもしれないが、俺は命の恩人だ。
命の恩人なのに怖がられ信じてもらえない。
哀し過ぎるじゃないか!
「ふぇふぇふぇふぇ。
エイマは人間全てが怖いのよ!
男というだけで怖いのだ!
目の前で抵抗した父と兄が殺され、母と姉はわしらが来る前にどこかに連れさられて行った。
人間が信じられず、男というだけで怖い。
そういう心の傷は一生付き纏うのじゃ。
今風の言葉ではPTSD、心的外傷後ストレス障害というのじゃな。
それと向き合えないというのなら、村の復興など考えない方がいい。
いや、モノだけ分け与えて自己満足すればいい。
この世界は厳しのじゃ。
助けた者や信じた者に裏切られるなど日常茶飯事じゃ。
それでも心が折れる事無く手助けできるのでなければ、この世界でポンランティアなど考えるんじゃない」
百婆ちゃんが異世界に来て初めて厳しい言葉を吐いた。
一瞬反発したい気持ちになったが、グッと我慢した。
じっくりと考えれば、エイマの怖がる顔を思いだせば、反論などできない。
俺のような子供にできる事など限られている。
現に今回の件だって、この村に直ぐに戻って助ける事だけを考えていた。
攫われて売られた者がいる事に思い至らなかった。
人生経験の差だと言えばそれまでだが、助けるというのなら、取りあえず命の危機から救いたした村人よりも、奴隷に売られた人を助けに行くべきだったのだ。
それを指摘されて、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
何も分かっておらず、目先の自己満足で助ける助けると言っていた、自分が恥ずかしかった。
いまヘルミさんが、盗賊達から聞きだした村人の売り先を訪ねてくれている。
闘蜂を売った大金と武力を背景に、強気で女衒や買収宿と交渉するという。
一人で大丈夫かと心配する俺に、必要なら皆殺しにするから大丈夫と笑っていた。
心底強くなりたいと思った。
単に武力の強さだけでなく、心も強くなりたいと思った。
まずはエイマの態度に心折れないことだ!
0
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
完【恋愛】婚約破棄をされた瞬間聖女として顕現した令嬢は竜の伴侶となりました。
梅花
恋愛
侯爵令嬢であるフェンリエッタはこの国の第2王子であるフェルディナンドの婚約者であった。
16歳の春、王立学院を卒業後に正式に結婚をして王室に入る事となっていたが、それをぶち壊したのは誰でもないフェルディナンド彼の人だった。
卒業前の舞踏会で、惨事は起こった。
破り捨てられた婚約証書。
破られたことで切れてしまった絆。
それと同時に手の甲に浮かび上がった痣は、聖痕と呼ばれるもの。
痣が浮き出る直前に告白をしてきたのは隣国からの留学生であるベルナルド。
フェンリエッタの行方は…
王道ざまぁ予定です
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる