帝国の第3皇子として同盟国に婿入りするはずだったのに、天与スキルが盗賊王だったので、婚約破棄追放されてしまいました。

克全

文字の大きさ
26 / 49
第一章

第26話:皆殺し

しおりを挟む
 僕がどれほど説得しても、サラはヘルメースの庭に行かなかった。
 僕と一緒に襲い掛かって来る教会の手先を待ち受けると言う。
 絶対に負けられない思いが沸々と湧き上がってくる。

「分かったよ、でも、僕が困った時に逃げられるように、馬の準備をして待っていて欲しい、いいね?!」

「まかせておいて、何人いても霧にまいてやるわ!」

 何度も色々と練習しているので、ヘルメースの庭の特徴は分かっている。
 サラだけが、望む時にどこからでもヘルメースの庭に入る事ができる。
 どこにいようと関係なく、ヘルメースの庭に直接通じる。

 更に有り難いのは、濃霧を伴ってくれる事だ。
 目の前に何かあっても分からず、頭をぶつけてしまうほどの濃霧だ。
 少し歩いただけで追手をまく事ができる、逃げるのにとても重宝する濃霧だ。

「じゃあ、行ってくる」

 今度の敵は教会が雇った傭兵団だった。
 時間をかけた分、数も質もそろえてきたようで、夏家に迫る姿が様になっている。
 前回夜間に襲って全滅したのを教訓にしたのか、日中に近づいて来た。

 こちらが闇に隠れて迎え討てない分、向こうも闇に隠れて近づけない。
 家畜たちが、はるか遠くから登って来る敵を教えてくれたので、早々に迎え討つ準備ができて、サラと言い合いもなった。

 傭兵団の使う矢の射程に入らないうちに全滅させる!
 火矢を使わせると夏家を燃やされてしまう。
 サラが大切にしている、思い出の家を燃やさせはしない!

 僕が1人なら、左右に大きく広がる敵の、どちらか端を狙う。
 左右から挟撃されるような場所、中央に攻撃を仕掛けたりしない。
 だが、後ろにサラがいるから、敵の突撃に気をつけないといけない。

 敵が僕を無視して一斉突撃をして来たら、僕の背後に回られたり、僕が包囲されたりする程度ならいいが、サラを狙われるかもしれないのだ。

 だから僕は、自分を囮にして敵の目を引き付ける。
 敵の目がサラに向かわないようにする。
 攻撃的にも、左右両方に盗賊王スキルを放てるようにする。

「敵だ、賞金首が出てきたぞ!」

 明るい日中に、見晴らしの良い山中の放牧地で戦う。
 身を隠そうと思っても無理があり、早々に見つかってしまった。
 敵が一斉に弓を構えている、何も命じられなくても次の準備ができる精兵だ!

「スティール・アイアン」
「スティール・Fe」
「スティール・スィラム・アイアン」
「スティール・Fe」

 少し多めに魔力を使ってしまうが、矢の射程に入る前に殺す。
 敵が固まっている辺りに、広範囲に盗賊王スキルを放つ。

 指揮官と思われる奴を中心に敵が倒れる。
 精兵だからこそ、指揮官の命令なしに矢を放たないので助かる。

「スティール・ソルト」
「スティール・NaCl」
「スティール・クロリン」
「スティール・Cl」

 左右にいる敵、僕が近づく事で射程に入る敵に盗賊王スキルを放つ。
 断末魔を放つ事もなく、パタパタと敵が倒れる。

 歴戦の傭兵、精兵だけに異常事態なのが分かったのだろう、一斉に逃げ出した!
 実戦経験が豊富な歴戦の傭兵団ほど逃げ足が速い。
 だが、背中を見せた弱兵を見逃すほどお人好しではない。

 敵の誰にも負けない俊足で追いすがり、盗賊王スキルを放ち続ける。
 毎日堅実に溜め続けた魔力を惜しみなく使う。
 この時のために、サラに笑われながら大食いを続けたのだ。

 左右どちらかに狙いを定めないと、距離が開き過ぎて無駄に魔力を使ってしまう。
 左右どちらかは逃がしてしまうかもしれないが、一方だけは確実に殺す。
 今回は左に狙いを定めて皆殺しにする!

 ものの30分ほどで、散り散りに逃げる左側の敵、傭兵を皆殺しにできた。
 歴戦の傭兵だけあって、できるだけ逃げられる確率をあげようと、固まらずにバラバラに逃げやがった。

 それでも、大きく強く成長した僕の身体は、30分で敵傭兵を皆殺しにできた。
 右側に逃げる敵傭兵も散り散りになっているから、追いかけるのに時間がかかる。
 だが、計算では、谷に入られる前に皆殺しにできるはずだ!

 休むことなく右側に方向を変えて敵傭兵を追いかける。
 もう手遅れだと思うが、それでも最善を尽くさないといけない。
 身体と魔力を使って、敵傭兵が谷に逃げ込む前に皆殺しにする!

 谷に逃げ込まれる少し前に、敵傭兵227人を皆殺しにできた。
 計算通りではあるが、全くうれしくない。

 自分の思い通りにならなかった方が、嫌な予測が外れてくれているかもしれないからだ。

 自分が夏家に居座った結果を確かめないといけない。
 残虐非道な傭兵団なら、襲う人間がいる村は必ず略奪する。

 傭兵団は、老人や子供しかいないからといって見逃したりはしない。
 むしろ楽に略奪ができると嬉々とするようなケダモノしかないのが傭兵団だ。

「え~ん、え~ん、え~ん、え~ん」
「わぁ~ん、わぁ~ん、わぁ~ん、わぁ~ん」
「ぎゃ~ん、ぎゃ~ん、ぎゃ~ん、ぎゃ~ん」
「おじいちゃん、おばあちゃん、わぁ~ん」

 冬家の出入口は破壊されているが、火は放たれていない。
 泣き喚く子供たちがいる、死体になって転がっていると思っていたのに、生きている、大声で泣けている。

 何組かの傭兵団が連合を組んでいたが、1番力を持っていた傭兵団が、非常識に騎士道精神をもっていたのだろう。
 こんな事なら追い討ちをかけずに逃がしてやった方が良かったか?

 いや、敗残兵は良識を忘れて残虐な行為に走る事が多い。
 騎士道精神を持った傭兵は、最初に殺してしまったはずだ。
 情け容赦せずに皆殺しにしたのは間違いじゃない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...