帝国の第3皇子として同盟国に婿入りするはずだったのに、天与スキルが盗賊王だったので、婚約破棄追放されてしまいました。

克全

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第一章

第38話:宣戦布告

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 幸いと言うべきか、予定通りと言うべきか、傭兵たちが謝って来た。
 力こそ全ての傭兵は、目に見えて強い者に従う奴が多い。
 命懸けの戦いを生活の糧にしているので、生き残れる確率の高い者に従う。

 ただ、傭兵団で一定以上の地位にいる者は、相手の頭の良さも地位も考慮する。
 傭兵団に金を払って戦わせるのは王侯貴族か大商人だ。
 戦わせた後で口封じようとする悪党、後金を払わない小狡い奴もいる。

 傭兵団の団長には、そんな悪人を見抜いて依頼を断れる頭の良さも必要だ。
 あるいは支払いを渋るケチから確実金を支払わせるしたたかさも必要になる。
 最悪の場合は雇い主と戦って無理矢理支払わせる総合力が大切だ。

 ただ、配下の傭兵を飢えさせないように団を運営しようと思えば、雇い主と争ってばかりはいられない。

 傭兵団を安定して運営しようと思えば、特定の貴族や大商人から定期的に依頼をもらえるようにならないといけない。

 最終的には、傭兵団をそっくりそのまま騎士団や徒士団として召し抱えてもらうのが、1番良い終わり方なのだ。

 そう言う意味では、広大な領地を得たのに、個人的な騎士や徒士を全く持っていな僕は、最高の雇い主になる。

 少々の妥協をしてでも正式契約をしたい相手なのだ。
 特にフロスティア帝国に拠点を置く傭兵団は、イスタリア帝国に拠点を持つ傭兵団よりも有利だという想いが最初からあった。

 イスタリア帝国の王侯貴族に裏で雇われ、僕に近づいて来た傭兵団は、僕に寝返るよりもイスタリア帝国の王侯貴族に忠誠を見せた方が得だと考えたのだろう。

 一方フロスティア帝国の貴族に裏で雇われ、僕に近づいて来た傭兵団は、僕に寝返った方が得だと考えたのだろう。

 いや、僕がそう考えるように仕向けたのだ。
 僕が手に入れた広大な領地を与えられるかもしれないと思わせた。

「ロアマに進軍する、途中の街や村で略奪する事を禁じる。
 もしかしたら自分がその街や村の領主になれるかもしれないと考えろ。
 焼いた家の分だけ村が貧しくなり、自分に入ってくる税が少なくなるのだぞ。
 村人を殺した分だけ収穫できる麦の量が減るのだぞ!」

 こう言えば、よほどの馬鹿か快楽殺人狂でない限り、村人を殺さなくなる。
 最下級の傭兵でも、小さな村の代官になれれば大出世だし、子々孫々飢える事が無くなるのだ。

 傭兵団の幹部、特に騎兵としての能力がある者は、徒士ではなく騎士として召し抱えてもらえるかもしれないのだ、配下を厳しく見張ってくれる。

 小さな村の代官程度ではなく、騎士の地位とそこそこの村を与えられ、領主となって一国一城の主となれるのだ、これまでのやり方を変える決断もできる。
 
 目先のささいな利益など追わなくなるし、この状態で略奪や暴行に走る同僚を捕らえ殺す事もやるようになった。

 だから僕の侵攻路にある街や村では略奪や暴行殺人が行われなかった。
 僕が解放を宣言すると、これまでの噂が広がっていたのか、村人たちが教会や王侯貴族の手先となっていた者の家を襲い、金品や食糧を奪った。

 僕たちが手を出すと悪い噂が広まってしまうかもしれないので、イスタリア帝国の民、教会の部民に悪人を始末させる。

 村人に自分たちの代表を選ばせて、これからは僕の領民になると伝えた。
 彼らからすれば、教会やイスタリア帝国よりも遥かに税が安く公平なフロスティア帝国の法で支配されるのは、幸運な事なのだろう、とても喜んでいた。

 僕たちの進軍は無人の野を行くように好調だった。
 途中に幾つかあった小さな教会は、司祭が逃げ出して無人だった。
 金目の物は全て持ち出されていて、村人に配る事はできなかった。

 教会の手先になっていた連中も、これまでの噂が広がっていたのか、家財道具を抱えて逃げ出していた。

 そのような順調な進撃も、ロアマまで後1/3の所までだった。
 敵軍が待ち構えていて、先頭に枢機卿服を着た腐れ外道がいる。
 後に続くのは聖堂騎士や聖堂徒士だが、総数1000人ほどしかいない。

「唯一神の教えを破り男色に走った背神者!
 その罪を悔いる心が僅かでもあるのなら、敬虔な唯一神の使徒から奪った領地を返して国に帰れ!」

 枢機卿服を着た者が、僕の事を口汚く罵る。

「唯一神が本当にいて、教会の者たちが正しいのなら、僕は天罰を受けるでしょう。
 唯一神などおらず、教会が私利私欲のために創り出した大嘘なら、僕に天罰が下る事もなく、お前たちが皆殺しになるでしょう。
 神よ、この世界にいる神々よ、今こそ正しい審判を下されよ!」

 僕の言葉を聞いた枢機卿が死者のような真っ青な顔色になった。
 枢機卿の地位にいるだけあって、唯一神などいない事を誰よりも知っている。
 いたら真っ先に天罰が下るのは自分たちだからだ。

「スティール・アイアン」
「スティール・Fe」
「スティール・スィラム・アイアン」
「スティール・Fe」

 枢機卿を始めとした先頭集団がパタパタと落馬する。

「スティール・ソルト」
「スティール・NaCl」
「スティール・クロリン」
「スティール・Cl」

 次にいた徒士の連中もパタパタと倒れて行く。
 慌てる事はないが、高価な馬を逃げすのはもったいないから、急いで倒れた連中のいるところまで行き、主が落馬した軍馬たちの手綱を取る。

「さあ、天罰を恐れない馬鹿はかかってこい!」

「スティール・アイアン」
「スティール・Fe」
「スティール・スィラム・アイアン」
「スティール・Fe」

「死んだ背神者たちの身包み剥いで、予備の装備にしろ」

 僕が命じると傭兵たちが一斉に動いた。
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