王子の甘い囁き

第1話：偶然の出会い

　小さな貿易会社を営む藤崎美優は、大学生時代の友人の結婚式に出席するため、美しい宮殿が立ち並ぶ王国を訪れました。

　彼女とはとても気が合って、いつも一緒にいたのですが、欲にまみれた人間が近づいて来ないように、王族である事を隠していたのです。

　そんな友人も、王城内で結婚式が催されるとなって、遂に王族である事を国際電話で打ち明け、どうしても出席して欲しいと言ってきたのです。

　親友と思っている相手に心から詫びられては許すしかありませんでした。
　美優は、忙しい予定をやりくりして某小王国に行く時間を作りました。

　美優は友人の結婚式に出席するため、白亜の宮殿が立ち並ぶ王国を訪れました。
　宮殿の要所が儀仗兵に守られ、高い大理石の柱が天井まで伸び、壮大な彫刻が飾られた玄関ホールは、豪華絢爛な雰囲気を醸し出していました。

　結婚式場内に入ると、光が煌めくシャンデリアからはまばゆい光が降り注ぎ、広々とした空間を照らし出していました。

　緊張した美優は、雰囲気を厳粛な雰囲気を壊さないように静かな足音で廊下を歩き、美しい彫像や宮殿の歴史を物語る絵画に目を奪われながら進んでいきます。

　壁に飾られた花々からは夢に心地にさせるような香りが漂い、優雅な音楽が遠くから聞こえてきます。

　王家の歴史を感じさせるような厳粛な結婚式が終わると、披露宴会場に移動する事になりました。

　披露宴会場に到着した美優は、室内の壮麗な景観に圧倒されました。
　大きなガラス窓からは宮殿庭園の美しさが一望でき、床には華やかな絨毯が敷かれ、金箔が施された壁と純金の装飾品が輝いています。

　余りにも身分違いの場所に来てしまったと思った美憂は、披露宴会場で一人立ち尽くしていました。

　すると突然騒がしい歓声が上がりました。
　人々が注目の中、美しい王子アレクサンダーが優雅に入場してきたのです。

　彼は深紅のベルベットの服を身にまとい、身長を際立たせる高い襟と金の刺繍が施された王冠を頭に載せています。

　その服装は王族の威厳と貴族の風格を体現しており、彼の存在はまさに王の風格そのものでした。

　彼の周りには羨望に満ちた視線が集まり、会場は彼の存在感に包まれていました。
　美優は雷に打たれたように彼の存在に圧倒されてしまいました。

　彼の魅力的な笑顔と気品溢れる振る舞いに心がときめきます。
　無意識に彼を見つめ続けてしまいます。

　美優の方に視線を向けたアレクサンダーが一瞬固まりました。
　少し経って、微笑みながら彼女に近づいてきました。

「お嬢さん、一緒に踊りませんか？」

　アレクサンダーが優しく声をかけます。
　最初は硬直していた美優ですが、驚きながらも喜んで彼の誘いを受け入れました。

　王子の差し出した手に触れた美優は、また雷に打たれたような感覚に陥りました。
　アレクサンダー王子も同じように一瞬固まりました。

　同じ感覚を共有したのに気がついた二人は、互い顔を見つめて微笑みました。
　二人は音楽に合わせて優雅に踊り、互いに特別な繋がりを感じたのです。

　その後の夜、美優はアレクサンダーとの出会いを忘れることができませんでした。
　身分違いだと訴える常識などでは止められませんでした。
　アレクサンダーに渡された身分証を手に、思い切って彼の居城を訪れました。

「アレクサンダー王子、私は藤崎美優と申します。あなたとの出会いが私の人生を変えました」

　美優が緊張しながら語りかけると、アレクサンダーは天使以上に優しい微笑みを返してくれました。

「天上の女神よりも美しい美優。
　私もあなたとの出会いを大切にしたいと思っています。
　どうか私と共にこの王国を巡り、この国の事を知ってください」

　美優はアレクサンダーの甘い囁きに心を奪われ、彼の誘いに心から応える決意をしました。