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仇討ち
第37話仇討ち9
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我が田沼家の長屋に住むようになって十日、世間が騒がしくなった。
毎日のように読売が土井家と松平家を誹謗中傷したので、耐えきれなくなった藩士が版元に押しかけ、騒動を引き起こしていたのだ。
前回の白河公の時は、被害者である山名家も、白河公が無関係である事を納得していたので、襲撃が罪に問われる事はなかった。
だが今回は、明らかに古河藩の養嗣子が悪い。
これで御城下を騒がしたのだから、ただですむわけがない。
名門土井家といえども、隠蔽する事は不可能だった。
江戸からの京までを、わずか四日で駆け抜けた早飛脚の知らせで事の真相を知った、古河藩主の土井侍従は激怒したそうだ。
元は分家の旗本、土井利清の次男の生まれた土井侍従は、本家を相続していた兄の早世で古河藩主となっていた。
奏者番、寺社奉行、京都所司代と順調に出世して、老中の一歩の所まで来ていたのに、今回の悪評で老中就任どころか、京都所司代まで解任されかねないのだ。
土井侍従は、京から江戸まで早飛脚を送り、田沼御老中をはじめとした幕閣に、土井因幡守利建との養子縁組解消を願い出たそうだ。
同時に内々で、田沼御老中の六男直吉様を養嗣子に願い出た。
全て後で御老中から聞かせていただいたことだが、我の手の届かないところで、御世話になった方々が手助けしてくださっていた。
有難い事である。
御老中田沼様が主導して、着々と仇討ちの場が整えられていった。
京都所司代の土井侍従は、今回の件に係った日暮源左衛門の親類、小杉家と鷹見家に、仇討ちに助太刀として加わり、返り討ちにしなければ追放にすると言った。
土井因幡守利建が土井家から養子縁組を解消され、因幡守のせいで家名に泥を塗られた武蔵川越藩松平家は、因幡守を座敷牢の閉じ込めた。
日暮源左衛門は川越藩士に監視され、逃げる事もできない状態だった。
御老中田沼様の肝入りで、家名の恥を少しでも雪ぎたい下総古河藩土井家と武蔵川越藩松平家が協力して、仇討ちが行われる事となった。
それも見物客を集めて麹町の御用地で行うというのだから、まるで見世物だ。
まあ、そこまでしなければ、土井家と松平家の評判は地に落ちたままだから、この仇討ちで汚名挽回と行きたいのであろう。
「藤野玄太郎元親殿、藤野累殿、助太刀の立見藤七郎宗丹殿、でませい」
「日暮源左衛門忠居殿、鷹見十郎左衛門忠徳殿、小杉弥左衛門信沖殿……」
さて、我らはたった三人。
相手は家老職にある二家の主従併せて百人弱。
少々荷が重いかもしれない。
毎日のように読売が土井家と松平家を誹謗中傷したので、耐えきれなくなった藩士が版元に押しかけ、騒動を引き起こしていたのだ。
前回の白河公の時は、被害者である山名家も、白河公が無関係である事を納得していたので、襲撃が罪に問われる事はなかった。
だが今回は、明らかに古河藩の養嗣子が悪い。
これで御城下を騒がしたのだから、ただですむわけがない。
名門土井家といえども、隠蔽する事は不可能だった。
江戸からの京までを、わずか四日で駆け抜けた早飛脚の知らせで事の真相を知った、古河藩主の土井侍従は激怒したそうだ。
元は分家の旗本、土井利清の次男の生まれた土井侍従は、本家を相続していた兄の早世で古河藩主となっていた。
奏者番、寺社奉行、京都所司代と順調に出世して、老中の一歩の所まで来ていたのに、今回の悪評で老中就任どころか、京都所司代まで解任されかねないのだ。
土井侍従は、京から江戸まで早飛脚を送り、田沼御老中をはじめとした幕閣に、土井因幡守利建との養子縁組解消を願い出たそうだ。
同時に内々で、田沼御老中の六男直吉様を養嗣子に願い出た。
全て後で御老中から聞かせていただいたことだが、我の手の届かないところで、御世話になった方々が手助けしてくださっていた。
有難い事である。
御老中田沼様が主導して、着々と仇討ちの場が整えられていった。
京都所司代の土井侍従は、今回の件に係った日暮源左衛門の親類、小杉家と鷹見家に、仇討ちに助太刀として加わり、返り討ちにしなければ追放にすると言った。
土井因幡守利建が土井家から養子縁組を解消され、因幡守のせいで家名に泥を塗られた武蔵川越藩松平家は、因幡守を座敷牢の閉じ込めた。
日暮源左衛門は川越藩士に監視され、逃げる事もできない状態だった。
御老中田沼様の肝入りで、家名の恥を少しでも雪ぎたい下総古河藩土井家と武蔵川越藩松平家が協力して、仇討ちが行われる事となった。
それも見物客を集めて麹町の御用地で行うというのだから、まるで見世物だ。
まあ、そこまでしなければ、土井家と松平家の評判は地に落ちたままだから、この仇討ちで汚名挽回と行きたいのであろう。
「藤野玄太郎元親殿、藤野累殿、助太刀の立見藤七郎宗丹殿、でませい」
「日暮源左衛門忠居殿、鷹見十郎左衛門忠徳殿、小杉弥左衛門信沖殿……」
さて、我らはたった三人。
相手は家老職にある二家の主従併せて百人弱。
少々荷が重いかもしれない。
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