男爵家四姉妹は婚約破棄され、侯爵家に領地を侵攻され、追放されてしまった。

克全

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第一章

1話

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「すまない、ファティマ。
 我が家にはバルフォア侯爵家に逆らう力などないのだ。
 賠償金はちゃんと払うから、婚約を解消してくれ」

 腹立たしい事ですが、これも貴族の実力差ですからしかたありません。
 有力貴族が我が家の領地と爵位に目をつけた。
 そのために妹のセイラに婿を送り込んで領地と爵位を乗っ取ろうとしている。
 だけどそのためには、姉である私たちの婚約者が邪魔になる。
 王家に介入されないように、私たちの縁談を潰す。
 本当に陰険な方法を使うわ。
 正々堂々侵攻して来れば撃退してやるのに!

「せめてものわびに、遠征軍には加わらないよ」

「え?
 バルフォア侯爵は大山脈を越えて攻め込んで来るつもりなの?」

「ああ、家臣を動員して侵攻の準備をしていたよ。
 行き場のない一族や家臣の部屋住みに領地を与えたいのだろう」

 婚約者だったのにヴィクトルは他人事のように冷静です。
 ですがそれもしかたありません。
 貴族の結婚は情愛ではなく家の繋がりで決められるのです。
 婚約解消のために初めて顔をみるような政略結婚ではありますが、往復に四カ月もかかるような大山脈に交通を遮断されているのですから、それも仕方ありません。
 まだ本人が直接わびに来てくれたのが奇跡に近い好意です。
 妹たちの婚約者は、婚約解消の手紙をヴィクトルに預けただけです。

「そうなの。
 一族や家臣に与える領地を狙っているのね。
 我が家は大山脈に挟まれているから大丈夫だけど、ヴィクトルのネイピア男爵家ではどうにもできないわよね。
 バルフォア侯爵家が動員できる軍勢が二万人弱。
 私たち男爵家が動員できる兵士は二百人ほど。
 老若男女、赤ちゃんから死にかけの老人まで動員しても五千人だもの。
 全く勝ち目はないわ」

 私たち弱小貴族は、有力貴族の顔色をうかがって生きるしかないのです。
 だから近隣に悪質な有力貴族がいると、領地を奪われないか戦々恐々とします。
 王家に指導力があれば、有力貴族も好き勝手できないのですが、今の王家には有力貴族を抑えるだけの力がありません。

 だからバルフォア侯爵家は近隣の貴族士族に圧力をかけているのです。
 それに、我が家が目をつけられたのは私の責任でもあります。
 今回我が家が狙われたのは、私が領地を改革したからです。
 今までの我が家は、果てが見えないほどの未開地が広がるものの、これ以上は開拓する事のできない行き詰った状態でした。

 魔法使いだった家祖が未開地と魔境を探し回っても、岩塩鉱を探し出す事ができなかったのです。
 人間が生きていくのに絶対に必要な塩を手に入れるには、魔獣どころか亜竜まで襲い掛かってくる山道を四カ月かけて往復しなければいけなかったのです。
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