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第二章
第9話:辺境の村
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「今度こそ、きれいな女がいてくれたらいいのになぁ」
ローグが遠くに見えてきた村の防壁を見てまた何時もの言葉を吐いた。
何処の村に行っても女漁りに熱心な奴だ。
「こんな辺境の村に、お前好みの女がいるとは限らないぞ」
ローグは、口では色々言うが、ちゃんと自分なりのルールを持っている。
手を出すのは、酒場の玄人女か寡婦だけだ。
後で困るような素人娘に手を出した事は一度もない。
徐々に近づいてくる村は、辺境によくある開拓村のようだ。
猛獣が住む深い森を切り開いて造るので、太く丈夫で長い丸太を地面に突き刺して並べ、村を囲む防壁として使っている。
今も門は厳しく閉められていて、外に番兵が立っていない。
城門を開いて番兵を立てていられないくらい、猛獣被害が多いのだろう。
外を見張るのは、門の内側に建てられた物見やぐらからだ。
「お前達はなにもんだ!?」
村に近づくと、物見やぐらの上にいた番兵が誰何した。
辺境の村とはいえ、言葉使いが悪すぎる。
盗賊団の引き込みを警戒するのは当然だが、それにしても人相も態度も悪い。
ガラの悪い奴でないと、危険な見張りなどできないのかもしれない。
それにしても、俺も随分と変わったな。
以前の俺なら、物見やぐらの上にいる人間の姿を見る事はできなかった。
だが今の俺なら、ほくろの数まで正確に数えられる。
「旅の吟遊詩人コンビだ」
ローグが答えてくれる。
いつの間にかできた俺とローグの役割分担だ。
「はん、こんな貧乏村に、吟遊詩人に金を払う余裕などねぇよ!」
この村に全く愛着がないような言い方だな。
「いえ、いえ、辺境の村で金儲けしようなんて思っていないですよ。
領主様の宴に招待されて喝采を浴び、持ちきれないほど褒美を頂きました。
ここまで来れば領主様の耳にも入らないと思うので、羽目を外そうと思っていたのですが、残念です」
ローグが何時もの不遜な態度を隠している。
揶揄うような話し方も完全に隠している。
嫌だ、嫌だ、できる事なら、もっと静かに暮らしたい。
「こぅっら!
見張りの分際で、何勝手な事言ってやがる!
家の村は全ての旅人を親切に迎える仕来りだろうがぁ!
さっさと城門を開けて入っていただけぇや!」
そんな濁声で怒声をあげておいて、よく親切な村と言えるな。
「へぇい!
申し訳ありません!
ですがぁ、二人とも剣を持っていますが、よろしいんですか?」
辺境の村が旅人の武装を気にするのは当然だ。
そいつが引き込みだと、深夜に城門を開けて盗賊団を招き入れる。
だが、旅人も村人の態度には凄く敏感なのだ。
村ぐるみで旅人を殺して持ち物を奪う事がある。
中には全ての旅人を奴隷にするような村まであるのだ。
「俺様が言っているんだぞ、良いに決まっているだろうがぁ!
さっさと門を開けやがれぇや!」
もう少しくらい演技するべきだろう。
これでは自分達が盗賊だと大声で言触らしているのと同じだぞ。
頭が悪すぎるのか、もう逃がさない自信が有るのか?
ギィイイイイイ!
この村の門は外側に観音開きになるように造られていた。
最近は手入れを怠っていたのだろう。
耳障りな音を立てて外側に開かれていく。
「ギャッハハハハハ。
もう逃がさねぇぞ!
ブチ殺して有り金全部奪ってやる!」
門が完全に開き切る前から、中にいる連中の姿が見えていた。
いかにも山賊という服装の連中が待ち構えている。
いや、逃げようとする俺達を追いかけて殺す気なのだろう。
「うっしゃあ、これでまた賞金が稼げるぜ!」
さっきまで隠していたローグの不遜な態度が戻っている。
言葉使いも何時もの人を挑発するような口調だ。
「少しでも多く稼ぎたいのなら、無暗に殺すなよ」
念のために注意しておく。
「分かっているよ、誇り高き自由騎士ドラゴンさん」
「余計な事を言っていていいのか?
向こうは本気で殺しにかかってくるぞ」
「望む所だぜ。
最近暴れていなかったから、腕がなるぜ!」
ローグの本心は分かっている。
俺とは全く基準が違うが、ローグなりの義憤があり、仁義は通す男だ。
誰に言われても決して認めない、むしろムキになって悪ぶる子供っぽい奴だ。
「バカが、この期に及んでまだ騙されたのに気がついていないのか。
者共、ぶち殺してこい!」
「「「「「おう!」」」」」
「全員麻痺させるから、ローグは縛ってくれ。
善良な村人を苦しめる悪人に耐え難い全員の痛みと麻痺を与えたくれ。
フルボディ・ペイン・ ナァンナァス」
俺は一切の手心を加えずに魔術を放った。
これで盗賊だけでなく、盗賊に味方していた村人にも罰を与えられる。
表向き村人側についていたとしてもだ。
「おい、おい、おい、少しは俺の出番も残しておいてくれよ」
「ローグには村人との交渉を任せる。
俺の感覚がこの世界とずれているのは嫌というほど味わった」
「だったら縄で縛るのはドラゴンがやってくれよ」
「俺は村周りで薬草を集めてくる。
結構な数の薬を分け与える事になりそうだからな」
無暗に正義感が強い俺は、盗賊連中を殺さずに我慢するのが難しい。
特に女子供の涙を見てしまうと、無意識に魔力が漏れてしまうかもしれない。
良くも悪くも、修羅場を掻い潜った数が多いローグの方が冷静に考え動ける。
村を立て直し、女子供のこれからの生活を成り立たせるのは、俺の正義感ではなくローグの現実的で冷静な対処法だ。
「分かったよ、しゃあねぇなぁ。
異世界育ちのドラゴンに、この世界で生きる者の強さは分からんからな。
後の事は任せて薬草を頼む。
ああ、この村の連中がこいつらを半殺しにしても怒るなよ。
売る時には治してやってくれ。
ケガをしていると値段が下がるからな」
「分かっているよ。
そういう魔力なら惜しんだりしない」
イライラして勝手に魔力がもれる前にここから離れよう。
ローグが遠くに見えてきた村の防壁を見てまた何時もの言葉を吐いた。
何処の村に行っても女漁りに熱心な奴だ。
「こんな辺境の村に、お前好みの女がいるとは限らないぞ」
ローグは、口では色々言うが、ちゃんと自分なりのルールを持っている。
手を出すのは、酒場の玄人女か寡婦だけだ。
後で困るような素人娘に手を出した事は一度もない。
徐々に近づいてくる村は、辺境によくある開拓村のようだ。
猛獣が住む深い森を切り開いて造るので、太く丈夫で長い丸太を地面に突き刺して並べ、村を囲む防壁として使っている。
今も門は厳しく閉められていて、外に番兵が立っていない。
城門を開いて番兵を立てていられないくらい、猛獣被害が多いのだろう。
外を見張るのは、門の内側に建てられた物見やぐらからだ。
「お前達はなにもんだ!?」
村に近づくと、物見やぐらの上にいた番兵が誰何した。
辺境の村とはいえ、言葉使いが悪すぎる。
盗賊団の引き込みを警戒するのは当然だが、それにしても人相も態度も悪い。
ガラの悪い奴でないと、危険な見張りなどできないのかもしれない。
それにしても、俺も随分と変わったな。
以前の俺なら、物見やぐらの上にいる人間の姿を見る事はできなかった。
だが今の俺なら、ほくろの数まで正確に数えられる。
「旅の吟遊詩人コンビだ」
ローグが答えてくれる。
いつの間にかできた俺とローグの役割分担だ。
「はん、こんな貧乏村に、吟遊詩人に金を払う余裕などねぇよ!」
この村に全く愛着がないような言い方だな。
「いえ、いえ、辺境の村で金儲けしようなんて思っていないですよ。
領主様の宴に招待されて喝采を浴び、持ちきれないほど褒美を頂きました。
ここまで来れば領主様の耳にも入らないと思うので、羽目を外そうと思っていたのですが、残念です」
ローグが何時もの不遜な態度を隠している。
揶揄うような話し方も完全に隠している。
嫌だ、嫌だ、できる事なら、もっと静かに暮らしたい。
「こぅっら!
見張りの分際で、何勝手な事言ってやがる!
家の村は全ての旅人を親切に迎える仕来りだろうがぁ!
さっさと城門を開けて入っていただけぇや!」
そんな濁声で怒声をあげておいて、よく親切な村と言えるな。
「へぇい!
申し訳ありません!
ですがぁ、二人とも剣を持っていますが、よろしいんですか?」
辺境の村が旅人の武装を気にするのは当然だ。
そいつが引き込みだと、深夜に城門を開けて盗賊団を招き入れる。
だが、旅人も村人の態度には凄く敏感なのだ。
村ぐるみで旅人を殺して持ち物を奪う事がある。
中には全ての旅人を奴隷にするような村まであるのだ。
「俺様が言っているんだぞ、良いに決まっているだろうがぁ!
さっさと門を開けやがれぇや!」
もう少しくらい演技するべきだろう。
これでは自分達が盗賊だと大声で言触らしているのと同じだぞ。
頭が悪すぎるのか、もう逃がさない自信が有るのか?
ギィイイイイイ!
この村の門は外側に観音開きになるように造られていた。
最近は手入れを怠っていたのだろう。
耳障りな音を立てて外側に開かれていく。
「ギャッハハハハハ。
もう逃がさねぇぞ!
ブチ殺して有り金全部奪ってやる!」
門が完全に開き切る前から、中にいる連中の姿が見えていた。
いかにも山賊という服装の連中が待ち構えている。
いや、逃げようとする俺達を追いかけて殺す気なのだろう。
「うっしゃあ、これでまた賞金が稼げるぜ!」
さっきまで隠していたローグの不遜な態度が戻っている。
言葉使いも何時もの人を挑発するような口調だ。
「少しでも多く稼ぎたいのなら、無暗に殺すなよ」
念のために注意しておく。
「分かっているよ、誇り高き自由騎士ドラゴンさん」
「余計な事を言っていていいのか?
向こうは本気で殺しにかかってくるぞ」
「望む所だぜ。
最近暴れていなかったから、腕がなるぜ!」
ローグの本心は分かっている。
俺とは全く基準が違うが、ローグなりの義憤があり、仁義は通す男だ。
誰に言われても決して認めない、むしろムキになって悪ぶる子供っぽい奴だ。
「バカが、この期に及んでまだ騙されたのに気がついていないのか。
者共、ぶち殺してこい!」
「「「「「おう!」」」」」
「全員麻痺させるから、ローグは縛ってくれ。
善良な村人を苦しめる悪人に耐え難い全員の痛みと麻痺を与えたくれ。
フルボディ・ペイン・ ナァンナァス」
俺は一切の手心を加えずに魔術を放った。
これで盗賊だけでなく、盗賊に味方していた村人にも罰を与えられる。
表向き村人側についていたとしてもだ。
「おい、おい、おい、少しは俺の出番も残しておいてくれよ」
「ローグには村人との交渉を任せる。
俺の感覚がこの世界とずれているのは嫌というほど味わった」
「だったら縄で縛るのはドラゴンがやってくれよ」
「俺は村周りで薬草を集めてくる。
結構な数の薬を分け与える事になりそうだからな」
無暗に正義感が強い俺は、盗賊連中を殺さずに我慢するのが難しい。
特に女子供の涙を見てしまうと、無意識に魔力が漏れてしまうかもしれない。
良くも悪くも、修羅場を掻い潜った数が多いローグの方が冷静に考え動ける。
村を立て直し、女子供のこれからの生活を成り立たせるのは、俺の正義感ではなくローグの現実的で冷静な対処法だ。
「分かったよ、しゃあねぇなぁ。
異世界育ちのドラゴンに、この世界で生きる者の強さは分からんからな。
後の事は任せて薬草を頼む。
ああ、この村の連中がこいつらを半殺しにしても怒るなよ。
売る時には治してやってくれ。
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