顔に刺青を入れられ追放にされた令嬢が拾ったのは、翅蜥蜴ではなく龍神の子供でした。

克全

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11話

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「じゃあこれが約束のお金ね」

「毎度あり。
 また御用の折はいつでも言ってください」

「その時は頼むわ」

 私は偽造屋に礼金を払いました。
 顔に罪人の刺青を入れられた私は、街道を使って関所を通過できません。
 ですがこんな時のために犯罪者ギルドがあります。
 犯罪者ギルドの中には、偽造屋と呼ばれる各種書類を偽造する専門家がいます。
 それなりの金を積めば、出入国許可証も偽造してくれます。
 私もお金を払って手に入れ、警備のいない未開地を踏破して、エヴァンズフリーク皇国に戻ってきました。

「お母さん!
 しっかりしなさい!
 子供を残して死んでは駄目!」

「ああ、ご親切なお方。
 どうか、どうか、どうか、この子の事をお願いします。
 奴隷としてくださって結構です。
 命だけは、命だけは助けてやってください」

 国境を抜けて初めて入った村は、悲惨な状態でした。
 全ての民がガリガリの痩せ細り、異様に腹だけがでています。
 寄生虫がお腹にわいているのか?
 水しか飲めずにこんな体形になっているのか?
 昔読んだ本に書いてあった、大飢饉の状況です。

 ですがおかしいです。
 私が走破した未開地は、とても豊かな状態でした。
 これほど飢えるなら、命を賭けてでも未開地に入るのが普通です。
 農地も水害や干害の被害を受けているようには見えません。
 なぜここまで飢えているのでしょうか。

 私は直ぐに考えるのを止めました。
 それより先に母子を助ける事です。
 飢えて死にかけているのなら、助けるのはそれほど難しい事ではありません。
 レオを助けた時と同じことをすればいいのです。
 能力は低いですが、この二年の間に魔法袋を手に入れました。
 未開地で狩った獣や集めた果実がたくさん入っています。

「なにを気の弱いことを言っているの!
 お母さんも生きるのよ!
 子供を護りたいのなら、死ぬ気で生きなさい。
 今踏ん張れば生き残れるのよ。
 気をしっかり持ちなさい!」

 
 私はそう言いながら、急いでの魔法袋から果物を取り出し、嚙み潰しました。
 レオの時と同じ方法で、母親を助けました。
 同時に、私の大好きな熟し過ぎるほど熟した果物を子供に与えました。
 熟し過ぎた果物は、時にお腹を壊してしまう事があります。
 本当なら、魔法袋にある穀物を煮て食べさせるべきでしょう。
 でも、母親に食べ物を与えているのに、子供に与えないという選択は、私には絶対にありません。

 幸いなことに、子供はお腹を壊しませんでした。
 母親がほとんど全ての食べ物を子供に与えてたからです。
 母親は、僅かな食べ物と引き換えに、身体を売っていたのです。
 だから、このような状況でも、弱い子供が生きていけたのでしょう。

「では、なぜこうなったか話してもらいましょう」
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