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14話
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「無残だね」
「キュウ、キュウ、キュウ」
私はまた思わず独り言を口にしてしまいました。
レオが律義に慰めてくれます。
でもしかたないではありませんか。
どこに行っても最低最悪の状況です。
ここまで酷いとは思っていませんでした。
私が最初に入った村が酷いのは、領主や代官の独断だと思っていました。
信じられないほど愚かな領主や代官だから起こった、特殊な事例だと思っていたのですが、そうではありませんでした。
私が行くところ全てが、死体の肉を喰うほど悲惨な状況でした。
私一人で救えるような、生易しい数ではありませんでした。
現実は受け止めますが、理由が分かりません。
全く納得ができません。
これが暗殺された皇帝の愚行なら、実権を握ったアラベラが止めさせるはずです。
彼女は冷徹で情け容赦のない女ですが、飛び抜けて優秀でした。
あの優秀なアラベラが、国を滅ぼすような政策をするわけがないのです。
それとも、私には伺い知れない何かがあるのでしょうか?
とんでもない裏があるのでしょうか?
どうしようもない事情があるのでしょうか?
いえ、どのような事情や裏があろうと、このような政策は許せません。
なんとしてでも邪魔します。
問題は方法です。
貴族や代官が不正に貯め込んだ食糧や財宝を盗んで、困窮する民に分け与える事も考えたのですが、それでは直ぐに討伐隊が編成されるでしょう。
相手はあのアラベラかもしれないのです。
他に黒幕がいないとは言い切れませんが、サミュエル皇太子と父は論外としても、アラベラの父親ラクリントック公爵ジェンソンであろうと、ウェルズリライ公爵フランキーであろうと、アラベラを操れるとは思いません。
これほどの悪逆非道を行っていながら、貴族士族に謀叛を起こさせることなく、民に一揆をおこさせることもない辣腕をふるっているのです。
どう考えてもアラベラがやっている事でしょう。
食糧や財宝を盗み出して、困窮する民を一揆に走らせることができるかどうか?
一度だけ試してみました。
ですが、驚愕の事実を知ることになりました。
財宝はあったのですが、食糧が殆どなかったのです。
支配する側、貴族や兵士が飢えない程度の最低限の食糧しか蓄えがないのです。
これでは、とても叛乱や一揆を起こすことができません。
その一方で、財宝は想定以上にありました。
私は理解しました。
これがアラベラの策なのだと。
金銀財宝を貴族や兵士に与え、満足させる。
一方食糧は地方に残さず、叛乱や一揆を起こせないようにする。
金があって食糧がない。
民が未開地や魔境で狩った食糧は恐ろしいほどの高値が付きます。
アラベラの遣り口に背筋が凍りました。
「キュウ、キュウ、キュウ」
私はまた思わず独り言を口にしてしまいました。
レオが律義に慰めてくれます。
でもしかたないではありませんか。
どこに行っても最低最悪の状況です。
ここまで酷いとは思っていませんでした。
私が最初に入った村が酷いのは、領主や代官の独断だと思っていました。
信じられないほど愚かな領主や代官だから起こった、特殊な事例だと思っていたのですが、そうではありませんでした。
私が行くところ全てが、死体の肉を喰うほど悲惨な状況でした。
私一人で救えるような、生易しい数ではありませんでした。
現実は受け止めますが、理由が分かりません。
全く納得ができません。
これが暗殺された皇帝の愚行なら、実権を握ったアラベラが止めさせるはずです。
彼女は冷徹で情け容赦のない女ですが、飛び抜けて優秀でした。
あの優秀なアラベラが、国を滅ぼすような政策をするわけがないのです。
それとも、私には伺い知れない何かがあるのでしょうか?
とんでもない裏があるのでしょうか?
どうしようもない事情があるのでしょうか?
いえ、どのような事情や裏があろうと、このような政策は許せません。
なんとしてでも邪魔します。
問題は方法です。
貴族や代官が不正に貯め込んだ食糧や財宝を盗んで、困窮する民に分け与える事も考えたのですが、それでは直ぐに討伐隊が編成されるでしょう。
相手はあのアラベラかもしれないのです。
他に黒幕がいないとは言い切れませんが、サミュエル皇太子と父は論外としても、アラベラの父親ラクリントック公爵ジェンソンであろうと、ウェルズリライ公爵フランキーであろうと、アラベラを操れるとは思いません。
これほどの悪逆非道を行っていながら、貴族士族に謀叛を起こさせることなく、民に一揆をおこさせることもない辣腕をふるっているのです。
どう考えてもアラベラがやっている事でしょう。
食糧や財宝を盗み出して、困窮する民を一揆に走らせることができるかどうか?
一度だけ試してみました。
ですが、驚愕の事実を知ることになりました。
財宝はあったのですが、食糧が殆どなかったのです。
支配する側、貴族や兵士が飢えない程度の最低限の食糧しか蓄えがないのです。
これでは、とても叛乱や一揆を起こすことができません。
その一方で、財宝は想定以上にありました。
私は理解しました。
これがアラベラの策なのだと。
金銀財宝を貴族や兵士に与え、満足させる。
一方食糧は地方に残さず、叛乱や一揆を起こせないようにする。
金があって食糧がない。
民が未開地や魔境で狩った食糧は恐ろしいほどの高値が付きます。
アラベラの遣り口に背筋が凍りました。
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