橿原小学校、放課後児童クラブ

克全

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第1章

第15話:肝試し

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「今から呪われた刀、妖刀を見ていただきます」

 吉田の小父さんが肝試しツアーの参加者に言う。
 以前聞いた時は、料金5000円で100人の希望者だった。

 でも、共彦の神隠しに加えて、不良4人組の呪い死にが出た事で、1000人以上もの人が肝試しに参加を希望したそうだ。
 日本中の心霊系動画配信者が集まったのかもしれない。

 全員を1度に肝試しする訳にはいかないので、10回に分ける事になった。
 しかも、御守りやおはらいをつける代わりに料金を1万円に値上げする、グレードアップした肝試しコースまで企画している。

 5000円で1000人なら500万円になる。
 1万円で1000人なら1000万円になる。
 続けられないかもしれないと言っていた神社には大きな収入だと思う。

「動画のライブ配信、撮影もだいじょうぶですが、他の参加者を撮影して投稿する事は禁じます。
 最初に書いていただいた誓約書にあった罰金だけでなく、肖像権の侵害で訴えられる可能性がありますので、絶対に他の参加者を無加工で投稿しないでください」

 吉田の小父さんが私の同業者に注意する。
 私や孝正君はマナーが好いのだけれど、動画配信者には、自分のためなら他人に迷惑かけても平気な人が多い。

 今回の肝試しツアーにも、迷惑系の動画配信者が参加している。
 そんな人たちが好き勝手出来ないように、私たちが参加している。
 人気者の私を勝手に撮影して投稿したら、たくさんお金を払う事になる。

 私のファンが運営に訴えて、チャンネルをバンさせてくれる。
 迷惑系なんて、私は登録者の数で圧倒できるし、孝正君は強さで圧倒できる。
 何かあっても、佐々木道場でも特に強い門弟さんが参加している。

「でたぁあああああ、あそこになにかいる!」
「きゃあああああ、、おばけよ、お化けがいるわ」
「いやあああああ、なにかが私の首をさわった!」

「視聴者のみなさん、お聞きになられましたでしょうか?
 本当にお化けがいました、やらせではありません、本当の事です」

 警戒していた、悪質な投稿を繰り返す配信者がさわぎだした。
 2度もおはらいをしているので、お化けが出るはずがないのに。

 1度目のおはらいをする前に感じていた、何とも言えない嫌な感じがしないので、ヤラセでさわいでいるとしか思えない。

「だめよ、聖子ちゃんからも好きにさせるように言われたでしょう」

 悪質な動画配信者に文句を言いそうになった孝正君を止めた。
 私や聖子ちゃんを巻き込まないように、最近はマナーが悪い人がいても見て見ぬ振りをしていたけれど、正義感の強い孝正君が戻って来た。

「だけど、あまりにもマナー悪いぞ」

 私のとても小さな声の注意に、孝正君も小声で返事をしてくれる。
 ものすごく近くで孝正君と話ができて、心臓がドキドキいっている。
 トキドキする気持ちをおさえながら、悪質なヤラセの証拠を撮影する。

 鷹雄君は、他の迷惑系動画配信者が、私たちに文句を言ってこないか気を付けてくれているし、トゥエット君は私と孝正君の話を理解しようとタブレットを見ている。
 このままずっと、キスしそうなくらい近くで孝正君と話していたいな。

 コーン

 どこからともなくキツネの鳴き声が聞こえて来た。
 そのとたん、いままでヤラセの幽霊動画を作っていた連中が、動物のように四つ足になってしまう。

 タヌキのような真ん丸かった顔が、キツネのような表情になった
 キツネのようにつり上がった目がギラギラと鋭くなっている。
 夜で分かりにくいが、顔色が真っ青になっている。

 ギラギラと輝くキツネ目になった迷惑系動画配信者が、身体をガクガクと震わせている、ケイレンと言えるくらい早く激しく震えている。

 私たちは急いでライブ配信に切り替えた。
 吉田家の人たちを話し合って、何かあったらライブ配信する事にしてあった。
 私たちは誓約書に関係なく配信できる事になっていた。

 ギャアアアアア

「まちなさい、危険だ、走り回るな、4人組のように死んでしまうぞ」

 私たちがライブ配信を始めると同時に、聖子ちゃんのお父さんが言った。
 さけびながら境内の奥に走っていく迷惑系動画配信者に声をかけていた。
 迷惑系動画配信者のグループ、4人組がわめきながら境内の奥に消えた。

「待ちなさい、むやみに追いかけたら斜面に足を取られてケガをするぞ。
 運が悪いと死んでいしまうぞ、ここにいなさい」

「ですが、迷惑な奴らですが、ほおっておくわけにはいかないでしょう」

 まじめな動画配信者が言う。

「最初に何があっても責任は取れないと言う誓約書を書いてもらっているよね?
 誓約書を書いてもらうくらい、死者の想いが残った場所は危険なのだよ。
 私たちの許可も取らず、勝手に境内に入って撮影する者がとても多かった。
 あのように、何かにつかれておかしくなる事は分かっていた。
 せめて私たちの目の届くようにと、このような肝試しを始めたのだ。
 ここで追いかけたら、君たちまで何かにつかれるぞ。
 1度つかれておかしくなったら、完全には元に戻らないのだぞ!」

 聖子ちゃんのお父さんが、心を込めて厳しく言う。
 迷惑系動画配信者を追いかけようとしていた人たちは、だまってしまった。
 もしかしたら、この人たちは迷惑系と組んでいたのかな?

「先に呪われて死んだ4人組は、おかしくなって境内を走り回っていたそうだ。
 警察からの報告だから間違いない。
 君たちは絶対にここを動いてはいけない、動いたら死ぬぞ」

 聖子ちゃんのお父さんが、更に肝試しツアー参加者に言う。
 私たちは、それをライブ配信で正しく視聴者の人たちに伝える。
 他の動画配信者がネツゾウできないように、正しく全て撮影する。

「大変な事が起きてしまいました。
 前回の動画で、クラスメイトが神隠しにあった神社の肝試しツアーに、手がかりを探すために参加すると言っていましたが、大変な事が起きてしまいました。
 迷惑系動画配信者の○○が参加していたのですが、急に大声で叫び出し、真っ暗闇の境内の奥に走っていってしまいました。
 ○○の事ですから、自作自演のヤラセの可能性が高いです。
 ですが、神主さんは何かにつかれた可能性があると言っておられます」

 ライブ配信になれた私が、見てくださっている人たちに、今の状態を伝える。
 孝正君たちでは、まだライブ配信で上手く話すのは難しいので、私を撮りながら配信してもらう。
 
「「「「「ギャアアアアア」」」」」

 おかしくなった迷惑系動画配信者の○○たちが叫びながら戻って来た。
 キツネのような顔をしているだけじゃない。

 上半身裸になって、大声で叫びながら戻って来た。
 とても正気とは思えない姿、四つ足で走り回っている。

「逃げるな、逃げた場所が斜面かもしれないぞ」

 聖子ちゃんのお父さんが叫んだので、逃げかけていた人がその場に残った。
 厳しく言われたので、少し冷静になれたのだと思う。
 下手に動いて斜面を転がり落ちたら、死ぬ事になると分かったのだろう。

「私の動画を見てくださっているみなさん、どうか動画をよく確認してください。
 迷惑系動画配信者のヤラセかもしれないので、よく確認してください。
 信じられないですが、もしかしたら、お化けや妖怪が映っているかもしれません。
 少しでもおかしいと思ったら、コメントらんに書き込んでください。
 私の動画だけでなく、クラスメイトの動画を見てくださっている人たちも、動画をよく確認して、ヤラセなのか本当のお化けなのか確かめてください」

 私のチャンネルでは、何かあったらライブ配信をすると予告していたのもあって、急激に視聴者数が増えている。
 
 視聴者数が増えているだけでなく、ものすごい数のコメントをもらえる。
 熱心なファンの人が、急いで神社に助けに来ると言ってくれる。

「心配してくださってありがとうございます。
 ですがダイジョウブです、クラスメイトの道場から助っ人が来てくれています。
 何かあった時のために、とても強い武道家が来てくださっています。
 助けに来ると言ってくださるのはうれしいですが、逆に危険なのです。
 来てくださった人が、お化けや妖怪に取りつかれるかもしれないのです。
 とりつかれて、私をおそうかもしれません。
 そんな事になったら、武道家の人が死ほど叩きのめしてしまいます。
 どうかライブ配信を観ながら応援してください、お願いします」

 「「「「「ギャアアアアア」」」」」

 まずい、また現れた迷惑系動画配信者は、服を何も着ていない。
 真っ暗で、まずい所は映っていないと思うけれど、もしうつっていたら、大切なチャンネルがバンされてしまう。

「迷惑系動画配信者の○○がとんでもない事をしてしまいました。
 チャネルがバンされるのは嫌なので、ライブ配信を中止します。
 撮影は続けますので、後日編集したものを投稿させていただきます」
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