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第一章

第6話:大団円

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 チャネラル卿との話し合いから二年、色々ありましたが、幸せです。
 チャネラル卿の弟ビルラド卿はレオナナ第四王女と結婚され、次々と二人の男子が生まれて、とても幸せな表情をなされています。
 まあ、最初はビルラド卿の女遊びが激し過ぎて、心を痛めておられたのですが、今ではビルラド卿の事など気になされず、子供の事だけを考えいるようです。
 ビルラド卿は、女遊びができないように、離れに幽閉されてしまっていますしね。

「キャンディ、もうそろそろ恋人を、いや、子供を作ってもいいんじゃないか?」

 チャネラル卿と恋人のポルトス殿が、穏やかな笑顔を浮かべて話しかけてくれますが、ちょっと照れてしまいます。
 チャネラル卿と結婚してソラリス侯爵邸に住むようになって、この二人に一番驚かされました。
 男同士で本気で愛し合っていて、その誠を示すために、チャネラル卿は子供を作らないというのですから、その愛情の深さがよく分かります。
 そうでなければ、チャネラル卿は正室腹の王女と政略結婚していたでしょう。

「はい、レイノルズ伯爵領の立て直しも成功しましたから、そろそろ考えています。
 本当にありがとうございました」

 チャネラル卿は、自分が見込んだ相手にはとても愛情豊かな方で、私のレイノルズ伯爵領再建に有形無形の支援をしてくださいました。
 私は十年計画で再建する心算でしたが、チャネラル卿の支援と計画案のお陰で、たった二年で完全再建できました。
 まあ、邪魔しようとして地獄を見ている方もおられるのですが……

 私はつい離れに眼をやってしまいました。
 意識不明の重体になられたマルガネラ夫人が療養されている場所です。
 何かにつけて私に意地悪をしていたマルガネラ夫人が、自分が経営する商会を使って、レイノルズ伯爵領の立て直しを邪魔しようとしたのです。
 その翌日に、原因不明の病気で意識不明になられました。

「母上は死ぬまで意識が戻られないかもしれないね」

 私は離れを見ているのに気がつかれたのでしょう、チャネラル卿が冷酷な笑みを浮かべて話しかけてこられました。
 言いようのない恐怖感が背中を駆けあがりました。
 自分が気に入った人間には愛情深いチャネラル卿ですが、自分の計画を邪魔する者は、それが母親であろうと絶対に許さないのです。
 マルガネラ夫人が原因不明の病気になられたのは、いえ、マルガネラ夫人に毒を盛ったのは、間違いなくチャネラル卿です。

「そうですか、お可哀想ですが、仕方のない事でしょうね。
 敵味方の見分けがつかないようでは、安心して役目を与えられませんものね」

 私がそう言うと、チャネラル卿が嬉しそうに笑われました。
 私は絶対にチャネラル卿には逆らいません。
 レイノルズ伯爵家の再建をしてくださり、幼いころから好きだった庭師と愛し合えるようにもしてくださったのです。
 しかも生まれた子供にレイノルズ伯爵位を継承させられるのです。
 そんな大恩人に逆らうなんて考えられません。
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