賢帝は皇妃と実弟に謀殺され復讐を誓って逆行転生する

克全

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第1章

第7話:厳罰と親征

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ジークフリートとヴェローニカの謀叛直後

「朕がお前たちごときに殺されると思ったのか? 愚か者!」

 私は事前にかけてあった身体強化魔術を最大限に生かした。
 誰の目にも止まらない早さで中謁見場を駆け抜け、不当に玉座に居座るジークフリートとヴェローニカをぶちのめした。

 絶対に逃げられないように、左右の肩関節と左右の股関節を拳で粉々に砕いた。
 呪文を唱えられないように、舌を引き千切った。
 物理的にも魔力的にも身動きできないように、完全に身体を封じた。

「お前たちも同罪だ、いや、手を下さずに利だけ得ようとしたお前たちの方が、卑怯下劣な大悪人だ!」

 溜まった鬱憤を晴らそうと口に出して罵った。
 特に皇妃たちの父親や兄たちには、どうしようもない怒りを感じていた。
 我欲の為に実の娘や孫を殺すような奴は絶対に許さん!

 少しでも鬱憤を晴らしておかないと報復が行き過ぎてしまい、何の罪もない民にとばっちりが行ってしまう、それくらい私の魔力は大きい。

「ひぃいいいいい、冤罪です、私は命じられて集まっただけです」
「私はエリーザベトの兄です、陛下を裏切る訳がありません」
「私もソフィア父です、陛下に命を捧げています」

 中謁見場にいた貴族全員が口々に言い訳をしてくる。
 強い者に媚び諂い、少しでも多くの利を得ようとする下種共だ。

 以前はこんな連中にも手を差し伸べて助けていた。
 特に戦友の家族には、罪過がない限り取立てていた。

「心配しなくてもいい、謀叛に加担していたかは聖女の強制懺悔魔術で確かめる。
 冤罪で罰せられる事はない、安心しろ」

「ひぃいいいいい、、御許し下さい、出来心なんです!」
「違うのです、脅されたのです、殺すと言われたのです!」
「私も、私も脅されて仕方なく従っていたのです!」
「娘と孫たちだけは助けてくれると言ったので、仕方なく従ったのです」

 私の言葉を聞いた謀叛人たちは別の言い訳を始めた。
 少しでも罪を軽くしてもらおうと、あらゆる言い訳を口にしだした。
 本人たちは言い訳になると思っているが、私には怒りの素でしかない。

「さっさと捕らえて牢獄に叩き込め!
 死ぬ寸前まで魔力を搾り取って、耳障りな戯言を口にできないようにせよ!」

「「「「「はっ!」」」」

 俺の命に従って親衛騎士たちが謀叛人たちを捕縛して行く。
 身分を笠に抵抗する者は、皇妃たちの実父でも顎を砕かれ手足を折られる。
 忠誠心の厚い親衛騎士たちは、私への謀叛に激怒していたのだ。

★★★★★★

ジークフリートとヴェローニカの謀叛から10日後

「アシュタウン王国を攻め滅ぼす!
 アシュタウン・トレンチ王家を族滅させる、出陣!」

「「「「「おう!」」」」」

 10日間かけて謀叛人たちを厳しく取り調べた。
 厳しいとは言っても、聖女2人の強制懺悔魔術を使えば拷問など不要だ。

 とはいえ聖女2人の負担を考えて、先に他の者が普通の自白魔術や拷問を行った。
 聖女の負担にならないように、他の者の通常尋問の後で強制懺悔魔術を使う。

 『強制懺悔魔術を使って嘘を言っていたのが分かったら罪を重くする』と言えば、普通の尋問でも正直に答える。
 正直に答えたら死罪から終身刑にすると言えば、正直に答える。

 だが、終身刑だからといって、死罪よりも軽いとは限らない。
 身体を傷つける訳ではないが、拷問と同じ効果で苦しめる事はできる。
 拷問官が愉悦を感じる事も、嫌な思いをする事なく、苦しめることができる。

 簡単な話で、何も与えずに独居房に閉じ込めればいい。
 話す相手も居なければ読む本もなく、夢想か独り言以外する事がない。

 何年も何十年も、自分以外の音もない独居房で生きていくのは地獄だろう。
 気が狂うのは間違いないが、生きてさえいれば魔力を搾り取り続けられるから、当人以外には何の問題もない。

「後は任せる」

 謀叛人たちを、私以外は絶対に出入りできない独居房に叩き込んだ後で、全皇妃たちを皇城に残して親征した。

「御考え直していただけませんか?」
「全員を連れて行ってくれとは申しません」
「せめて私たちの半数を同行させてください」

 皇妃たちが口々に言うのを説得して私だけで親征を行った。

「駄目だ、腐れ外道に殺されたのを忘れたのか?
 殺されたのは君たちだけでなく、愛する私たちの子供たちも殺されたのだぞ!
 黒幕が他にも罠を仕掛けているかもしれないのだぞ!
 最後の悪足掻きに、何をするか分からないのだぞ?!
 子供たちを残して皇城を離れるなんて、無責任だぞ!」

 皇妃たちが私を愛し心配してくれているのは痛いほど分かっている。
 子供たちよりも私を優先してくれているのも、正直うれしい。
 だが、その愛情に溺れるほど愚かではない。

 皇帝だからといって、何でも好き勝手にやって好い訳じゃない。
 自分が生き残るために、子供を犠牲にするような腐れ外道にはならない。
 常に人の情を忘れないように、自分の都合だけで考えないように戒め続ける。

「そう言われると、これ以上ついて行きたいとは言えません」
「私たちの半数がいれば、何があっても大丈夫だと言いたいですが……」
「皆殺しにされたばかりでは、言いたくても言えませんね」
「とは言っても、誰もついて行かないのは心配です」
「陛下の事は心から信じていますが、女性が側にいないのは不安です」

 私の言いたい事は分かってくれたが、それでも皇妃たちは止めようとした。
 子供たちの為に皇城に残るのは納得してくれたが、他の面で心配した。
 私がまた政略結婚で悪女を皇妃にするのを心配していた。

 怒鳴りつけたいくらい腹が立ったが、飲み込んだ。
 私は同じ失敗を繰り返さないと言いたかったが、飲み込んだ。
 これまでの私は、民の安寧を優先して政略結婚まで受け入れて来たのだ。

 皇妃たちは、また私が民の為に自分を押し殺すと思っていた。
 それと、精欲が強い私が女無しではいられないと思っているのだ。
 確かに精欲は強いが、その気になれば理性で抑えられる、と思う。

「そんな心配は不要だ、無闇矢鱈に女性を抱かない。
 野心や下心を持って近づいてくるような女は抱かない。
 民の平穏の為であろうと、悪女と政略結婚しない。
 どうしても女性が恋しくなったら、戦友の女性騎士を抱く」

「何を申されているのですか?!」
「親征先で女性騎士を抱く必要はありません!」
「陛下なら一瞬で帝都に戻れるではありませんか!」
「女性が恋しくなったら、転移魔術で後宮に戻られてください!」
「緊急時に陛下だけが帝都に転移できる魔法陣が中宮にあるでしょう!」

 皇妃たちが一斉に文句を言いだした。
 彼女たちを安心させるために言っただけで、本当に女性騎士を抱く気はない。
 私の事を全然信用していない皇妃たちに、哀しくなってしまった。

「分かった、分かった、分かった、戻って来る、何かあったら戻って来る」

「何かあったら戻って来るのではなく、毎日戻られてください!」
「私たちだけでなく、子供たちも陛下に会いたいのです!」
「毎日全皇妃の所に渡ってくださいとは申しません」
「子供たちを心配させないように、必ず皇城に戻られてください!」

 子供たちが心配すると言われては、面倒でも戻らない訳にはいかない。
 蘇らせたとはいえ、普通なら絶対に体験しない、殺される経験をしたのだ。
 子供たちの心に大きな傷が残っているのは間違いない。

「そうだな、朕の考えが甘かった。
 子供たちが不安に思わないように、毎晩皇城に戻る。
 各宮全部を朕自身が渡る事はできないが、戻った事を使者を送って知らせる。
 それなら子供たちも安心して眠れるであろう?」
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