賢帝は皇妃と実弟に謀殺され復讐を誓って逆行転生する

克全

文字の大きさ
30 / 32
第1章

第30話:身代金交渉

「「「マス・スリーピネス」」」

 母上と俺とフェル、3人で共鳴増強させた集団睡魔の魔術を放った。
 3人とも7つのチャクラを解放し、魔力臓器と魔力回路を増強している。
 1人だけでも、並の上級魔術士が放つ眠りの魔術よりも効果が強い。

 それを母子3人で共鳴させて放つと100倍の効果がある。
 100人を眠らせる上級魔術士の集団睡魔魔術の100倍だ。

 母上の魔術とフェルの魔術が共鳴している所を、俺しか知らない、俺しか使えない共鳴増強魔術を重ね掛けする。
 
 たった1度の、極僅かな魔力で発動できる集団睡魔魔術で、1万兵ものハンコック王国軍を強制的に眠らせた。

「ははうえ、あっちも」

「でもリチャ、あそこにいるのは味方よ」

「あぶないよ、おそってくるよ」

「本当なの、本当に味方なのに襲って来るの?」

「おそってくるよ、あぶないよ」

「眠らせたら危なくないの?」

「うん、ねむらせたらあぶなくないよ」

「わかったわ、味方同士で殺し合いなどさせられないわ。
 眠らせる事で同士討ちを防げるのなら、やるしかないわね。
 リチャ、フェル、手伝ってね」

「「うん」」

「「「マス・スリーピネス、マス・スリーピネス」」」

 母上と俺とフェルは、ガーヴァー伯爵勢とレンドルシャム子爵勢にも、共鳴増強させた集団睡魔の魔術を放った。

 ハンコック王国軍1万兵を眠らせた俺たちだ、その半数にも満たないガーヴァー伯爵勢2000兵、レンドルシャム子爵勢3000兵など軽いものだった。

「だんしゃく、だんしゃく」

 ブラウン男爵は、母上と俺たちが放った集団睡魔魔術を見て固まっていた。
 目の前で起こった事が信じられず、呆然自失となっていた。
 
 母上と俺たちで放った魔術はとても強力で、丸1日は絶対に起きない。
 だから人質にする敵軍は幾らでも眠らせておける。
 茫然自失になっているブラウン男爵も放置していられるが……

「ひとじち、いまのうち、ひとじち」

「あ、そうだな、今のうちに逃げられないようにしておくべきだな。
 とは言っても、1万もの敵兵を捕らえておける場所などないし……」

「ぶりるむら、みんなどこかいく、おおかみ、みはる、だいじょうぶ」

「本当に大丈夫か、オオカミたちだけで逃げられないようにできるのか?」

「できる、ははうえといっしょ、ねむらせる」

「ああ、なるほど、ずっと眠らせておくのだな?」

「たべる、すこしおこす、すぐねむらせる。
 すこしおこす、たべる、すぐねむらせる」

「なるほど、少人数ずつ起こして食べさせ、食べる時以外は眠らせておくのか。
 それなら3人とオオカミたちだけで捕虜を見張れるか……
 だが本当に3人だけで大丈夫か?」

「だいじょうぶ、ひとがいないほうがいい、だいじょうぶ。
 まじゅつつかえる、ひとがいないほうが、まじゅつつかえる」

「なるほど、確かに味方がいる場所では使う魔術を選ばないといけないな。
 敵しかいなければ、思いっきり魔術を使える。
 分かった、ブリル村の住民は全員移住させる。
 少なくともコルスと愛人たちは一緒に移住させる、だから安心しろ」

「どうでもいい、あいつきらい」

「くっ、そうか、嫌いか、父親の事が嫌いなのか、それは良い。
 それで、どうしてあんなに強い魔術が使えるのだ?
 リチャの母親は何も知らないようだが、リチャは知ってるのか?」

「わからない、でも、おやこだよ」

「……親子だからか、確かにそれ以外考えられないな。
 普通なら子供に伝わらない魔術の才能が、母親から子供に伝わっている。
 3人目の子供が生まれたら確かめられるかもしれないが、生まれない。
 こればかりは待つしかないのだろうが、待ち遠し過ぎる。
 リチャとフェルが双子だというのも影響しているのか?」

「わからない」

「本当に分からないと言い張るには、リチャはフェルに比べて賢過ぎるぞ?」

「わからない」

「……まあ、いい、嫌われて敵に回られる方が問題だからな。
 リチャ、お前は私の味方なのだな?」

「ははうえだいすき、ははうえだいすき」

「分かった、分かった、お母さんは大切にする、それで良いな」

 ブラウン男爵は馬鹿ではない、むしろとても賢い方だ。
 これまでは三竦み状態に神経をすり減らし、判断力が低下していた。
 だがハンコック王国軍に圧勝して元の賢さを取り戻していた。

 元の賢さを取り戻したら、俺を疑うのは当然だった。
 オオカミと友達だという程度なら見逃しただろうが、共鳴増強魔術を使った。
 母子3人の誰を疑うかと成れば、賢さを見せてしまっていた俺になる。

 今は俺に嫌われる方が損だと思っているが、何時どうなるか分からない。
 その時は手加減せずに傀儡にして操る。
 できればやりたくないが、やれなければいけない時は手加減しない。

「兄上、ハンコック王国から人質解放の使者が来ました」

 侵攻して来たハンコック王国軍の中に第2王子がいた。
 王位継承争いに負けたのが納得できず、王太子を引きずり降ろしてでも王位を手に入れたくて、母親の実家から援助をもらって手柄を立てようとした第2王子がいた。

 第2王子の叔父は、大敗が表沙汰になる前に和議を結ぼうと必死だった。
 大敗を誤魔化すどころか、勝利した事にしたいと躍起になっていた。
 その為なら、裏でどれほど不利な条約を結んでも仕方がないと思っていた。

「この度の戦いに勝った事にして欲しいというのは、あまりにも虫が好過ぎる
 ハンコック王国軍1万に勝ったという武功は、私の人生を左右する。
 それを負けた事になどできるか!
 この地方を支配する旗頭に成れるほどの武功だと分かっているのか?」

「分かっております、ですから、金貨10万枚で勝利を売って欲しいのです」

「馬鹿な、金貨10万枚程度のはした金、王子の身代金にも足らないぞ。
 1万の騎士と兵士の命と合わせて、金貨100万枚はもらわないとな」

「それは幾ら何でも多過ぎます、とても払えません。
 こちらが出せるのは金貨30万枚が限界なのです」

「そんな金額では全く話にならない、帰ってくれ。
 王子たちの身代金は、総額で金貨100万枚だ、1枚少なくても返さない。
 この戦いを勝った事にしたいのなら、更に金貨100万枚だ。
 嫌なら第2王子を王太子に買ってもらう。
 王太子なら第2王子を金貨100万枚で買ってくれはずだ、分かっているな!」

 ブラウン男爵は強気の身代金交渉を重ねた。
 第2王子を人質に取っているから、幾らでも強気の交渉ができる。
 第2王子を人質に取られている親族は、下手に出るしか方法がない。

「……分かりました、できる限りブラウン男爵の御希望に沿うように致します。
 ですが、我々の財力にも限りがございます。
 身代金以外の望みがあるなら教えて頂けませんか?
 そちらの方を合わせて身代金を交渉させていただきたいのです、お願いします」

「分かりました、でしたら……」
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。  彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。  しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。    ――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。  その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……