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第一章
第5話:侵攻
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教会歴五六八年(九歳)四月
「殺し、犯し、奪え、この国は我らのモノだ」
「「「「「ウィオオオオオ」」」」」
王の野蛮極まりない言葉からイタリア侵攻が始まった。
俺の予想に反して、王はイタリアの付け根、北東部から侵攻した。
戦士が五万、女子供まで含めれば三十万人による大侵攻だった。
ロアマ帝国の植民都市アクイレイアがあるガリア・キサルピナ州から侵攻して、抵抗の激しい都市は包囲して持久戦としつつ、ヴェネト州にまで侵攻した。
豊かそうな都市は有力氏族が先に包囲して略奪の権利を主張していた。
だが父上は、俺の助言に従って王に献策していた。
「国王陛下、ロアマ帝国と戦っている最中に、西のオーク王国に攻められるわけにはいきませんから、我が氏族にトランスパダナ行政区をお任せください」
「待て待て待て、トランスパダナにはロアマ帝国のメディオラヌムがあるのではないか、あのような豊かな都市をお前達だけに任せられるか」
「メディオラヌムは国王陛下が攻めてくださればいいのです。
私は北の山岳地帯を攻め取り、オーク王国に対する盾となります」
「うむ、王家の盾となるために貧しい地方を望むとは、まことに殊勝である。
先にフィリッポが求めていた海を含む土地を与えられず、今また望む土地を与えられないのは王の威厳に係わる。
トランスパダナの北半分はフィリッポの好きにするがいい。
塩に関しては、余が直々の確保してやろう」
「有り難き幸せでございます」
父上は事前に俺と練習していた通りに交渉してくれたそうだ。
五代の記憶がある俺から見れば、噴飯モノの三門芝居だが、見事に成功した。
必死で籠城する都市を攻略するのは簡単ではない。
都市が落ちるのは、兵糧がなくなって気力が挫けた時だ。
食糧が無くなって、金銀財宝しか残っていない都市を一年二年かけて落とすよりは、農地を確保して耕作した方がいい。
父や叔父達はもちろん、主だった戦士も最初は俺の考えを理解してくれなかった。
だが、ゲピドエルフ王国との戦争で手に入れた家畜を、落葉などを上手く活用して生き延びさせた事例から、徐々に信用してくれるようになった。
今回の山岳地帯を手に入れる話も、家畜のエサにできる落葉や樹木が多いという点を主張して、都市の略奪を諦めてもらった。
もちろん、全く略奪をしなかったわけではない。
ロアマ帝国やイタリアを代表するような都市は王家や他氏族に譲ったが、我が氏族が優先的に侵攻を認められた土地の街や村は襲った。
俺がやらない方がいいと思っていたが、そこまで禁止したら氏族内で孤立してしまうので、労働力にするから殺すなと命じるくらいしかできなかった。
本当は強姦を止めさせたかったのだが、止められなかった。
昔ながらの連中は奴隷が多過ぎると喰わしていけないと、ロアマ人やイタリアエルフ人を殺す事を強く主張したが、これだけは父親の権力使ってでも止めさせた。
せっかく手に入れた労働力を、無意味に殺させるわけにはいかない。
人間を働けるまで育てるには、十数年もの時間が必要になるのだ。
山の材木を伐採させるにも、荒地を開墾させるにも、人力が必要になる。
だが我が氏族を説得するには、家畜のエサになる落葉を集めさせるためだと言うのが一番効果的だった。
情けない話だが、我が氏族の戦士達は、街や村からあるだけの富を奪おうとした。
そんな事をしたら、来年には奪う物がなくなるという事すら分かっていない。
繰り返し生かして毎年貢ぎ物を納めさせるのだと言って、大半の戦士は説得した。
だが中にはどうしても納得しない脳筋バカ戦士がいるので、王家の攻城戦に援軍として送り出した。
王はなかなか城を落とせずに戦力を欲しがっていたし、脳筋バカ戦士は目に見え手に取れる金銀財宝を欲していたから丁度よかった。
俺は極力町や村を破壊せずに叔父達や戦士達の領地にした。
特に有望だと思われる町や村は氏族長である父の直轄地にした。
そして機会を見て繰り返し教え聞かせた。
民を殺し過ぎたら来年以降手に入る富が減る事を教え聞かせた。
冬支度に家畜を殺し過ぎたら、いつか家畜がいなくなるという、遊牧民族に分かりやすい例えを出して繰り返し教え聞かせた。
それ以外の時間は武芸の訓練を中心に身体を鍛えたが、領地経営も行った。
まずは材木を切り出して戦船や交易船を建造した。
海には面していないが、優先権を与えられた土地には結構大きな湖がある。
しかも湖の半分はオーク王国の領地内のあるのだ。
上手くやればオーク王国との交易で莫大な富を得られるかもしれない。
こちらが有力になれば湖を使って奇襲をかける事もできるのだ。
次にやれることは農地の開墾だ。
今までの農地は俺の知識で新しい耕作をさせるが、山間部なので農地が少ない。
それに、水の便が悪くては安定した耕作ができない。
せっかく湖があるのだ、水車や風車を使って揚水を利用しないのはもったいない。
水車や風車を作り出せたら、今は人力に頼っている製粉がとても楽になる。
製粉が重労働で時間がかかるから、パンが貴族の食べ物になっているのだ。
水車や風車で製粉ができるようになれば、有力な交易品にする事ができる。
だが一番先にやらなければいけないのは、土地を富ませる事ではない。
まずは敵を撃退できるだけの戦力を手に入れる事だ。
戦力を手に入れる前に土地を豊かにしてしまったら、俺達がイタリアに攻め込んだように、敵に攻め込まれてしまう。
土地の豊かさに対応するだけの戦力がなければ、敵の餌食になってしまう。
敵はロアマ帝国やオーク王国だけではない。
王家や他の氏族もいつ牙をむいてくるか分からないのだ。
「父上、我が家の従属民に多少の権利を与えましょう。
そうすれば王家や他の氏族が襲ってきた時に死に物狂いで戦ってくれます。
少なくとも敵に寝返るような事だけはなくなります」
「だがそんな事を強制したら、氏族が割れてしまうぞ。
最悪俺やお前を殺そうとするかもしれないぞ」
「分家や戦士達の家に強制するわけではありません。
我が家だけの事にすればいいのです。
どうせ力を落としたら氏族長の座を狙って襲ってくる連中です。
そんな連中に気をつかって、強く豊になる機会を失う訳にはいきません」
「本当に強く豊かになるのだな、レオナルド」
「まあ、何を疑っているの、フィリッポ。
今まで一度だってレオナルドちゃんが私達に嘘をついた事があって。
フィリッポと私の間に生まれたレオナルドちゃんを疑うなんて、私哀しい」
「ああ、すまん、ごめん、俺が悪かった、もう二度とレオナルドを疑わない。
だから泣かないでくれ、ジョルジャ」
ジョルジャ母さんの嘘泣きのお陰で俺の意見は全て認められた。
この嘘泣きにずっと助けられてきたから、絶対に文句はいない。
文句は言えないが、女の涙ほど信じられないものはない。
これだけは転生して初めて知った。
五度の転生経験など、女の魔性の足元にも及ばない。
「殺し、犯し、奪え、この国は我らのモノだ」
「「「「「ウィオオオオオ」」」」」
王の野蛮極まりない言葉からイタリア侵攻が始まった。
俺の予想に反して、王はイタリアの付け根、北東部から侵攻した。
戦士が五万、女子供まで含めれば三十万人による大侵攻だった。
ロアマ帝国の植民都市アクイレイアがあるガリア・キサルピナ州から侵攻して、抵抗の激しい都市は包囲して持久戦としつつ、ヴェネト州にまで侵攻した。
豊かそうな都市は有力氏族が先に包囲して略奪の権利を主張していた。
だが父上は、俺の助言に従って王に献策していた。
「国王陛下、ロアマ帝国と戦っている最中に、西のオーク王国に攻められるわけにはいきませんから、我が氏族にトランスパダナ行政区をお任せください」
「待て待て待て、トランスパダナにはロアマ帝国のメディオラヌムがあるのではないか、あのような豊かな都市をお前達だけに任せられるか」
「メディオラヌムは国王陛下が攻めてくださればいいのです。
私は北の山岳地帯を攻め取り、オーク王国に対する盾となります」
「うむ、王家の盾となるために貧しい地方を望むとは、まことに殊勝である。
先にフィリッポが求めていた海を含む土地を与えられず、今また望む土地を与えられないのは王の威厳に係わる。
トランスパダナの北半分はフィリッポの好きにするがいい。
塩に関しては、余が直々の確保してやろう」
「有り難き幸せでございます」
父上は事前に俺と練習していた通りに交渉してくれたそうだ。
五代の記憶がある俺から見れば、噴飯モノの三門芝居だが、見事に成功した。
必死で籠城する都市を攻略するのは簡単ではない。
都市が落ちるのは、兵糧がなくなって気力が挫けた時だ。
食糧が無くなって、金銀財宝しか残っていない都市を一年二年かけて落とすよりは、農地を確保して耕作した方がいい。
父や叔父達はもちろん、主だった戦士も最初は俺の考えを理解してくれなかった。
だが、ゲピドエルフ王国との戦争で手に入れた家畜を、落葉などを上手く活用して生き延びさせた事例から、徐々に信用してくれるようになった。
今回の山岳地帯を手に入れる話も、家畜のエサにできる落葉や樹木が多いという点を主張して、都市の略奪を諦めてもらった。
もちろん、全く略奪をしなかったわけではない。
ロアマ帝国やイタリアを代表するような都市は王家や他氏族に譲ったが、我が氏族が優先的に侵攻を認められた土地の街や村は襲った。
俺がやらない方がいいと思っていたが、そこまで禁止したら氏族内で孤立してしまうので、労働力にするから殺すなと命じるくらいしかできなかった。
本当は強姦を止めさせたかったのだが、止められなかった。
昔ながらの連中は奴隷が多過ぎると喰わしていけないと、ロアマ人やイタリアエルフ人を殺す事を強く主張したが、これだけは父親の権力使ってでも止めさせた。
せっかく手に入れた労働力を、無意味に殺させるわけにはいかない。
人間を働けるまで育てるには、十数年もの時間が必要になるのだ。
山の材木を伐採させるにも、荒地を開墾させるにも、人力が必要になる。
だが我が氏族を説得するには、家畜のエサになる落葉を集めさせるためだと言うのが一番効果的だった。
情けない話だが、我が氏族の戦士達は、街や村からあるだけの富を奪おうとした。
そんな事をしたら、来年には奪う物がなくなるという事すら分かっていない。
繰り返し生かして毎年貢ぎ物を納めさせるのだと言って、大半の戦士は説得した。
だが中にはどうしても納得しない脳筋バカ戦士がいるので、王家の攻城戦に援軍として送り出した。
王はなかなか城を落とせずに戦力を欲しがっていたし、脳筋バカ戦士は目に見え手に取れる金銀財宝を欲していたから丁度よかった。
俺は極力町や村を破壊せずに叔父達や戦士達の領地にした。
特に有望だと思われる町や村は氏族長である父の直轄地にした。
そして機会を見て繰り返し教え聞かせた。
民を殺し過ぎたら来年以降手に入る富が減る事を教え聞かせた。
冬支度に家畜を殺し過ぎたら、いつか家畜がいなくなるという、遊牧民族に分かりやすい例えを出して繰り返し教え聞かせた。
それ以外の時間は武芸の訓練を中心に身体を鍛えたが、領地経営も行った。
まずは材木を切り出して戦船や交易船を建造した。
海には面していないが、優先権を与えられた土地には結構大きな湖がある。
しかも湖の半分はオーク王国の領地内のあるのだ。
上手くやればオーク王国との交易で莫大な富を得られるかもしれない。
こちらが有力になれば湖を使って奇襲をかける事もできるのだ。
次にやれることは農地の開墾だ。
今までの農地は俺の知識で新しい耕作をさせるが、山間部なので農地が少ない。
それに、水の便が悪くては安定した耕作ができない。
せっかく湖があるのだ、水車や風車を使って揚水を利用しないのはもったいない。
水車や風車を作り出せたら、今は人力に頼っている製粉がとても楽になる。
製粉が重労働で時間がかかるから、パンが貴族の食べ物になっているのだ。
水車や風車で製粉ができるようになれば、有力な交易品にする事ができる。
だが一番先にやらなければいけないのは、土地を富ませる事ではない。
まずは敵を撃退できるだけの戦力を手に入れる事だ。
戦力を手に入れる前に土地を豊かにしてしまったら、俺達がイタリアに攻め込んだように、敵に攻め込まれてしまう。
土地の豊かさに対応するだけの戦力がなければ、敵の餌食になってしまう。
敵はロアマ帝国やオーク王国だけではない。
王家や他の氏族もいつ牙をむいてくるか分からないのだ。
「父上、我が家の従属民に多少の権利を与えましょう。
そうすれば王家や他の氏族が襲ってきた時に死に物狂いで戦ってくれます。
少なくとも敵に寝返るような事だけはなくなります」
「だがそんな事を強制したら、氏族が割れてしまうぞ。
最悪俺やお前を殺そうとするかもしれないぞ」
「分家や戦士達の家に強制するわけではありません。
我が家だけの事にすればいいのです。
どうせ力を落としたら氏族長の座を狙って襲ってくる連中です。
そんな連中に気をつかって、強く豊になる機会を失う訳にはいきません」
「本当に強く豊かになるのだな、レオナルド」
「まあ、何を疑っているの、フィリッポ。
今まで一度だってレオナルドちゃんが私達に嘘をついた事があって。
フィリッポと私の間に生まれたレオナルドちゃんを疑うなんて、私哀しい」
「ああ、すまん、ごめん、俺が悪かった、もう二度とレオナルドを疑わない。
だから泣かないでくれ、ジョルジャ」
ジョルジャ母さんの嘘泣きのお陰で俺の意見は全て認められた。
この嘘泣きにずっと助けられてきたから、絶対に文句はいない。
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