36 / 36
第一章
第36話:統一皇帝
しおりを挟む
教会歴五六六年九月(十七歳)
「バルバラ、レナ、悪いが頼んだよ」
「お任せくださいレオナルド様、コルス島は無事に接収してきます」
バルバラが気真面目に答えてくれる。
「なにも一緒に上陸しなくても、大丈夫だと思うのだけどな。
バルバラがコルス島を接収しているあいだに、僕がサルディーニャ島を接収すればいいのじゃないかな」
レナが少し拗ねたような甘えたような話し方をしてくる。
艦隊を半分に分けて、同時に両島を接収したいのだろう。
「駄目だよ、島を占拠した奴隷や貧民達が素直に降伏を申し込んできているとは言っても、頭から信じてはいけないよ。
万が一彼らが襲いかかって来ても、確実に勝てるようにしておかないとね」
「でもレオナルド様、島の連中が襲いかかって来ても、艦隊にいる兵士達だけ撃退して島を占領できると思うけどなぁあ」
「そうだね、艦隊の兵士が全員心を合わせて戦ってくれれば勝てるだろうね。
でもね、最悪を想定するなら、ロアマ人の漕ぎ手や兵士が裏切る可能性も考慮して、それでも二人が無事に帰って来れる作戦が必要なのだよ。
俺にとっては、コルス島やサルディーニャ島が接収できなくても構わない。
それよりは二人の方が大切なんだよ、分かってくれ」
「えっへへへへ、だったら時間をかけて順番に接収してくる。
レオナルド様に心配をかける訳にはいかないよね」
レナが満面の笑みを浮かべて嬉しそうに返事をしてくれた。
「うれしいです、レオナルド様」
横で黙って聞いていたバルバラは、笑み崩れそうになっている表情を何とか引き締めようとしているが、失敗している。
嘘偽りを口にしているわけではなく、本心からそう思っている。
ギリス教団ローマ総教主とロアマ帝国軍ローマ司令官が大失敗をしでかし、ローマが陥落してから、イタリアに残っていたロアマ帝国都市が次々と降伏してきた。
その都市の奴隷や貧民が蜂起して、実権を手に入れたからだ。
俺のする事は、降伏を申し込んできた都市に行って、実権を握った奴隷や貧民の代表を、奴隷や従属民として保護すると宣言する事だった。
一年もたたないうちに、何の損害も受けることなくイタリアを統一した。
俺が使ったものは、新しい奴隷や従属民を喰わしていく穀物だけだった。
その穀物も、新たな領土を獲得すると同時に半年ごとに収穫があり、奴隷や従属民に配る量以上に蓄えることができた。
多くの新たな奴隷や従属民のただ飯を食わせる気はないので、それぞれのできる仕事をさせたのだが、単なる労働奴隷や農園奴隷が多かった。
彼らを俺が達成した農業革命に当てはめると、どうしても人手が余る。
余った人手を奴隷徒士団に繰り入れ、農地開拓や材木の伐採に使った。
イタリアを統一したら、次はオーク王国ではなく海を目指すためだ。
そんな俺に、コルス島、サルディーニャ島、シチリア島が降伏臣従を申し込んできたのだ。
その接収を俺が心から信じ艦隊を預けたバルバラとレナに命じた。
六人いる俺の妻の内、一番戦闘力のある二人だった。
本当はどちらか一人には側にいて護りを任せたいのだが、危険な任務を頼む以上、背中を任せられるバディを離れ離れにするわけにはいかない。
だから俺の護りは二人に次いで戦闘力のあるエルフ族のアリナに任せている。
同じエルフ族のロザムンダを妻にしたのは政治的な意味で愛があるからではない。
とても美しい女性だが、無理矢理に妻にされたとはいえ、夫を殺した女性の横で眠れるほ心臓は強くない。
ロザムンダと女王のアルプスインダを妻にしたのは、二人を他の誰かが妻にした場合、俺を討伐する口実にできるからだ。
ロアマ帝国軍であろうとオーク軍であろうと、不意討ちを謀る氏族軍であっても、絶対に負ける事はないのだが、戦いを始めれば巻き添えを食う民が出てくる。
俺は予言者であり、ランゴバルド王国すら支配下に置く皇帝となったのだ。
民を死なせるかもしれない危険な因子は取り除かなければいけない。
女を殺すのは嫌なので、妻に迎える事になったのだ。
だがここでとても大きな問題が起きてしまった。
ロアマ人に野蛮人と言われるランゴバルド人だが、一応は人間だ。
エルフ族のロザムンダとアリナ、狼人族のバルバラと獅子人族のレナの間には、子供ができる可能性が極端に低い。
生殖能力の高いオーク族のアルプスインダ女王との間なら、子供ができる可能性がとても高いのだが、俺と女王との間に愛情などない。
全く愛情のない両親の間から生まれた子供の性格が歪んでしまい、不幸になる事は絶対に許せない。
歪んだ性格の王がまともな統治ができるとは思えないからだ。
だから、幼い頃からよく知っている、俺も愛情が育てられて、相手も俺に愛情を育てられる幼馴染のランゴバルド人、デミも妻に迎えたのだ。
妹のソフィアの侍女見習いとして、母上が見込んだ少女だし、安心して俺の後宮を任せることができる。
表の政治と軍事を整えるだけでなく、奥の事も手を抜くことなく整える。
奥が表の政治や軍事に口出しする事などあってはならない。
バルバラとレナは俺の妻だから海軍の司令官に選ばれたわけではない。
俺が心から信頼できる戦士だから選んだのだ。
後々の禍根にならないように、その事は明確に記録に残した。
父上に続いて俺までが妻に頭が上がらないと思われてしまったら、神聖ストレーザ教国が女性上位の国になってしまう。
バルバラとレナが乗る船が見えなくなると、俺は急いでオーク王国との国境、アオスタ地方に向かった。
統一王を目指して血で血を洗う戦いをしているオーク王国は、俺とアルプスインダ女王との結婚に何の文句も言ってこなかった。
だが、だからといって油断するわけにはいかなかった。
オーク王国内での立場を強くするために、予言者と称される俺と戦って勝ったという評判を手に入れようとする愚か者が現れるかもしれない。
純血種のオーク族の大軍が攻め込んできても、負ける気などしない。
だが不意を突かれたら、救援に駆けつけるまでに多くの民が死傷してしまう。
予言者を名乗り国を支配した以上、民を食わし護る責任がある。
この命尽きるまで、その責任を放棄する気はない。
「バルバラ、レナ、悪いが頼んだよ」
「お任せくださいレオナルド様、コルス島は無事に接収してきます」
バルバラが気真面目に答えてくれる。
「なにも一緒に上陸しなくても、大丈夫だと思うのだけどな。
バルバラがコルス島を接収しているあいだに、僕がサルディーニャ島を接収すればいいのじゃないかな」
レナが少し拗ねたような甘えたような話し方をしてくる。
艦隊を半分に分けて、同時に両島を接収したいのだろう。
「駄目だよ、島を占拠した奴隷や貧民達が素直に降伏を申し込んできているとは言っても、頭から信じてはいけないよ。
万が一彼らが襲いかかって来ても、確実に勝てるようにしておかないとね」
「でもレオナルド様、島の連中が襲いかかって来ても、艦隊にいる兵士達だけ撃退して島を占領できると思うけどなぁあ」
「そうだね、艦隊の兵士が全員心を合わせて戦ってくれれば勝てるだろうね。
でもね、最悪を想定するなら、ロアマ人の漕ぎ手や兵士が裏切る可能性も考慮して、それでも二人が無事に帰って来れる作戦が必要なのだよ。
俺にとっては、コルス島やサルディーニャ島が接収できなくても構わない。
それよりは二人の方が大切なんだよ、分かってくれ」
「えっへへへへ、だったら時間をかけて順番に接収してくる。
レオナルド様に心配をかける訳にはいかないよね」
レナが満面の笑みを浮かべて嬉しそうに返事をしてくれた。
「うれしいです、レオナルド様」
横で黙って聞いていたバルバラは、笑み崩れそうになっている表情を何とか引き締めようとしているが、失敗している。
嘘偽りを口にしているわけではなく、本心からそう思っている。
ギリス教団ローマ総教主とロアマ帝国軍ローマ司令官が大失敗をしでかし、ローマが陥落してから、イタリアに残っていたロアマ帝国都市が次々と降伏してきた。
その都市の奴隷や貧民が蜂起して、実権を手に入れたからだ。
俺のする事は、降伏を申し込んできた都市に行って、実権を握った奴隷や貧民の代表を、奴隷や従属民として保護すると宣言する事だった。
一年もたたないうちに、何の損害も受けることなくイタリアを統一した。
俺が使ったものは、新しい奴隷や従属民を喰わしていく穀物だけだった。
その穀物も、新たな領土を獲得すると同時に半年ごとに収穫があり、奴隷や従属民に配る量以上に蓄えることができた。
多くの新たな奴隷や従属民のただ飯を食わせる気はないので、それぞれのできる仕事をさせたのだが、単なる労働奴隷や農園奴隷が多かった。
彼らを俺が達成した農業革命に当てはめると、どうしても人手が余る。
余った人手を奴隷徒士団に繰り入れ、農地開拓や材木の伐採に使った。
イタリアを統一したら、次はオーク王国ではなく海を目指すためだ。
そんな俺に、コルス島、サルディーニャ島、シチリア島が降伏臣従を申し込んできたのだ。
その接収を俺が心から信じ艦隊を預けたバルバラとレナに命じた。
六人いる俺の妻の内、一番戦闘力のある二人だった。
本当はどちらか一人には側にいて護りを任せたいのだが、危険な任務を頼む以上、背中を任せられるバディを離れ離れにするわけにはいかない。
だから俺の護りは二人に次いで戦闘力のあるエルフ族のアリナに任せている。
同じエルフ族のロザムンダを妻にしたのは政治的な意味で愛があるからではない。
とても美しい女性だが、無理矢理に妻にされたとはいえ、夫を殺した女性の横で眠れるほ心臓は強くない。
ロザムンダと女王のアルプスインダを妻にしたのは、二人を他の誰かが妻にした場合、俺を討伐する口実にできるからだ。
ロアマ帝国軍であろうとオーク軍であろうと、不意討ちを謀る氏族軍であっても、絶対に負ける事はないのだが、戦いを始めれば巻き添えを食う民が出てくる。
俺は予言者であり、ランゴバルド王国すら支配下に置く皇帝となったのだ。
民を死なせるかもしれない危険な因子は取り除かなければいけない。
女を殺すのは嫌なので、妻に迎える事になったのだ。
だがここでとても大きな問題が起きてしまった。
ロアマ人に野蛮人と言われるランゴバルド人だが、一応は人間だ。
エルフ族のロザムンダとアリナ、狼人族のバルバラと獅子人族のレナの間には、子供ができる可能性が極端に低い。
生殖能力の高いオーク族のアルプスインダ女王との間なら、子供ができる可能性がとても高いのだが、俺と女王との間に愛情などない。
全く愛情のない両親の間から生まれた子供の性格が歪んでしまい、不幸になる事は絶対に許せない。
歪んだ性格の王がまともな統治ができるとは思えないからだ。
だから、幼い頃からよく知っている、俺も愛情が育てられて、相手も俺に愛情を育てられる幼馴染のランゴバルド人、デミも妻に迎えたのだ。
妹のソフィアの侍女見習いとして、母上が見込んだ少女だし、安心して俺の後宮を任せることができる。
表の政治と軍事を整えるだけでなく、奥の事も手を抜くことなく整える。
奥が表の政治や軍事に口出しする事などあってはならない。
バルバラとレナは俺の妻だから海軍の司令官に選ばれたわけではない。
俺が心から信頼できる戦士だから選んだのだ。
後々の禍根にならないように、その事は明確に記録に残した。
父上に続いて俺までが妻に頭が上がらないと思われてしまったら、神聖ストレーザ教国が女性上位の国になってしまう。
バルバラとレナが乗る船が見えなくなると、俺は急いでオーク王国との国境、アオスタ地方に向かった。
統一王を目指して血で血を洗う戦いをしているオーク王国は、俺とアルプスインダ女王との結婚に何の文句も言ってこなかった。
だが、だからといって油断するわけにはいかなかった。
オーク王国内での立場を強くするために、予言者と称される俺と戦って勝ったという評判を手に入れようとする愚か者が現れるかもしれない。
純血種のオーク族の大軍が攻め込んできても、負ける気などしない。
だが不意を突かれたら、救援に駆けつけるまでに多くの民が死傷してしまう。
予言者を名乗り国を支配した以上、民を食わし護る責任がある。
この命尽きるまで、その責任を放棄する気はない。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる