襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全

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第2章

第9話:根こそぎ

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「我の後に続け!」

「「「「「おう!」」」」」

 バーンウェル辺境伯ソロモン閣下は有言実行の方でした。
 王都から領都に戻る家臣を、先頭に立って率います。
 王家の言いなりになって襲って来る、貴族の誇りを忘れた屑を討伐されます。

「私にも手伝わせてください」

「戦いに伯爵令嬢の手を借りたと言われるのは、辺境伯にとって恥です。
 私の名誉を守る気があるのなら、ここで待っていてください」

 私も戦うと言ったのですが、認めてくださいませんでした。
 ソロモン閣下の基準では、婦女子に戦わせるのは貴族士族の恥なのだそうです。
 納得できませんが、この世界の常識は知っているので我慢しました。

 馬車の中で私に言った通り、家臣の先頭に立って襲って来た貴族の領城に攻め込み、敵対する者を全員魔術で眠らせ、呪いをかけてしまわれました。

「お前たちに命じる、領民を苦しめるな!
 私が領民に配った食糧を奪ったら疣蛙に変化する魔術をかけた。
 王国の定めを超える税を取立てたら疣蛙に変化する魔術をかけた。
 臨時の税や賦役を課したら疣蛙に変化する魔術をかけた。
 聖君のように領地を治めろ」

 ソロモン卿は、眠りの魔術をかけた領主一族、領主一族に仕える陪臣士族卒族や使用人を一度目覚めさせました。

 目覚めさせた連中を領城の広場に集めて、人によったら呪いと思うほどの制約を守らせる、魔術をかけられました。

「「「「「はい」」」」」

 ソロモン卿に支配された者たちは、唯々諾々と命令に従います。
 ソロモン卿がその気になったら、簡単に大陸を支配できるでしょう。
 
「分かったのなら、不当に集めた税、食糧と金銀財宝を領民に返せ。
 返して残った食糧と金銀財宝は、私を襲った賠償金と身代金としてもらう。
 食糧と金銀財宝を運ぶための輓馬と荷車、軍馬と乗馬、馬車ももらう」

「「「「「はい」」」」」

 ソロモン卿に支配された連中に逆らう事などできません。
 王都には、領城に蓄えられていた分とは別に莫大な金銀財宝があるのでしょう。

 ですが、少なくとも領城にあった食糧と金銀財宝の半分は領民に返され、半分はソロモン卿の物になりました。

「出発します」

「総員出立だ!」

「「「「「はっ」」」」」
「「「「「ウォオオオオオ」」」」」

 王都からソロモン卿に率いられた来た、バーンウェル辺境伯家の家臣と使用人だけでなく、この地に住んでいた貧民も大声で応えました。

 領主一族と家臣などがソロモン卿に支配され、急遽食糧や金銀財宝が配られる事になった領都では、上を下への大騒ぎでした。

 店や家などの財産を領都に持っている者や、稼げる職や技術を持っている者は、ソロモン卿に支配された領主の下で暮らし続ける気でした。

 ですが、領都に財産がなく、稼げる職も技術もないだけでなく、横暴な主人に搾取されていた使用人や、食うや食わずの生活をしていた貧民は、ソロモン卿を慕って領民にして欲しいと懇願したのです。

「本当に、生まれ育った場所を捨てても良いのか?
 一日三度、パンと野菜スープとエールを腹一杯食べさせてやるが、その分とても辛い重労働をやらせるぞ、本当に良いのか?」

 ソロモン卿は、領民にして欲しいと懇願する者達を、家臣や使用人に任せるのではなく、自ら対応されました。

 しかも、普通では考えられない破格の待遇です。
 この世界の使用人や農民が、主人や領主に重労働をさせられるのは普通です。

 食事は死なない最低限の量を、一日に二度に分けて与えられたら良い方です。
 領民が増え過ぎたり収穫が少ない時は、弱い者の食糧を奪わないと生きていけない食事量になる時まであります。

「バーンウェル辺境伯閣下が慈愛に満ちた方だと言うのは、噂で聞いておりました。
 どれほど厳しい重労働であろうと、腹一杯食べさせてもらえるのでしたら、喜んで働かせていただきます。
 飢えのあまり、自分の子を殺さねばならぬような所に残るのだけは嫌なのです」

「そうか、ならば荷車の横に並んで付いて来るが良い。
 若い男は頑張って自分の足で朝から晩まで歩け。
 女子供や老人は、交代で荷車乗せてやるのだ、いいな?」

「「「「「はい」」」」」
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