9 / 48
第2章
第9話:根こそぎ
しおりを挟む
「我の後に続け!」
「「「「「おう!」」」」」
バーンウェル辺境伯ソロモン閣下は有言実行の方でした。
王都から領都に戻る家臣を、先頭に立って率います。
王家の言いなりになって襲って来る、貴族の誇りを忘れた屑を討伐されます。
「私にも手伝わせてください」
「戦いに伯爵令嬢の手を借りたと言われるのは、辺境伯にとって恥です。
私の名誉を守る気があるのなら、ここで待っていてください」
私も戦うと言ったのですが、認めてくださいませんでした。
ソロモン閣下の基準では、婦女子に戦わせるのは貴族士族の恥なのだそうです。
納得できませんが、この世界の常識は知っているので我慢しました。
馬車の中で私に言った通り、家臣の先頭に立って襲って来た貴族の領城に攻め込み、敵対する者を全員魔術で眠らせ、呪いをかけてしまわれました。
「お前たちに命じる、領民を苦しめるな!
私が領民に配った食糧を奪ったら疣蛙に変化する魔術をかけた。
王国の定めを超える税を取立てたら疣蛙に変化する魔術をかけた。
臨時の税や賦役を課したら疣蛙に変化する魔術をかけた。
聖君のように領地を治めろ」
ソロモン卿は、眠りの魔術をかけた領主一族、領主一族に仕える陪臣士族卒族や使用人を一度目覚めさせました。
目覚めさせた連中を領城の広場に集めて、人によったら呪いと思うほどの制約を守らせる、魔術をかけられました。
「「「「「はい」」」」」
ソロモン卿に支配された者たちは、唯々諾々と命令に従います。
ソロモン卿がその気になったら、簡単に大陸を支配できるでしょう。
「分かったのなら、不当に集めた税、食糧と金銀財宝を領民に返せ。
返して残った食糧と金銀財宝は、私を襲った賠償金と身代金としてもらう。
食糧と金銀財宝を運ぶための輓馬と荷車、軍馬と乗馬、馬車ももらう」
「「「「「はい」」」」」
ソロモン卿に支配された連中に逆らう事などできません。
王都には、領城に蓄えられていた分とは別に莫大な金銀財宝があるのでしょう。
ですが、少なくとも領城にあった食糧と金銀財宝の半分は領民に返され、半分はソロモン卿の物になりました。
「出発します」
「総員出立だ!」
「「「「「はっ」」」」」
「「「「「ウォオオオオオ」」」」」
王都からソロモン卿に率いられた来た、バーンウェル辺境伯家の家臣と使用人だけでなく、この地に住んでいた貧民も大声で応えました。
領主一族と家臣などがソロモン卿に支配され、急遽食糧や金銀財宝が配られる事になった領都では、上を下への大騒ぎでした。
店や家などの財産を領都に持っている者や、稼げる職や技術を持っている者は、ソロモン卿に支配された領主の下で暮らし続ける気でした。
ですが、領都に財産がなく、稼げる職も技術もないだけでなく、横暴な主人に搾取されていた使用人や、食うや食わずの生活をしていた貧民は、ソロモン卿を慕って領民にして欲しいと懇願したのです。
「本当に、生まれ育った場所を捨てても良いのか?
一日三度、パンと野菜スープとエールを腹一杯食べさせてやるが、その分とても辛い重労働をやらせるぞ、本当に良いのか?」
ソロモン卿は、領民にして欲しいと懇願する者達を、家臣や使用人に任せるのではなく、自ら対応されました。
しかも、普通では考えられない破格の待遇です。
この世界の使用人や農民が、主人や領主に重労働をさせられるのは普通です。
食事は死なない最低限の量を、一日に二度に分けて与えられたら良い方です。
領民が増え過ぎたり収穫が少ない時は、弱い者の食糧を奪わないと生きていけない食事量になる時まであります。
「バーンウェル辺境伯閣下が慈愛に満ちた方だと言うのは、噂で聞いておりました。
どれほど厳しい重労働であろうと、腹一杯食べさせてもらえるのでしたら、喜んで働かせていただきます。
飢えのあまり、自分の子を殺さねばならぬような所に残るのだけは嫌なのです」
「そうか、ならば荷車の横に並んで付いて来るが良い。
若い男は頑張って自分の足で朝から晩まで歩け。
女子供や老人は、交代で荷車乗せてやるのだ、いいな?」
「「「「「はい」」」」」
「「「「「おう!」」」」」
バーンウェル辺境伯ソロモン閣下は有言実行の方でした。
王都から領都に戻る家臣を、先頭に立って率います。
王家の言いなりになって襲って来る、貴族の誇りを忘れた屑を討伐されます。
「私にも手伝わせてください」
「戦いに伯爵令嬢の手を借りたと言われるのは、辺境伯にとって恥です。
私の名誉を守る気があるのなら、ここで待っていてください」
私も戦うと言ったのですが、認めてくださいませんでした。
ソロモン閣下の基準では、婦女子に戦わせるのは貴族士族の恥なのだそうです。
納得できませんが、この世界の常識は知っているので我慢しました。
馬車の中で私に言った通り、家臣の先頭に立って襲って来た貴族の領城に攻め込み、敵対する者を全員魔術で眠らせ、呪いをかけてしまわれました。
「お前たちに命じる、領民を苦しめるな!
私が領民に配った食糧を奪ったら疣蛙に変化する魔術をかけた。
王国の定めを超える税を取立てたら疣蛙に変化する魔術をかけた。
臨時の税や賦役を課したら疣蛙に変化する魔術をかけた。
聖君のように領地を治めろ」
ソロモン卿は、眠りの魔術をかけた領主一族、領主一族に仕える陪臣士族卒族や使用人を一度目覚めさせました。
目覚めさせた連中を領城の広場に集めて、人によったら呪いと思うほどの制約を守らせる、魔術をかけられました。
「「「「「はい」」」」」
ソロモン卿に支配された者たちは、唯々諾々と命令に従います。
ソロモン卿がその気になったら、簡単に大陸を支配できるでしょう。
「分かったのなら、不当に集めた税、食糧と金銀財宝を領民に返せ。
返して残った食糧と金銀財宝は、私を襲った賠償金と身代金としてもらう。
食糧と金銀財宝を運ぶための輓馬と荷車、軍馬と乗馬、馬車ももらう」
「「「「「はい」」」」」
ソロモン卿に支配された連中に逆らう事などできません。
王都には、領城に蓄えられていた分とは別に莫大な金銀財宝があるのでしょう。
ですが、少なくとも領城にあった食糧と金銀財宝の半分は領民に返され、半分はソロモン卿の物になりました。
「出発します」
「総員出立だ!」
「「「「「はっ」」」」」
「「「「「ウォオオオオオ」」」」」
王都からソロモン卿に率いられた来た、バーンウェル辺境伯家の家臣と使用人だけでなく、この地に住んでいた貧民も大声で応えました。
領主一族と家臣などがソロモン卿に支配され、急遽食糧や金銀財宝が配られる事になった領都では、上を下への大騒ぎでした。
店や家などの財産を領都に持っている者や、稼げる職や技術を持っている者は、ソロモン卿に支配された領主の下で暮らし続ける気でした。
ですが、領都に財産がなく、稼げる職も技術もないだけでなく、横暴な主人に搾取されていた使用人や、食うや食わずの生活をしていた貧民は、ソロモン卿を慕って領民にして欲しいと懇願したのです。
「本当に、生まれ育った場所を捨てても良いのか?
一日三度、パンと野菜スープとエールを腹一杯食べさせてやるが、その分とても辛い重労働をやらせるぞ、本当に良いのか?」
ソロモン卿は、領民にして欲しいと懇願する者達を、家臣や使用人に任せるのではなく、自ら対応されました。
しかも、普通では考えられない破格の待遇です。
この世界の使用人や農民が、主人や領主に重労働をさせられるのは普通です。
食事は死なない最低限の量を、一日に二度に分けて与えられたら良い方です。
領民が増え過ぎたり収穫が少ない時は、弱い者の食糧を奪わないと生きていけない食事量になる時まであります。
「バーンウェル辺境伯閣下が慈愛に満ちた方だと言うのは、噂で聞いておりました。
どれほど厳しい重労働であろうと、腹一杯食べさせてもらえるのでしたら、喜んで働かせていただきます。
飢えのあまり、自分の子を殺さねばならぬような所に残るのだけは嫌なのです」
「そうか、ならば荷車の横に並んで付いて来るが良い。
若い男は頑張って自分の足で朝から晩まで歩け。
女子供や老人は、交代で荷車乗せてやるのだ、いいな?」
「「「「「はい」」」」」
16
あなたにおすすめの小説
魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす
三谷朱花
恋愛
ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。
ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。
伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。
そして、告げられた両親の死の真相。
家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。
絶望しかなかった。
涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。
雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。
そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。
ルーナは死を待つしか他になかった。
途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。
そして、ルーナがその温もりを感じた日。
ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。
白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので
鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど?
――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」
自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。
ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。
ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、
「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。
むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが……
いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、
彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、
しまいには婚約が白紙になってしまって――!?
けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。
自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、
さあ、思い切り自由に愛されましょう!
……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか?
自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、
“白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
押し付けられた仕事は致しません。
章槻雅希
ファンタジー
婚約者に自分の仕事を押し付けて遊びまくる王太子。王太子の婚約破棄茶番によって新たな婚約者となった大公令嬢はそれをきっぱり拒否する。『わたくしの仕事ではありませんので、お断りいたします』と。
書きたいことを書いたら、まとまりのない文章になってしまいました。勿体ない精神で投稿します。
『小説家になろう』『Pixiv』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
婚約破棄が聞こえません
あんど もあ
ファンタジー
私は、真実の愛に目覚めた王子に王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を宣言されたらしいです。
私には聞こえないのですが。
王子が目の前にいる? どこに?
どうやら私には王子が見えなくなったみたいです。
※「承石灰」は架空の物質です。実在の消石灰は目に入ると危険ですのでマネしないでね!
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。
堅実に働いてきた私を無能と切り捨てたのはあなた達ではありませんか。
木山楽斗
恋愛
聖女であるクレメリアは、謙虚な性格をしていた。
彼女は、自らの成果を誇示することもなく、淡々と仕事をこなしていたのだ。
そんな彼女を新たに国王となったアズガルトは軽んじていた。
彼女の能力は大したことはなく、何も成し遂げられない。そう判断して、彼はクレメリアをクビにした。
しかし、彼はすぐに実感することになる。クレメリアがどれ程重要だったのかを。彼女がいたからこそ、王国は成り立っていたのだ。
だが、気付いた時には既に遅かった。クレメリアは既に隣国に移っており、アズガルトからの要請など届かなかったのだ。
『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』
鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」
その一言で、私は婚約を破棄されました。
理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。
……ええ、どうぞご自由に。
私は泣きません。縋りません。
なぜなら——王家は、私を手放せないから。
婚約は解消。
けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。
失ったのは殿下の隣の席だけ。
代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。
最初は誰もが疑いました。
若い、女だ、感情的だ、と。
ならば証明しましょう。
怒らず、怯えず、排除せず。
反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。
派手な革命は起こしません。
大逆転も叫びません。
ただ、静かに積み上げます。
そして気づけば——
“殿下の元婚約者”ではなく、
“揺れない王”と呼ばれるようになるのです。
これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。
王冠の重みを受け入れた一人の女性が、
国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる