初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

文字の大きさ
31 / 230
アムラ王国・テトラ街

ローストオーク

しおりを挟む
(仕方がないな、ならば我も協力するがミノルにも、もう少し細やかな魔法の使い方を覚えてもらおう)

「分かった、なにを覚えればいいんだい?」

(リサーチの魔法とマップの魔法を組み合わせて、特定の個体の居場所と状況を追跡する方法だ)

「それは前に使った、同じ種族のモンスターや獣を全て探すのではなく、1人とか1匹を探し出す魔法なのだな」

(そうだ、この子に名前をつけて追跡することが出来る)

「なんかとっても危険な事を聞いた気がするのだが、追跡出来るのはとても便利なのだが、名前をつけたりすると主従契約が成立してしまうんじゃないのか?」

(その可能性は確かにある、さっき食事を与えているから可能性は高くなる。まあこの子が主従契約を望めばの話だから、どれほどミノルが望んでも契約できない可能性もあるがな)

「いや、主従契約などしたくない! だがこの子を助けると言う思いはどうしようもない。それに名前をつけても、この子に直接呼びかける訳ではないから、この子自身は名前がついた事を知らなのだろう」

(確かにそうだな、それならば主従契約が発動されることもないかもしれんな)

 凄く凄く小さな声で、ほとんど発声されていない俺とセイの会話ではあるが、それでも敏感な野生動物なら警戒して逃げると思う。だがこの子は警戒心全開ながら、この場から逃げようとはしなかった。恐らくは出しっぱなしにしている寸胴鍋のレバーシチューに惹かれているのだろう、よほど食べることに厳しい生活をしていたのだな。

 決めた!

 主従契約が発動されたとしても後悔はしない、なんとしてもこの子を助ける!

「セイ、この子にアグネスと言う名前をつけるよ」

(そうか、それがよかろう、では魔法を常時発動させるがいい)

「分かったやってみる、マップ、アグネスリサーチ」

 マップにはアグネスのいる場所が、俺のいる場所を中心にうつし出されている。

(種族を確かめるには、アグネスのステイタスを知りたいと思えば分かるかもしれんぞ)

「おいおいおい、それが分かっていたなら、さっき聞いた時にセイがやってくれればよかったのだろうが!」

(うっかりしていたのだ)

 俺は結構腹が立っていた!

 これはどう考えてもアグネスと主従契約をさせるために、セイが仕掛けた罠だろう。俺をこの世界に召喚した事も、帝国軍10万兵を殺させた事も、全てセイが企んだ罠だ。こう言うやり方を今後も仕掛けて来るのなら、例え命を失う事になってもデュオを解消するべきかもしれない。

(すまぬミノル! もう2度とやらんから許してくれ、それにデュオを解消することなど出来んぞ)

「セイの言う事は信用出来ん! リュウに本当にデュオが解消できないのか確認する」

(本当だ、嘘など言わん、と言っても信用してもらえないだろう、だがアグネスのステイタスを確認してくれれば、我が本当の事を言わずミノルが主従契約を結ぶようにした意味を分かってくれる)

 セイが余りに真剣に念話を届けてくるので、アグネスのステイタスを確認したのだが、嫌々ながらセイの言った意味が理解出来てしまった。

「ステイタス」
名 前:アグネス
種 族:天魔獣人
年 齢:0
職 業:孤児
レベル:5

体 力:  35
魔 力:1035

筋 力:  15
知 能: 未発達
生命力:  15
俊敏性:  15
器 用:  15
精神力:  15
幸 運:1005

攻撃力:  15+
防御力:  15+

スキル:未取得

固有スキル:経験値倍増・レベル4(16倍)


 種族が天魔獣人てなに?

 余りに突拍子がない事が書いてあって、頭の中が真っ白になる。

 ハーフエンジェルとかハーフデビルならまだ理解できるが、天魔獣人はどう理解すればいいのだろう?

 もしかしてエンジェルとデビルのハーフが、獣人と愛し合ってできた子なのかな?

(分かってくれたかミノル、殺してしまわないのなら、手元に置いてどう言う風に育つのか確かめなければならない。0歳で1000を超える魔力と幸運を持つなどありえないのだ)

「分かった、どれくらい1人で生きて来たか分からないが、幸運が1000もあってヤマネコに襲われて死にかけたのもおかしな話だし、俺たちと出会って助ける事になったのも必然なのかもしれないな」

(そうなのだ、アグネスはミノルに育てられる運命なのかもしれぬ)

「俺たちではないのだな?」

(アグネスには生身の親が必要なのであろう、我ではスキンシップができぬ)

 またセイにいいように操られているような気もするが、まぁ今回も分かって上で操られてやろう。それよりこの状況なら少々強気に接触しても大丈夫だろう

 食事を続けて与える事で家族としての関係が築けるのか、それとも主従契約が発動してしまうのかは分からない。だけで初めから諦める心算は無い、ここは家族のような関係が築けると信じて、出来る限り愛情のこもった料理を作る事にしよう。

 問題はどんな料理を作るかなのだが、獣人なら肉食を中心としたメニューを考えるべきだし、魔族でも生肝・生肉を食べるか生気を吸い取るイメージだ。だが天使と考えれば、マナ(神のパン)しか食べないイメージだが、混血や複合種なら雑食になっているのだろうか?

 いつまでも悩んでいても仕方がない!

 俺の勘では、肉食中心だが雑食も可能だと思う、それに香りで引き付けて逃げないようにように出来そうだ。だからオークの丸焼きを作ることにするが、下手に刺激の強い香辛料は使わず塩胡椒だけして焼いてしまおう。

「セイ、オークを丸焼きにするのは気分が悪いから、後は任せた」

(ミノルをだました負い目があるから、ここは作るしかないだろうな、なんでこんな時に白虎がいないんだ!)

 セイは自分のアイテムボックスから、白虎に創らせた魔道オーブンとオークを1匹取り出して焼き始めた。

 アグネスは何もない空間から魔道オーブンとオークが出て来たことに驚き、5mほど一気に飛び下がって逃げかけたのだが、寸胴鍋のレバーシチューをもっと食べたいのだろう。逃げたいが逃げれない、そんな逡巡しゅんじゅんする表情がとても可愛い。

 直ぐにセイが焼き始めたオークのこおばしいかおりが密林の中に漂い始めたのだが、これは不味いのではなかろうか?

(心配するな、すでに結界は展開させているから、原初級以外のモンスターがこの中に入り込むことは不可能だ)

 俺の心の中の疑問にセイが答えてくれるが、なに1つ秘密に出来ない事に少々苛立しょうしょういらだちを覚えてしまう。

(これをアグネスに与えてやれ、名前を呼んで近づいてくればよし、警戒して近づいてこないとしても、アグネスと呼びかけ続ければ自分をアグネスと認識するかもしれない)

 いつの間にかアイテムボックスから、白虎用にましてあるオークの丸焼きを取り出し、風魔法を駆使して食べ易い大きさに切り分けてある。グロテスクなのでまじまじと見るのは嫌なのだが、どの部位を切り分けたのかが気になってしまうのは、俺のどうしようもないごうかもしれない。

 俺が何度か肉の部位ごとの美味しさを説明したのを覚えているのだろう、脂身が多くて美味しいトントロの部分を切り分けてある。確かにこの部位なら食べやすいし、表面から切り分けやすかっただろう。内臓を取り出した後で丸焼きしたとは言え、ヘレの部分だけを切り分けるのは難しかったのかもしれない。

 まあヘレやロース・肩ロースなどの違いはまだ教えていないから、カシラかトントロしか選べなかったとも言える。

(そうだ、正肉の部位ごとの美味しさと料理法も教えてもらわねばな)

(おい! なぜこんな所に留まっているんだ? 飯を喰うのなら俺にも食べさせろ主!)
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...