奴隷魔法使い

克全

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王都編

新規仕官

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 『王都大和家上屋敷・奥殿』

 「殿様、国入りの許可が出てようございましたね。」

 「昨日いきなり唐津6万石の子爵だからな、一寸戸惑ってしまうよ。でも彩も子爵夫人で準男爵だからね、これで僕たちの子供に子爵家と準男爵家を与えてやれるし、子供の数だけ士族家を分家してあげれる。」

 「そうですわね、それで唐津には何時御国入りをなされるのですか?」

 「王国が差し向ける、近隣諸侯で編成された城受け渡し軍が、城地を接収してからが好いだろうね。」

 「そうですね、王国軍になら大人しく城を引き渡しても、主君や同僚を捕まえた私達には反感を持っているでしょうから、刺激して籠城でもさせてしまったら、唐津家の家臣衆・諸侯軍共に不幸にさせてしまいますものね。」

 「ああ、その前にしなければならないことが多いからね。」

 「佐渡の対岸に頂いた新潟領1万石と、伊豆大島の対岸に頂いた下田領1万石も見定めないといけませんね。」

 「新潟領は、王国直轄領や諸侯の相給相給あいきゅう地を分け直した土地だから問題ないが、下田領は沼津子爵の土地を1万石取り上げた形だから気が重いよ。」

 「でも殿様、王国で替えの飛び地を御与えに成るのですよね?」

 「ああそれは行われるよ、でも誰だって飛び地より地続きの領地の方が好いに決まっている。統治が非効率になるし、戦争になったら各個撃破されてしまうからね。」

 「では下田も王国の代官に御任せに成るのですか?」

 「当面はそうなるね、でも検分役は渡辺目付たちが引き続きやってくれるから、安心出来るよ。」

 「そうでしたわね、魔境狩場との兼ね合いが有るから、充分囮が出来る間隔を測って頂くのでしたね。でも古代魔竜がボスの可能性が有る伊豆大島は、手出ししないのでは無かったでした?」

 「ああ手出しはしないよ、でも出せる準備だけは整えておかないとね。」

 「それもそうですね。殿様、そろそろ任官武術大会に参りませんか?」

 「ああそうだね、よい武術家がいればいいんだがね。」

 闇奴隷売買に係わる被害者と証人は、大和家の屋敷で匿うことになったが、警備警護に使えるのは、弓使いの新規採用の7人以外は、狩場から駆けつけてくれた飛行可能な魔法使いの冒険者達だ。しかし彼らを動員すれば狩場の収入が激減してしまう。今回はちょっと基準を緩めても早期採用しないといけない。

 『投槍武術大会場』

 「あの男は補助具を使って100mは投げているな。」

 「はい、魔法で補助すれば十分破壊力もあると思います。」

 『鎖鎌武術大会場』

 「殿様、あの男は的を破壊できるくらい強く分銅を投げれるようですね。」

 「距離の長く投げれるし連撃も早い、接近戦になった時の鎌の使い方も上手いね。」

 『槍武術大会』

 「中々激しい争いになっていますね、殿様」

 「王都に在勤している強者つわもの陪臣の大半が参加しているようだからね、仕官と誇りにかけて負けれないだろうね。」

 「殿様、ここには別式女べっしきめも参加しています、優先的に採用して宜しいですか?」

 「いいよ、娘たちの警備警護には必要だからね。」

 俺達は50人の戦士を採用した、警備警護上の事も有るので、しっかりした紹介状や推薦状の有る者に限る事にした、能力は有るが紹介状や推薦状の無い者は50人は仮仕官として、多摩と常陸の狩場に送って人物鑑定して貰う事にした。明日も同程度の戦士を採用できるだろう、何せ総石高が10万石弱になったのだ、軍役だけを考えても1500兵は整える必要が有る。

 そうそう、仕官初日に大活躍してくれた弓兵7人は大幅加増した。陪臣士族の地位は当然だが、今日採用する戦士達の組頭に任じて、家族も養えるように8人扶持までの給食を保証し、給金は年18万8000銅貨とした。

 『王都大和家上屋敷・主殿』

 「お兄ちゃん美味しいね!」

 「美味しいな、でも慌てて食べて喉詰まらせるんじゃないぞ。」

 「うん、お兄ちゃん」

 「兄貴、いつまでここに居れるのかな?」

 「さあな、あの殿様てやつは暫らく居て好いと言ってたから、今日明日出て行けとは言われないだろう。」

 「このままずっと居れないかな?」

 「そんな都合のいい話など有るはずないだろ、何れ王国の奴隷に売られちまうだろうが、寺で扱使われてた時よりはマシになるだろう。」

 「王国の奴隷になってもこんな美味い物食えるのかな?」

 「無理に決まってるだろ、奴隷に美味い物なんか喰わせるはずないだろ。」

 「じゃあなんでここの殿様は美味い物喰わせてくれるんだい?」

 「酔狂でええ格好しいなんだろ。」

 「すいきょう? ええかっこしい? てなんだい?」

 「物好きで、人前でよいところを見せようとして目立つように振る舞てるのさ、期待するだけ損するぞ!」

 「酔狂でええ格好しいなら、頼んだら置いてくれないかな?」

 「今この屋敷に何人ると思ってるんだい、寺にいた奴隷全員だぞ、貴族や士族だって真っ当な人は皆貧乏なんだよ、ええ格好しいの殿様が金持ちの訳ないだろ。」

 「でも魔法使いって言ってたから、もしかしたら金持ちなんじゃない?」

 「だから期待したら損するって言ってるだろ! 王国の奴隷だって寺で掏りさせられるよりはマシさ、食い物だって寺よりはマシのはずだから、ここと比べるんじゃないぞ。」

 『王都大和家上屋敷・表門と裏門』

 表門と裏門に分かれた智子と弘美は念話で内緒話をしていた。
 (ねえ智子、あたしら何時までここに居なきゃいけないのかな?)
 (そりゃ弘美、王様の暗殺未遂事件の方が付くまでだろ。)
 (そんな大事件なら長引くよね?)
 (そりゃ長引くさ。)
 (そうなると暫く狩りは出来ないよね?)
 (そらそうなるさ、被害者兼証人を護らなきゃならないんだから。)
 (その間稼ぎは無しだよね?)
 (そりゃ狩れないから無しだよ。)
 (殿様が補ってくれないかな?)
 (そりゃむちゃだよ弘美! あたし達は家臣だからあの狩場で自由にやらせて貰ってるんだよ、そもそも家臣じゃなきゃ技を伝授してもらえてないだよ、だから家臣として働かなきゃいけないよ。)
 (そりゃわかってるんだけどさ、まだそれほど貯金も出来てないしさ。)
 (まあ殿様なら色々考えて下さるさ、今は可愛そうな子供達の手助けしなきゃ!)
 (うんそうだね、それが大事だね! 正規通りに王国奴隷に引き取って貰えたあたしたちは運が好かったんだね。)
 (そうだよ、今は子供達の事だけ考えよう!)

 翌朝『王都大和家上屋敷・奥殿』

 (智子・弘美・アツシ・ユウキよく集まってくれた、御蔭で子供達を護ってやる事が出来た、今晩には新しい家臣を採用できるだろうから、明朝に狩場に帰ってくれて大丈夫だ。)
 (よかった、明日は狩りが出来るんだ!)
 (こら弘美! 見っとも無い事を殿様に御伝えするんじゃないよ!)
 (だって智子、お金は大切だよ!)
 (私もお金は大切だと思うけど、お金よりも大切なものが有るんだよ!)
 (わかってるよ、わかってるけど、狩りが出来るのは嬉しいじゃない。)
 (まあよい智子、ただ明朝まではしっかりと子供達を護るように。)
 ((((承りました))))

 俺と彩は今日も仕官武術大会場を回って積極的に採用した、待遇は実力によって家格を陪臣士族卒族に分けることになった。扶持は取りあえず統一して1人扶持(3食の給食と御仕着せ支給)と年2万銅貨・長屋もしくは主殿奥殿内部屋貸与で最低線なのだが、馬術が出来れば士族家格を与えて、馬も貸与する事にした。馬術を修めれば当初卒族でも士族への格上げも約束してある。家族がいる場合は隠居又は見習いとして1人扶持待遇で給食を与える事にした。

 採用した武人は直ぐに組頭の7弓士に預けて、大和家上屋敷の警備と証人・被害者の警護に当たらせた。別式女は全て秀子に預けて、女性の警備警護を任せた。家臣家族の為の家は取りあえず、大和家が与えられている中屋敷・下屋敷の主殿・奥殿・長屋に分宿させた。

 上屋敷の食事は、おばちゃんの指示を受けた証人・被害者が俺の与えた材料で作っている。家臣達が住むことになった中屋敷・下屋敷の食事は、家臣の家族が台所役として作る事に成った。この材料も約束通り子爵家で支給している。

 「殿様、狩りが出来ずに有り余った魔力の御陰で、随分沢山の魔晶石や魔金剛石に充魔できますね。」

 「そうだね、これでいざという時の魔力が可也確保できたね。」

 「明日も余った魔力を充満に使われるのですか?」

 「そうだね、どうするか迷うね。時間を作って魔晶石創りと狩りもやろう、魔晶石の材料の魔樹とブレス成分だけは収集しておきたい、後は上屋敷の地下にも部屋と魔晶石創成窯を創ろう。」

 「そうですね、窯がここにも有ると便利ですし、2倍の魔晶石や魔金剛石を創り出せますね。」

 俺と彩は5日で500人の家臣を採用して飽きて来た、上屋敷の警護に250兵と、多摩魔境の冒険者家臣に預ける仮仕官250兵だが、長く続けて王都に尚武の風潮を養う為には、この辺で一度任官大会での採用人数を減らす方が好い。それと多人数になった王都家臣団を統制する為に、元朝野奴隷千人頭代理を王都家老に多摩から連れて来た。そして全ての雑務を朝野に丸投げした。

 次いで新造家臣団の序列が徐々に出来上がって来た。今回は戦士・冒険者として仕官した者だけなので、一番は武芸の実力が尊ばれたのだが、元の家柄によって他家との渉外交渉が出来る者が頭角を現してきた。武芸の実力で伍長・組頭・物頭・番頭の格が決まり、それに留守居と言う役職が決まっていった。更の同等の実力なら、各道場で塾頭や師範を務めていた者の方が、配下の指揮が巧みで上席となっていった。

 多摩冒険者家臣預かりになった仮仕官の者達は、瞬く間に逞しくなっていった。自分達が直接魔獣魔竜を狩る事は無くても、狩りの補助をしながら魔獣魔竜に対峙する事で胆力が養われ、先輩達の稼ぎを見て何を修練すべきかも明白となった。250兵は採用武術に関係なく、新たに若しくは更に弓術を極めるべく日夜血の滲む様な修練に励んだ。
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