冒険者の聖女

克全

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4話

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「私ロイドは契約神ミスラに誓います。
 カミラ殿に関する事は一切話しません。
 もし話そうとしたら、契約神ミスラの天罰を受けることを約束します」

 ロイドは、私とパーティーメンバーに責められて、しぶしぶ契約神ミスラに誓いましたが、かなり不本意なようです。
 神に誓うというのが不本意なのではなく、神に誓わなくても約束を守ってしゃべらないと、自分では思っているのです。
 ですが、必ずしゃべるでしょう。
 その時には、理由にもならない屁理屈を自分の中で作って、平気でしゃべります。

「「「「我らは契約神ミスラに誓います。
 カミラ殿に関する事は一切話しません。
 ロイドにも話させません。
 もしロイドが我々のいないところで話したら、この手でロイドを殺します。
 ロイドが話した事を、急いでカミラ殿に話、逃げてもらいます。
 この約束を破ったら、契約神ミスラの天罰を受けます」」」」

 ドラゴンファングの他の四人が、ロイドとは少し違う内容を、契約神ミスラに誓ってくれました。
 これで少しは安心できます。
 まあ、ロイドは必ずしゃべるでしょうから、問題は天罰のタイミングです。
 私の事を話す前に天罰を受けて死ぬのか、それとも話してなら死ぬのか?
 それによってこの都市から逃げるかどうかが決まります。

「カミラ殿!
 女房が死んじまった!
 頼む!
 金ならあるだけ払う。
 足らないのは分かっているが、これしかないんだ!
 俺は、いや、女房も一緒にカミラ殿の、いやカミラ様の奴隷になる。
 だから女房を蘇らせてくれ!」

 最悪のタイミングです。
 ドラゴンファングの五人に聞かれてしまいました。
 これで蘇生させたら、絶対に彼らは話してしまいます。
 いえ、私に関する事は一切話さないと、契約神ミスラに誓わせたので、今なら聞かれても見られても大丈夫かもしれませんね。

「私が蘇生術を使えると誰から聞いたのですか?
 私は蘇生術など使えませんよ。
 使えると嘘を言ったこともありません。
 誰がそんな根も葉もない噂を流したか教えてください」

「……それは……
 誰から聞いたわけでもありません。
 誰もカミラ殿が蘇生術を使われたと断言したわけではありません。
 ただ、ただ聖女のようなカミラ様なら、きっと蘇生術も使えるはずだと……
 そういう噂が冒険者街で広がっているのです」

 嘘はついていないようですね。
 根も葉もない噂なのでしょう。
 口止めした人達が話したわけではないようです。
 それはひと安心なんですが、この噂はいけませんね。
 こんな噂が流れていたら、ロイドが話す話さない以前に、刺客が送られてきます。
 私を探している者達がこの都市にやってきてしまいます。
 さて、どうしたものでしょうか?
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