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征東大将軍

第156話:一八三六年・英国

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 フランスでの再革命の動きは着々と進んでいたが、それはイギリスも同じだった。
 今の英国はチャーティスト運動中で、急進派知識人と下層の労働者達が、選挙法改正と社会の変革を求めて政治闘争している。
 これにはアメリカ独立戦争とフランス革命が影響していると俺は思っている。
 ここでパリで再革命を起こせば、イギリスでも武力革命が始まるかもしれない。
 失敗しても、国民が殺し合い産業革命で発達した国内が荒廃するだろう。

 産業革命で東洋を圧倒する軍事力を手に入れた西欧列強だが、その分労働問題を抱え込んでいるのだ。
 そこを刺激して、貧困と差別に苦しむ労働者に武力革命を引き起こさせればいい。
 ロシア革命まで行くと困るのだが、そこまで行くまでには国内が戦国乱世になり、他国が介入したくなるくらいに疲弊するはずだ。

 ロシア革命の時もスペイン内戦の時も、外国の介入や国内の分離独立が起きて、国を立て直すのに長い時を要していた。
 上手くイギリスで武力労働革命を勃発させることができたら、イギリスは清国や日本に手出しする余裕がなくなるかもしれない。
 王家側が勝っても労働者側が勝っても、イギリスの国力が激減するのは確かだ。

 幸いと言っていいかは別にして、アメリカ合衆国内で出身国と民族と宗教を原因とした、激烈な内戦を引き起こす事に成功している。
 イギリスにいるアングロサクソン系と非アングロサクソンは、その勝敗に注目しているだろうし、親族や郷土出身者を殺されて反感を募らせているだろう。
 イギリスでも民族と宗教の対立を煽るのだ。
 清教徒革命のような規模の宗教戦争を、再度引き起こすことができれば最高だ。

 当然の策なのだがイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの対立を煽り、国内内戦から四カ国に分裂させるように誘導する。
 イギリスが連合王国から四カ国に分裂したら、日本への脅威は激減する。
 すでにスペインの凋落は著しい。
 ロシアもウラル山脈を境界に侵攻を防げそうな状態になっている。
 フランスも再革命が成功したら、ルイ・ナポレオンと同盟できるかもしれない。

 フランスがルイ・ナポレオンを皇帝とした帝国となり、その眼をナポレオン一世を撃退したロシアとイギリスに向けることに成功すれば、日本は安泰だ。
 イギリスの内乱誘導に成功していれば、下手にイギリスに手を出せば内乱を治める手助けになってしまうから、まずはポーランドに進撃させる。
 
 ポーランドはルイ・ナポレオンの従兄弟であるアレクサンドル・フロリアン・ジョゼフ・コロンナ=ヴァレフスキを王として親ロシア派を追い出す。
 フランスが西からモスクワを目指し、アレクサンドル・フロリアン・ジョゼフ・コロンナ=ヴァレフスキがコーカサスからポーランド解放を目指す。
 松前藩がカザフ・トルクメン方面からモスクワを目指す。
 どこまでやれるか分からないが、仕掛ける価値はある。
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