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征東大将軍

第159話:一八三七年、高須松平一族

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 征夷大将軍徳川家慶と父からの圧力で、百十九代光格天皇の第七皇女、欽宮蓁子内親王(一八二四生)と正式に結婚することになってしまった。
 俺はもっと後に引き延ばす心算だったのだが、南蛮列強との戦いを有利に進めている事で、公家どもが欲をかいたようだ。

 歴代の将軍家のように、皇室の御料所を増やして欲しいのだろう。
 だが俺にそんな気はない。
 家臣達が命懸けで手に入れた領地を、タダでくれてやる気など全くない。
 俺はタダ働きが大嫌いなのだ。
 領地が欲しければそれに相応しい働きをしろ、それだけの事だ。

 まあ、俺と父に次々と男子が生まれているから、焦ってもいるのだろう。
 直接領地が増えなくても、欽宮蓁子内親王が俺の子を生んで第二代松前藩主、いや第二代征東大将軍になったら、皇室も公家達も借金が頼みやすくなる。
 最初から返す気のない踏み倒し前提の借金を。

 徳川家がもたらした平和は、商人を台頭させ武士を困窮させただけではなく、公家も困窮させているのだ。
 まあ、戦国時代の朝廷の困窮に比べれば、今は天国だと思うけどね。
 それで文句を言う公家達は皆殺しにしたいというのが俺の本音だ。

 全ては先年俺が世界地図と戦況報告を徳川家慶と朝廷に送り、高直しをした事が原因だろう。
 あの詳細な世界地図では、徳川将軍家が支配していた本来の日本に比べて、俺が支配下に置いたり影響力を行使している地域が莫大過ぎた。

 視覚的に受ける感覚では、元の日本の数十倍、いや、百倍以上に思えてしまう。
 俺がいくら不毛の地だ、年中雪に覆われた極寒の地だと言っても、実際に四百万石の高直しをしているのだ、欲をかいても仕方がない所か
 多分今年は二百万石分くらいは収穫が増えるが、高直しは止めておくか。

 それよりも問題なのは援軍をどちらに送るべきかだ。
 ヨーロッパ方面を重視すべきなのか、それともアメリカ方面を重視すべきなのか。
 鎮三郎叔父上はもう精兵をつけてヨーロッパ方面に送ってしまった。
 今年中にメキシコの一部を分離独立させる予定だが、秀之助を送るか。
 秀之助にはまだ早いような気がするが、アメリカで初陣させるべきか正直悩む。

「松平斉恕の正室と側室」
光格天皇の第七皇女・欽宮・蓁子内親王(一八二四)
井上正紀の長女幸
 :太郎(一八三三年)
 :三郎(一八三五年)
井上正紀の次女雪
 :次郎(一八三四年)
 :四郎(一八三六年)

「高須松平家の役職と血統」
松平義建 :尾張徳川家六十一万九千石当主
松平容敬 :会津松平家二十三万石当主
松平胤昌 :蝦夷新田藩五万石藩主
松平斉恕 :松前松平家二九万五千余石
徳川秀之助:尾張徳川家世子(史実の徳川慶勝)
松平寧四郎:美濃国高須藩十二代藩主
松平整三郎:尾張徳川家・高須松平家・松前松平家の予備(史実では夭折)
松平鎮三郎:(史実の松平義比から徳川茂徳から一橋茂栄)
松平重六郎:(史実では戊辰戦争での不名誉な行いにより戸籍から抹消)
松平銈之丞:(史実の松平容保)
(遠藤鎮三郎:三上遠藤家養嗣子・蝦夷新田藩五万石藩主)

「松前松平家の石高」
阿羅斯加:二十万石格
益鳥兎 :二十万石格
巴児忽惕:二十万石格
知多  :二十万石格
黒竜江 :四十万石格
勘察加 :四十万石格
沿海  :八十万石格
千島  :二十万石格
樺太  :八十万石格
蝦夷地 :八十万石格
琉球  :十二万石
対馬国 :六二六九石
多禰国 :大隅諸島(種子島と屋久島)六二八五石
    :奄美諸島(鬼界島・大島・徳之島・沖良部島・与論島)三万二八二八石
    :沖大東島、南大東島、北大東島・尖閣諸島(無高)
    :小計四二三万石九一一三石
小笠原国:小笠原諸島三万石
    :南鳥島、ミッドウェー諸島、ウェーク島、ジョンストン島(無高)
    :小計三万石
 合計  :四二六万石九一一三石
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