20 / 89
第一章
第20話:職人育成
ロスリンの爵位は伯爵から侯爵になったが、領地が増えた訳でも収入が増えたわけでもないので、これから侯爵に相応しい領地にしなければいけない。
その為には、一番堅実なのが農業生産力の増大だ。
領内には未開の大森林が広がっているから、そこから始めるのが順当だ。
「井戸からでございますか、兄上様」
リアナが不思議そうにしているが、それも当然だろう。
この世界の基準では十分に発達した、王都と領都でずっと暮らしていたのだ。
この国に飲料に適した水が乏しいとは思ってもいないだろう。
そのそも王都や領都に選ばれた場所は、人の住み易い場所なのだ。
その逆で、未開の場所というのは人が住み難い何かの理由があるのだ。
その大きな原因の一つが、飲料水がない事だ。
「そうだ、リアナ。
これから領主として領内開発を行うのなら、未開になっている場所がなぜ今まで放置されていたかを、それを一番に知らなければいけないのだよ」
「ロスリン侯爵領が未開のままだったのは飲料水が原因なのですか。
そんな事は全く知りませんでした、王家の役人も教えてくれませんでした」
リアナだけでなく、王家の役人も貴族や士族がほとんどだ。
当然だが、危険で疲れて汚れるような仕事はしない。
従者を派遣したり現地の人間を呼びつけて原因を聞く者すら珍しいのだ。
普通は現地の平民が怠惰だから開発に失敗したと報告するだけだ。
役人がリアナにも同じように話していたのを横で聞いていたから知っている。
俺はそんな役人の話を信じたりしないから、直接足を運んで自分で調べた。
「他人を無暗に信用してはいけないよ、特に貴族や家臣を信用してはいけない。
人柄に身分は関係ないのだ、自分の目で確かめた相手だけを信じなさい」
「はい、自分で確かめた人だけを信じます、兄上様」
「では話を戻すが、私が魔力を使って井戸を掘るのは簡単だが、それでは私が死んだ後、民だけで井戸を掘り開拓を進めることができなくなる。
だから井戸を掘る道具や技術から教えなければいけない。
リアナにも覚えておいて欲しいから、一緒についてきなさい」
「はい、兄上様」
俺は前世の知識にある深井戸掘り技術、上総掘りを教えた。
同時にそれに必要な細長い鉄管を作る技術も教えた。
つまりは鍛冶職人と井戸職人を育成することになる。
同時に戦闘工兵を育てることを急いだ。
王家と戦う気など毛頭ないが、向こうから戦いを挑んできた時に黙って殺される気もないから、兵力を保持するのは当然だ。
それに、俺とリアナの領地が豊かになれば、盗賊はもちろん盗賊に偽装した貴族の私兵が略奪にやってくるのが当たり前の世界だ。
哀しい事だが、転生して今日まで学んできたこの国のありようがそうなのだ。
力のない正義など何の役にも立たない。
領地の豊かさに見合うだけの戦力を持ち、領民を護るのは領主の責務なのだ。
その為には、一番堅実なのが農業生産力の増大だ。
領内には未開の大森林が広がっているから、そこから始めるのが順当だ。
「井戸からでございますか、兄上様」
リアナが不思議そうにしているが、それも当然だろう。
この世界の基準では十分に発達した、王都と領都でずっと暮らしていたのだ。
この国に飲料に適した水が乏しいとは思ってもいないだろう。
そのそも王都や領都に選ばれた場所は、人の住み易い場所なのだ。
その逆で、未開の場所というのは人が住み難い何かの理由があるのだ。
その大きな原因の一つが、飲料水がない事だ。
「そうだ、リアナ。
これから領主として領内開発を行うのなら、未開になっている場所がなぜ今まで放置されていたかを、それを一番に知らなければいけないのだよ」
「ロスリン侯爵領が未開のままだったのは飲料水が原因なのですか。
そんな事は全く知りませんでした、王家の役人も教えてくれませんでした」
リアナだけでなく、王家の役人も貴族や士族がほとんどだ。
当然だが、危険で疲れて汚れるような仕事はしない。
従者を派遣したり現地の人間を呼びつけて原因を聞く者すら珍しいのだ。
普通は現地の平民が怠惰だから開発に失敗したと報告するだけだ。
役人がリアナにも同じように話していたのを横で聞いていたから知っている。
俺はそんな役人の話を信じたりしないから、直接足を運んで自分で調べた。
「他人を無暗に信用してはいけないよ、特に貴族や家臣を信用してはいけない。
人柄に身分は関係ないのだ、自分の目で確かめた相手だけを信じなさい」
「はい、自分で確かめた人だけを信じます、兄上様」
「では話を戻すが、私が魔力を使って井戸を掘るのは簡単だが、それでは私が死んだ後、民だけで井戸を掘り開拓を進めることができなくなる。
だから井戸を掘る道具や技術から教えなければいけない。
リアナにも覚えておいて欲しいから、一緒についてきなさい」
「はい、兄上様」
俺は前世の知識にある深井戸掘り技術、上総掘りを教えた。
同時にそれに必要な細長い鉄管を作る技術も教えた。
つまりは鍛冶職人と井戸職人を育成することになる。
同時に戦闘工兵を育てることを急いだ。
王家と戦う気など毛頭ないが、向こうから戦いを挑んできた時に黙って殺される気もないから、兵力を保持するのは当然だ。
それに、俺とリアナの領地が豊かになれば、盗賊はもちろん盗賊に偽装した貴族の私兵が略奪にやってくるのが当たり前の世界だ。
哀しい事だが、転生して今日まで学んできたこの国のありようがそうなのだ。
力のない正義など何の役にも立たない。
領地の豊かさに見合うだけの戦力を持ち、領民を護るのは領主の責務なのだ。
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花*Q−73@文フリ東京5/4
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!
ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。
なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
家族に家から追い出されたので、悪役令嬢を矯正します!
雲乃琳雨
恋愛
「お前、悪魔が憑いているぞ」 はあ? 失礼な!
母が亡くなりすっかり我儘に育った子爵令嬢のピニオンは、社交界では悪役令嬢と呼ばれている。最近になって父が平民の再婚相手と、亡くなった母と髪と目の色が同じ義妹を連れて来た。ピニオンが反発してさらに荒れると、婚約者から婚約破棄され、義妹には怪我をさせてしまう。父に修道院で行儀見習いとして暮らすように命じられた。戻れる条件は令嬢らしくなること。
ある日、修道院で暮らすピニオンの前に、悪魔祓いの聖騎士カイゼルが現れた。悪魔が憑いていると言われる。なんて失礼な奴!
修道院から連れ戻されることもなく、放置されて3年が過ぎてしまった。すっかり平民らしくなったピニオンの前に、またカイゼルが現れた。
平民化した悪役令嬢と、悪魔のような聖騎士と、本物の悪魔が絡む恋愛未満な二人のロマンチックラブコメディ。
一章で一旦終了します。
未来の記憶を手に入れて~婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが~
キョウキョウ
恋愛
リムピンゼル公爵家の令嬢であるコルネリアはある日突然、ヘルベルト王子から婚約を破棄すると告げられた。
その瞬間にコルネリアは、処刑されてしまった数々の未来を見る。
絶対に死にたくないと思った彼女は、婚約破棄を快く受け入れた。
今後は彼らに目をつけられないよう、田舎に引きこもって地味に暮らすことを決意する。
それなのに、王子の周りに居た人達が次々と私に求婚してきた!?
※カクヨムにも掲載中の作品です。