悪役令嬢の妹を助けたい、ただそれだけなんだ。

克全

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第一章

第37話:叱責

「兄上様、私の事を大切に思ってくださるのはうれしいですが、今回の件は少々やり過ぎではありませんか。
 少なくとも何の罪もない民を殺す事は、今まで兄上様が私に教えてくださっていた、ノブレス・オブリージュに反します。
 今直ぐイニス王国とマナーズ王国の民を解放してあげてください」

 リアナの成長に、涙が流れそうになるくらい喜びを感じた。
 本当ならその場で踊り出したくなるくらいうれしいのだ。
 リアナの手を取って踊り、胴上げしてやりたいくらいだ。
 だが必死でその想いを心の中に押し込む。
 ここでホイホイをリアナの言う事を聞いては、やりたくもない悪人の演技をやった意味が根本から消し飛んでしまう。

「駄目だ、無礼にはそれ相応の罰を与えなければ、同じ無礼を働く者が現れる。
 今回の件に関しては、断固とした態度を示さなければいけない。
 ここで中途半端に許しては、リアナを護ることができなくなってしまう。
 どうしても、民だけでも解放させたいというのなら、イニス王国とマナーズ王国に無礼に対する正式な詫びと賠償をさせなければいけない。
 リアナが民を助けたいというのなら、両国にそれをやらせなさい。
 そして私に衆人環視の場所で正式に要請しなさい。
 そうでなければ絶対に両国を許すわけにはいかない。
 ああ、但し、全ての交渉はリアナが直接行ってはいけない。
 性根の腐った連中は、リアナを人質に取って起死回生を図るからね。
 クレマンをはじめとする重臣達か、ダーシィをはじめとする侍女にやらせなさい」

 俺は長々とリアナに言い聞かせた。
 この件は内々で俺と両国が直接交渉するか、ブノワに交渉させる心算だったが、リアナがここまで立派に育ってくれているのなら、リアナをもっと表に出す。
 最初からリアナをルナネ以上の聖女に育てる心算だったのだ。
 ここでリアナが聖女に相応しい態度を示してくれたのだから、同じ事を舞踏会や晩餐会でやってくれれば、大陸中にリアナの名声が広がる。

 俺はすでに恐怖の対象になっているから、俺を抑えられる存在がリアナだけだという事を大陸中に広めることができたら、リアナの名声はさらに上昇するだろう。
 その分リアナを手に入れようと画策する悪党共が増えるだろうが、イニス王家とマナーズ王家が皆殺しになれば、その数を抑えることができるはずだ。

 いや、それは甘すぎる考えだな。
 自分だけは大丈夫と考えるのが馬鹿な悪党というモノだ。
 多くの悪党共が炎に集まる羽虫のように群がって来てしまうだろう。
 炎のように悪党共を焼き殺す存在が必要だな。
 今は隠形で姿を隠している魔獣と、分かりやすく表に出ているバロンにリアナを護らせているが、その数を倍増させた方がいいかもしれないな。
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