悪役令嬢の妹を助けたい、ただそれだけなんだ。

克全

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第一章

第56話:チェンジリング

 最初その噂を聞いた時には、我が耳を疑ってしまった。
 俺がチェンジリング、妖精の取り違え子だというのは、あまりにも荒唐無稽過ぎて、心の中で大爆笑してしまった。
 いったい何処の誰がそんな噂を流しているのかと調べたら、何と自家の城代家老、いや国務大臣セザールだと分かって更に大爆笑してしまった。

 だがセザールが噂を流してくれていると分かって、その心も理解できたから、咎める事もできないし噂を打ち消す事もできない。
 セザールはリアナ女王の無理無体な命に従った上で、俺とリアナ女王の名誉を護ろうと必死で考えたのだ。
 自分と周囲の者の命を護ろうとするのは当然の事なので、全く気にならないし、むしろよくやっていると感心した。

 せっかくセザールが御膳立てしてくれているのだから、乗ることにした。
 最終的にどういう結果になるのかはまだ分からないが、次善の策、三の矢四の矢として、チェンジリングの噂は肯定も否定もせずに大陸中に広める。
 口では肯定も否定もしないが、姿形を変えて噂が増長するようにする。
 何も露骨に全身をハイエルフの様に変化させたり幻覚を見せたりするわけではなく、ほんの少し耳だけをとがらすのだ。

 別に完全にハイエルフの姿形に変化させなくても、俺の過去の実績を考えれば、誰だって俺を人間とは思えなくなる。
 むしろハイエルフだといった方が誰もが納得するだろう。
 俺はそれくらいの実績を積み重ねてきているのだ。
 普通の人間に数十のバロンやズメイを使役する事など不可能なのだから。

「国王陛下、耳をどうなされたのですか。
 以前とは違う形になっておられます、何か悪い病だったらいけませんので、医師や薬師に診せられてはいかがですか」

 王都大臣のブノワが露骨に話を振ってくれる。
 リアナ女王が近親婚に向けて調査を命じたのが、ブノワの父でリアナ女王の王都家老を務めるクレマンだから、事前に相談ができているのだろう。
 そうなると、俺が姿を変える事を予測していたことになるな。
 少々複雑な心境だが、幼い頃から俺やリアナ女王に仕えてくれているのだから、思考や行動を読まれるのは仕方がないか。

「心配はいらんぞ、ブノワ、体調には全く問題はない。
 少々姿形が以前と違ってきたとしても、余の本質が変わるわけではない。
 これまで通り民を飢えさせることのないように政に励むから、少々耳の形が変わったといって騒ぎ立てるな」

「申し訳ありませんでした、国王陛下。
 陛下の体調を心配しただけで、他意は全くございません。
 我が忠誠には一片の変りもございません」

「うむ、信じておるぞ」

 さて、これで噂がどれほど広まり増長するのだろう。
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