悪役令嬢の妹を助けたい、ただそれだけなんだ。

克全

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第一章

第62話:指導

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 リアナ女王が少し不機嫌だが、これは仕方がない事だ。
 俺の軍学校指導を邪魔するために色々おねだりしたのに、指導を中止させることができなかったのだから。

 だが、その不機嫌を決して表情や態度に表していない。
 俺がそれを察することができるのは、長年兄として可愛がってきたからだ。
 それに、本心から不機嫌なわけではない。
 心の過半は俺と一緒に学生を指導できる事を喜んでいる。
 リアナ女王の国を支える未来ある有望な若者を、直接指導できるのだから。

「さて諸君、よくぞ難関の試験と面接を合格した。
 諸君らの努力を心から称賛する。
 これからもその心掛けを忘れず文武に励んでくれ」

 実は全員が若者と言える年齢ではない。
 幼いと言えるほどの少年から、壮年と言っていい年齢までいる。
 学力と体力と人間性のどれかが光る者は、全員合格させているからだ。
 そんな事をすれば莫大な人数になるのだが、それは仕方がない。
 磨かれていない隠れた原石を探し出すのだから、当然の事だ。

 これが普通の国なら、莫大な人間を学校で学ばせたら、その人数分税収が落ち込み費用もかかるので、絶対に不可能な事だ。
 だが俺には食糧にする穀物を促成栽培することができるし、費用として使う宝石を創り出す事もできる。
 他の国では不可能な事だが、俺ならば宝石を貨幣にする事も可能なのだ。

「ではまずは全員の実力が知る所から始める。
 一人ずつ余とリアナ女王が直接戦い、勝った者を指導役や班長に任命する。
 まずは余と戦ってもらう、掛かってこい」

 俺の言葉に最初はほぼ全員が戸惑っていた。
 大陸に広まっている噂では、俺は人間離れした強さになっている。
 だから俺が戦うと言っても動揺する事はないだろう。
 だが見た目がとても嫋やかで清楚なリアナ女王が稽古をつけると言っても、悪い冗談としか思えないだろう。

 だがそれは人を見る目がないというモノだ。
 俺はリアナ女王を溺愛しているから、自衛力くらい身に付けさせている。
 バロンやズメイに護らせているが、世の中には万が一という事がある。
 特にトイレに行っている間は、巨大なバロンやズメイは側にいられない。

 ズメイ人なら常に側にいられるのだが、ズメイ人に見られながら用を足すのは、常に護衛や側近が付き従ってきたリアナ女王も嫌だろう。
 だから透明な使い魔に護らせている。
 だがその事はよほどの場合しか明かせないから、非常時しか使えない。
 表向きにはリアナ女王に武芸を身につかせるのが一番だったのだ。

 だが、全員がリアナ女王の見た目に惑わされているわけではない。
 ごく少数だがリアナ女王の実力を理解している者がいる。
 本当に気配から見抜いたのか、それとも俺の態度から察したのか。
 どちらにしても期待できる人材がいる。

「さあ、君からかかってきなさい」
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