悪役令嬢の妹を助けたい、ただそれだけなんだ。

克全

文字の大きさ
77 / 89
第一章

第77話:遺伝子治療

 モーガン王女の治療に成功した俺は、国に帰って治療を始めた。
 今まで待たせていた国内の遺伝障害者達の治療だ。
 一度成功すれば後は迷う事も怯える事もない。
 正直な話、初めてする事は怯えてしまうのだ。
 慎重といえば聞こえがいいが、実は憶病でビビりなのだ。

 だがそんなんところをリアナに見せるわけにはいかない。
 愛する妹に兄が憶病者のビビりだとは思われたくない。
 だから見栄を張って勇気を振り絞って来た。
 どうしても気が乗らない時には慎重な性格だと思わせてきた。

 まあそんな事は今はどうでもいい事だ。
 今は何を置いても先天的遺伝子障害の子供達を治療する。
 全てはリアナとの近親婚に備えての事だ。
 実はその事もまだ決断できない憶病者なのだ。

 近親婚を繰り返すと、劣性遺伝子が子供に伝わってしまう可能性が高くなる。
 身も蓋もない言い方をすれば、先天性の病気や障害が起きやすくなる。
 前世ヨーロッパのハプスブルク家のでは「下顎前突症」「身体が不自由」「知的障害」「虚弱体質」「夭折」などがあった。

 俺が知る範囲で気をつけないといけないのは、致死性のある遺伝子が表に現れやすく子供が夭折してしまう事だ。
 リアナの無理を聞いて近親婚して子供が夭折してしまうようなことがあれば、繊細なリアナの心が壊れてしまうかもしれない。

 近親婚では近交退化と呼ばれる内臓疾患や骨格異常が起こりやすくなる。
 それを防ぐためには遺伝子を書き換える事に慣れることだ。
 魔力を使って念じれば、遺伝子を書き換えて健康な遺伝子にできると思い込む。
 思いの強さと魔力次第で何でもできるこの世界の法則を利用する。

 それは実際にオーガン王女では成功していたし、その後の先天遺伝子異常の患者達の治療にも成功している。
 使う魔力量も最初からそれほど多くはなかったが、更に少なくなっている。
 魔術に練達すると使う魔力が少なくてすむと思い込めている証拠だ。

 城に集まっている、ゴードン王国とロスリン王国の先天遺伝子異常の患者を全員治したら、次は両国で生まれてくる子供達の治療だ。
 貧しく医療の送れているこの世界では、当然のように周産期死亡率が高い。
 富国強兵の産めよ増やせよではないが、ゴードン王国とロスリン王国に住む国民を増やしたいのだ。
 
 いや、そんな建前の話は止めよう。
 俺に助けられる人間を見殺しにするのはとても居心地が悪いのだ。
 不完全な良心と憶病なくらい慎重な、いや、ビビりで憶病な性格。
 助けられる母子を見殺しにしていると思うと夜も眠れなくなる。
 できない事なら何の痛痒も感じない。
 自分が狙われ殺され可能性がある時は平気で見捨てられた。

 だが、完全に有利になり、絶対に自分が危害を加えられないと分かった途端、誰かを見殺しにしている事に強い罪悪感を感じてしまうのだ。
 本当に身勝手で難儀な性格だと自分でも思う。
 見栄を張って変えられる表面的な性格と、どうしても変えられない本性がある。
 俺はそんな本性を抱えて生きていくしかないのだ。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花*Q−73@文フリ東京5/4
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

家族に家から追い出されたので、悪役令嬢を矯正します!

雲乃琳雨
恋愛
 「お前、悪魔が憑いているぞ」 はあ? 失礼な!  母が亡くなりすっかり我儘に育った子爵令嬢のピニオンは、社交界では悪役令嬢と呼ばれている。最近になって父が平民の再婚相手と、亡くなった母と髪と目の色が同じ義妹を連れて来た。ピニオンが反発してさらに荒れると、婚約者から婚約破棄され、義妹には怪我をさせてしまう。父に修道院で行儀見習いとして暮らすように命じられた。戻れる条件は令嬢らしくなること。  ある日、修道院で暮らすピニオンの前に、悪魔祓いの聖騎士カイゼルが現れた。悪魔が憑いていると言われる。なんて失礼な奴!  修道院から連れ戻されることもなく、放置されて3年が過ぎてしまった。すっかり平民らしくなったピニオンの前に、またカイゼルが現れた。  平民化した悪役令嬢と、悪魔のような聖騎士と、本物の悪魔が絡む恋愛未満な二人のロマンチックラブコメディ。   一章で一旦終了します。

未来の記憶を手に入れて~婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが~

キョウキョウ
恋愛
リムピンゼル公爵家の令嬢であるコルネリアはある日突然、ヘルベルト王子から婚約を破棄すると告げられた。 その瞬間にコルネリアは、処刑されてしまった数々の未来を見る。 絶対に死にたくないと思った彼女は、婚約破棄を快く受け入れた。 今後は彼らに目をつけられないよう、田舎に引きこもって地味に暮らすことを決意する。 それなのに、王子の周りに居た人達が次々と私に求婚してきた!? ※カクヨムにも掲載中の作品です。