王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全

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16話

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「ノヴァ!
 よく戻って来てくれたノヴァ。
 やはり私の事を愛してくれていたのだな。
 それでよい、それでよい。
 ならば私の婚約者に戻してやろう。
 恩に着るがいい」

 何とも身勝手な言い分です。
 私が屋敷に戻ってきたら、もう自分が悪かったことを棚に上げています。
 薬店に来て懇願したことなど、なかったことにしています。
 オリビア母さんもオウエンも、怒りのあまり顔色が真っ青です。
 事前に約束をしていなければ、この場で王太子を殺していた事でしょう。

「お待ちください王太子殿下!
 ノヴァは追放刑を受けた罪人ではありませんか。
 ゴードン公爵家とのつながりを求められるのなら、ミレイの方が最適です。
 母の私が保証いたします。
 性格の悪いノヴァよりも、ミレイの方が王太子殿下に相応しいです。
 ミレイを婚約者にしてくださるのなら、私の実家ボイル公爵家も、私が説得して殿下のお味方にして御覧にいれませす」

「王太子殿下。
 ミレイはずっと王太子殿下をお慕いしておりました。
 どうかお側に置いてくださいませ。
 必ずや王太子殿下のお役にたって見せます」

 予想通りに展開になりましたね。
 必ず母と妹が自分達を売り込んでくると思っていました。
 だからオリビア母さんとオウエンは、王太子を殺すのを我慢していたのです。
 ですがこの程度の事、父上も兄上も予想していたはずです。
 それを阻止しないという事は、何らかの罠をしかけているという事でしょう。
 ですが私には関係ない事です。
 配慮する必要などありません。

 それに、ミレイを見る王太子の表情に、今まで以上の嫌悪感がわいてしまいます。
 まだ多分に幼さが残るミレイに劣情をもよおしているようです。
 眼に宿る獣欲が明らかです。
 正視に耐えない汚らわしさと見苦しさです。
 もうこの場にいることが耐えられません。

「それはようございました。
 私も婚約を破棄され、世間を憚るほどの恥をかかせた相手と、もう一度婚約したいとは爪の先ほども思っていません。
 薬店に来たときの懇願の言葉も忘れ、恩着せがましく再度の婚約を押し付ける、厚顔無恥と添い遂げられるほど、聖人君子ではありません。
 色情狂と王国内外で揶揄される愚者を引き受けてくださるのなら、どれだけ多くの者が幸福になれる事でしょう。
 では私はこれで失礼させていただきますね」

 私はあっけにとられる三人を後にして、早々に屋敷を出て行くことにしました。
 父上も兄上も止めに現れません。
 これが父上と兄上が描いた筋書きなのでしょうか?
 それとも何か裏があるのでしょうか?
 考えてもしかたがない事ですね。
 ここは急いで逃げることにいたしましょう。
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