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第1章
第37話:人集め・佐藤克也視点
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僕はイワナガヒメたちに守られながら他の国に行った。
他の国に行って、農地を耕してくれる人を集めようとした。
雇う条件は、この世界の常識にしたがった方が良いと言われた。
僕のいた日本の常識は、この世界の非常識だと教えてもらった。
そんな事を言われても、病院から出た事のない僕は、日本の常識も知らない。
働いた事もない子供の僕は、どんな条件で人を雇うのか知らない。
だから全部イワナガヒメたちに任せた。
僕はこの世界の人と直接話しちゃいけないと言われている。
神使の人たちとこの世界の人たちの話を聞いて、勉強するだけでいい。
身体強化を14回重ね掛けしたので、遠くのヒソヒソ話も聞けるんだ。
「何者だ、紹介者のいない者は、村の中には入れられないぞ!」
僕たちはアストリア王国を出てサザーランド帝国に来た。
僕が支配する事になった国の正式な名前がアストリア王国だと初めて知った。
僕は、アストリア王国の伯爵家から分かれた者が興した商家の跡取りになった。
動画の時代劇でいう、身分を隠すための世を忍ぶ仮の姿だ。
商家の次期当主が、勉強のために人集めに同行したという設定だ。
「我々は怪しい者じゃない、人集めの来た商会の者だ。
アストリア王国の開拓地で働く契約農民を集めている、リデル商会の者だ。
この国、サザーランド帝国のスペンサー商会が出した紹介状を持っている」
「アストリア王国の契約農民だと、あんなむごい国に行けるか!」
「むごい扱いをされるのは自国の民だけだ、サザーランド帝国民は普通に扱われる。
サザーランド帝国民をむごい扱いで働かしたら、戦争の原因になる。
アストリア王国のバカな王家や貴族でも、そんな危険な事はしない。
安心しろ、サザーランド帝国が守ってくれる、この国の契約農民と同じ待遇だ」
「ちょっと待っていろ、村長に話してくる」
「分かった、待つが、できれば急いでくれ、魔獣に襲われるのは嫌だ」
交渉役をしてくれている神使が上手く話してくれた。
ただ、魔獣が怖いというのは大ウソだ、魔獣は僕たちのトモダチだ。
先に来た神使たちが、魔獣たちを説得してくれている。
この村の人たちが中に入れてくれなかったら、トモダチになった魔獣たちが襲うフリをしてくれる事になっている。
その時の態度で雇うか雇わないか決めるのだ。
紹介状を持った商隊が魔獣に襲われているのに、村の中に入れないような連中なら、僕も雇う気になれない。
「決断力のない村長なのか、私たちをじらして有利な条件で引き出す気なのか?」
少し待っていると、イワナガヒメが独り言のようにつぶやく。
僕に教えるつもりなのか、警告しているのか、分からない。
はっきり言わないのは、自分で考えて答えを出せという事かな?
予定通り魔獣が現れて、僕たちを襲うフリをしてくれた。
演技だから誰も傷つかないけれど、城門の上から見ている村人は怖いと思う。
城門を閉じて僕たちを見殺しにするような村なら相手にしない、他の村に行く。
「開けてくれ、このままでは死傷者がでる、早く開けてくれ」
人に姿に化けた神使が上手に演技してくれる。
心優しい人間なら城門を開けて安全な村の中に入れてくれるはずだ。
だけど、なかなか城門を開けてくれない。
「イワナガヒメ、こんな村の人間は雇いたくないよ」
「それが良いです、直ぐに次の村に行きましょう」
お供の氏神様たちも神使たちも僕の言う通りにしてくれた。
魔獣を追い払ったように見せかけてから、村から遠ざかる事にした。
その気になれば一瞬で城に戻れるけれど、村人が見ているからできない。
普通の人のフリをしているので、人と同じ事しかできない。
「待て、どこに行く、村の人間を雇うのではないのか?」
「城門を開けず、我らを見殺しにしようとした村の人間を雇う訳がないだろう!
この村の行いはスペンサー商会に抗議する。
このような村を紹介したスペンサー商会には、断固とした抗議をする!」
「待て、待たないか、そんな事はさせんぞ!」
「ふん、スペンサー商会との交易を止められたら困るとでも言うのか?
止められないように、口封じに我々を殺すとでも言うのか?
いいだろう、殺せるものなら殺してみろ!
あれだけの魔獣を追い払える我々を、殺せるものなら殺してみろ!」
交渉役の神使がケンカを売っている。
同じ人間を見殺しにしようとした村人たちを許せないのかな?
僕も許せないけれど、ケンカを売らなくても良いと思う。
「まて、待ってくれ、謝れと言うのなら謝る、だから待ってくれ!」
「謝れと言うのなら謝るだと、悪いと思っていないのに形だけ謝る気か?!
人でなし、我らが弱い商隊なら魔獣に食い殺されていたぞ!
我らが死んだ後で商品や金を奪う気だったのだろう!
本当なら報復に焼き討ちをして皆殺しする所だが、見逃してやる。
他国人を勝手に殺す訳にはいかないから、ガマンしてやる。
その代わりスペンサー商会との商売は止める。
その報復を受けて死に絶えるが良い!」
「謝る、すまん、申し訳なかった、できる限りの償いをする!
だから中に入って話を聞いてくれ」
「ふん、中に入ったら村人全員で襲う気だろう?
お前らの下劣なやり口くらいお見通しだ!
城壁の外に出て魔獣と戦う事もできない憶病者どもが!
本気で謝る気が有るなら城壁の外に出てこい、村長が出てきて謝れ!」
え、え、え、何を言っているの、何が起こったの?
他の国に行って、農地を耕してくれる人を集めようとした。
雇う条件は、この世界の常識にしたがった方が良いと言われた。
僕のいた日本の常識は、この世界の非常識だと教えてもらった。
そんな事を言われても、病院から出た事のない僕は、日本の常識も知らない。
働いた事もない子供の僕は、どんな条件で人を雇うのか知らない。
だから全部イワナガヒメたちに任せた。
僕はこの世界の人と直接話しちゃいけないと言われている。
神使の人たちとこの世界の人たちの話を聞いて、勉強するだけでいい。
身体強化を14回重ね掛けしたので、遠くのヒソヒソ話も聞けるんだ。
「何者だ、紹介者のいない者は、村の中には入れられないぞ!」
僕たちはアストリア王国を出てサザーランド帝国に来た。
僕が支配する事になった国の正式な名前がアストリア王国だと初めて知った。
僕は、アストリア王国の伯爵家から分かれた者が興した商家の跡取りになった。
動画の時代劇でいう、身分を隠すための世を忍ぶ仮の姿だ。
商家の次期当主が、勉強のために人集めに同行したという設定だ。
「我々は怪しい者じゃない、人集めの来た商会の者だ。
アストリア王国の開拓地で働く契約農民を集めている、リデル商会の者だ。
この国、サザーランド帝国のスペンサー商会が出した紹介状を持っている」
「アストリア王国の契約農民だと、あんなむごい国に行けるか!」
「むごい扱いをされるのは自国の民だけだ、サザーランド帝国民は普通に扱われる。
サザーランド帝国民をむごい扱いで働かしたら、戦争の原因になる。
アストリア王国のバカな王家や貴族でも、そんな危険な事はしない。
安心しろ、サザーランド帝国が守ってくれる、この国の契約農民と同じ待遇だ」
「ちょっと待っていろ、村長に話してくる」
「分かった、待つが、できれば急いでくれ、魔獣に襲われるのは嫌だ」
交渉役をしてくれている神使が上手く話してくれた。
ただ、魔獣が怖いというのは大ウソだ、魔獣は僕たちのトモダチだ。
先に来た神使たちが、魔獣たちを説得してくれている。
この村の人たちが中に入れてくれなかったら、トモダチになった魔獣たちが襲うフリをしてくれる事になっている。
その時の態度で雇うか雇わないか決めるのだ。
紹介状を持った商隊が魔獣に襲われているのに、村の中に入れないような連中なら、僕も雇う気になれない。
「決断力のない村長なのか、私たちをじらして有利な条件で引き出す気なのか?」
少し待っていると、イワナガヒメが独り言のようにつぶやく。
僕に教えるつもりなのか、警告しているのか、分からない。
はっきり言わないのは、自分で考えて答えを出せという事かな?
予定通り魔獣が現れて、僕たちを襲うフリをしてくれた。
演技だから誰も傷つかないけれど、城門の上から見ている村人は怖いと思う。
城門を閉じて僕たちを見殺しにするような村なら相手にしない、他の村に行く。
「開けてくれ、このままでは死傷者がでる、早く開けてくれ」
人に姿に化けた神使が上手に演技してくれる。
心優しい人間なら城門を開けて安全な村の中に入れてくれるはずだ。
だけど、なかなか城門を開けてくれない。
「イワナガヒメ、こんな村の人間は雇いたくないよ」
「それが良いです、直ぐに次の村に行きましょう」
お供の氏神様たちも神使たちも僕の言う通りにしてくれた。
魔獣を追い払ったように見せかけてから、村から遠ざかる事にした。
その気になれば一瞬で城に戻れるけれど、村人が見ているからできない。
普通の人のフリをしているので、人と同じ事しかできない。
「待て、どこに行く、村の人間を雇うのではないのか?」
「城門を開けず、我らを見殺しにしようとした村の人間を雇う訳がないだろう!
この村の行いはスペンサー商会に抗議する。
このような村を紹介したスペンサー商会には、断固とした抗議をする!」
「待て、待たないか、そんな事はさせんぞ!」
「ふん、スペンサー商会との交易を止められたら困るとでも言うのか?
止められないように、口封じに我々を殺すとでも言うのか?
いいだろう、殺せるものなら殺してみろ!
あれだけの魔獣を追い払える我々を、殺せるものなら殺してみろ!」
交渉役の神使がケンカを売っている。
同じ人間を見殺しにしようとした村人たちを許せないのかな?
僕も許せないけれど、ケンカを売らなくても良いと思う。
「まて、待ってくれ、謝れと言うのなら謝る、だから待ってくれ!」
「謝れと言うのなら謝るだと、悪いと思っていないのに形だけ謝る気か?!
人でなし、我らが弱い商隊なら魔獣に食い殺されていたぞ!
我らが死んだ後で商品や金を奪う気だったのだろう!
本当なら報復に焼き討ちをして皆殺しする所だが、見逃してやる。
他国人を勝手に殺す訳にはいかないから、ガマンしてやる。
その代わりスペンサー商会との商売は止める。
その報復を受けて死に絶えるが良い!」
「謝る、すまん、申し訳なかった、できる限りの償いをする!
だから中に入って話を聞いてくれ」
「ふん、中に入ったら村人全員で襲う気だろう?
お前らの下劣なやり口くらいお見通しだ!
城壁の外に出て魔獣と戦う事もできない憶病者どもが!
本気で謝る気が有るなら城壁の外に出てこい、村長が出てきて謝れ!」
え、え、え、何を言っているの、何が起こったの?
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