地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全

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第二章

第65話:休日

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「ミャアアアアオン」

 朝からサクラが甘えてくる。
 賢いサクラはひと段落ついた事を理解してくれている。
 だから今まで我慢していた遊びを要求してきた。

 サクラの全身を異世界ネットスーパーで買った馬用ブラシで整えてあげる。
 本当は猫専用のブラシを使ってあげたいのだが、重種馬以上の大きくなったサクラでは、猫用ブラシは小さ過ぎる。

 魔術で回復や快復が可能性になったとはいえ、皮膚を刺激して血流を促進させ新陳代謝を良くするのは、サクラの健康維持には欠かせないと思っている。
 いや、そんな建前よりも、サクラが気持ち様さそうにする姿が見たい。

 毛玉ができないようにしてあげる。
 被毛の汚れを落としてあげる。
 皮膚を清潔に保ってあげる。

 そうしておけば、グルーミング時に飲み込む被毛の量を少なくできる。
 吐き出さなければいけない被毛の量を減らせれば、サクラが苦しまずにすむ
 
「グルグルグルグル」

 サクラがうれしそうに喉を鳴らしてくれると、俺もうれしくなる。 
 首から背中、尻尾の方に流してブラッシングすると喜んでくれる。
 尻尾の付け根を重点的にやると、更に喜んでくれる。

 背中に満足すると頭を擦りつけてくるから、額の辺りを優しくする。
 額に満足すると、お腹を見せてくれる。
 弱点のお腹は、強くなり過ぎないように気を付けなければいけない。

 脚は余り触られたくないようなので、さらっと終わらせる。
 もう大丈夫かなと思っても、もう一度背中や額をやれと身体を擦りつけてくるので、いつの間にか結構な時間がたっている。

 サクラのお世話は単なるブラッシングだけでは終わらない。
 最後に肉球にケガをしていないかチェックしなければいけない。
 全身全霊の力を使って肉球プニプニをしなければいけない。

 ブラッシングが終わったら朝飯の準備。
 手を抜いた事などないけれど、最近は俺が出した物を素直に食べてくれていた。

 だが今日は、珍しく出した物をイヤイヤした。
 時間に余裕があるから我儘を言っても良いと分かっているのだ。
 こう言う、忙しい時は気を使い、時間のある時に甘える性格も可愛い。

 地球にいた頃は、カロリーの与え過ぎには注意しなければいけなかった。
 特にシニアになってからは、脂肪の多い肉は欲しがってもあげられなかった。

 だが今は、好きな物を好きなだけ食べさせてあげられる。
 深層で狩ったボア系がドロップしたロース肉も、脂身を取らずにあげられる。

 今のサクラなら寄生虫など心配いらないと思うが、念のためにローストボアにしておいた塊肉にする。

 食感を愉しむためのカリカリを塗した上から液状キャットフードをかけてあげる。
 美味しそうに食べるサクラを見ていると、俺もうれしくなってくる。

 サクラが美味しそうに食べている間に、俺も同じローストボアを食べる。
 最近は婚約者になったカミーユと食べる事が多かったが、今日はまだダンジョンから戻っていないので、朝食の相手をする必要がない。

 昨晩食べ過ぎた菓子パン分のカロリーを消化するのに必死なのだろう。
 魔術が使えるなら、必要もない魔術を連発するだけでカロリーを消費できるのだが、可哀想に、カミーユに魔術の才能はない。

 回復系の魔術で自分のケガを治す時は、身体に蓄えてありタンパク質や脂肪、各種栄養素を使うので、それでカロリーを消費する事もできる。

 だが、幾ら痩せるためとはいえ、わざとケガをしろとは言えない。
 いや、もしこの方法が知れ渡ってしまったら、女性の中には進んでケガをする人がいるかもしれないので、怖くて教えられない。

「ミャアアアアオン」

 サクラがもっと食べたいと身体をすり寄せてくる。
 五十キロのボア系ロース肉を食べても物足らないようだ。
 いや、これから使うカロリーを食べ貯めておきたいのだろう。

「レバーが食べたいのか?
 レバーは食べ過ぎるとビタミンA過剰摂取症になるぞ?」

「ミャ、ミャ、ミャ、ミャン」

 そんな病気になるほど馬鹿じゃないと反論されてしまいまった。
 タンパク質過剰摂取症とか腎臓病とか、各種栄養素も食べ過ぎると病気になってしまうが、サクラがそんなドジを踏むことはないな。

 カミーユやポルトスならありえるが、サクラに限ってはありえない。
 だから、魔境で狩ったベア系魔獣のレバーをドンと出してやれる。
 パントリーに保存しておいたから、寄生虫も病原菌もいないはずだ。

「ミャアアアアオン」

 満腹になったサクラがダンジョンに行こうと誘ってくる。

「ちょっとだけ待ってくれ。
 軍の連中に城塞都市から出ないように命じてくる」

 多くの捕虜を兵士にした。
 彼らには毎日城塞都市外に造った平野で素振りをさせている。

 今日も素振りさせる予定だったが、サクラと俺がいない状態でやらせると、敵対している近隣領主軍や魔獣がやってきた時に殺されてしまう。

 万が一にもそんな事になったら胸が痛むので、城塞都市外訓練は中止させた。
 その代わり、城壁高層マンション内での個人訓練や、城壁の天辺にある歩廊での部隊訓練を命じた。

 城壁高層マンションの個室だと、個人の素振りしかできない。
 だが歩廊にはそこそこの幅と長大な距離がある。
 百人隊くらいなら部隊規模で素振り練習ができる。
 
「待たせたね、行こうか」

「ミャアアアアオン」

 最低限の準備が終わってからナミュールダンジョンに潜った
 一般的なダンジョンだと聞いているが、まだ誰も最下層まで潜っていない。
 少なくとも全ナミュール侯爵時代には、銀片級冒険者しかいなかった。

「今日はどこまで潜る気だい?」

「ミャ、ミャ、ミャ、ミャ」

「最後まで行くって、それは幾らなんでも遣り過ぎじゃないか?」

「ミャ、ミャン、ミャン、ミャ、ミャン」

「わかったよ、最近は十分遊んであげていなかったから、今日はサクラが満足するまで遊んであげるよ」

 さて、どこまで潜る事になるのやら。
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