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第一章
第36話:旅程8
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グッワシャ
スタリオンの左前脚が折れた。
ドラゴッシュを迎え討って放たれた前蹴りが逆効果だった。
ドラゴッシュの強靭な身体には弾き返されてしまった。
衝撃に耐えられずに骨が折れ肉と皮を突き破ってしまっていた。
馬は普通の状態では三本足で立っていられない。
まして今は戦闘用の軍馬装備なのだ。
重みと弾き返された衝撃で前に倒れ込んでしまった。
全く想定外の事態だった。
並の騎士ならそのまま馬から放り出されていただろう。
だがグレアムは鍛え抜かれた騎士だ。
とっさにスタリオンから飛び降りてドラゴッシュに斬りかかった。
スタリオンが身を挺して作ってくれた絶好の機会だ。
今までは押されてしまって双剣使いなのに一剣で戦っていた。
だが今は諸手に剣を持って斬りかかっている。
ギャッキーン
抜いたばかりの左手の剣でドラゴッシュの頚を狙って斬りかかった。
だがその剣はドラゴッシュの右手に防がれてしまった。
ドラゴッシュの右手には銀色に輝く鱗に覆われていた。
グレアムは内心の驚きを抑えつつ右手の剣で再度首を狙った。
だがその剣もドラゴッシュの左手に防がれてしまった。
もうボロボロになっていた剣はドラゴッシュの鱗の硬さと剣圧のぶつかり合う衝撃に耐えきれず折れてしまった。
「ホオウッホホホホホ、ドラゴッシュは竜魔族と人族の合いの子なのよ。
人間が勝てる相手ではないわ。
もう諦めて食べられなさい。
ドラゴッシュ、さっさと喰い殺してしまいなさい。
私は早くこの子の生き血が飲みたいのよ。
そうね、もう待っていられないわ。
早く飲まないと私の美貌が衰えてしまうわ。
この場で飲んでしまいましょう」
女はそう口にすると少女の髪を掴んで無理矢理立ち上がらせた。
そして少女の頚に喰らいつこうとした。
女の口には鋭い牙が生えていた。
グレアムには開いた女の真っ赤な口腔が地獄の入り口に見えた。
グレアムは無意識に左手の剣を全力で投げていた。
グッホッギャ
「ギャアアアアア」
グレアム渾身の投剣は見事に女の口に突き刺さっていた。
口から後頭部に抜けるほどの効果を生んでいた。
普通の人間ならば即死しているほどのダメージだろう。
だが女は死んでいなかった。
怒りに満ちた視線をグレアムに向けている。
そして信じられない事に口から頭に抜けた剣をかみ砕いてしまった。
「どらごっしゅっ、さっさところしておしまい」
口の中に嚙み砕いた剣の破片が残っているのだろう。
ズタズタに傷ついた口には血が溢れているのだろう。
聞き取り難い発音でドラゴッシュのグレアムを殺すように命じた。
今までのように嘲笑うような調子は奇麗さっぱりなくなり、増悪が籠っていた。
それを聞いたドラゴッシュの巨躯は内側から弾けるかと思えるほど盛り上がった。
グレアムは明確に死を意識しながら右手に残った折れた剣を握りしめた。
スタリオンの左前脚が折れた。
ドラゴッシュを迎え討って放たれた前蹴りが逆効果だった。
ドラゴッシュの強靭な身体には弾き返されてしまった。
衝撃に耐えられずに骨が折れ肉と皮を突き破ってしまっていた。
馬は普通の状態では三本足で立っていられない。
まして今は戦闘用の軍馬装備なのだ。
重みと弾き返された衝撃で前に倒れ込んでしまった。
全く想定外の事態だった。
並の騎士ならそのまま馬から放り出されていただろう。
だがグレアムは鍛え抜かれた騎士だ。
とっさにスタリオンから飛び降りてドラゴッシュに斬りかかった。
スタリオンが身を挺して作ってくれた絶好の機会だ。
今までは押されてしまって双剣使いなのに一剣で戦っていた。
だが今は諸手に剣を持って斬りかかっている。
ギャッキーン
抜いたばかりの左手の剣でドラゴッシュの頚を狙って斬りかかった。
だがその剣はドラゴッシュの右手に防がれてしまった。
ドラゴッシュの右手には銀色に輝く鱗に覆われていた。
グレアムは内心の驚きを抑えつつ右手の剣で再度首を狙った。
だがその剣もドラゴッシュの左手に防がれてしまった。
もうボロボロになっていた剣はドラゴッシュの鱗の硬さと剣圧のぶつかり合う衝撃に耐えきれず折れてしまった。
「ホオウッホホホホホ、ドラゴッシュは竜魔族と人族の合いの子なのよ。
人間が勝てる相手ではないわ。
もう諦めて食べられなさい。
ドラゴッシュ、さっさと喰い殺してしまいなさい。
私は早くこの子の生き血が飲みたいのよ。
そうね、もう待っていられないわ。
早く飲まないと私の美貌が衰えてしまうわ。
この場で飲んでしまいましょう」
女はそう口にすると少女の髪を掴んで無理矢理立ち上がらせた。
そして少女の頚に喰らいつこうとした。
女の口には鋭い牙が生えていた。
グレアムには開いた女の真っ赤な口腔が地獄の入り口に見えた。
グレアムは無意識に左手の剣を全力で投げていた。
グッホッギャ
「ギャアアアアア」
グレアム渾身の投剣は見事に女の口に突き刺さっていた。
口から後頭部に抜けるほどの効果を生んでいた。
普通の人間ならば即死しているほどのダメージだろう。
だが女は死んでいなかった。
怒りに満ちた視線をグレアムに向けている。
そして信じられない事に口から頭に抜けた剣をかみ砕いてしまった。
「どらごっしゅっ、さっさところしておしまい」
口の中に嚙み砕いた剣の破片が残っているのだろう。
ズタズタに傷ついた口には血が溢れているのだろう。
聞き取り難い発音でドラゴッシュのグレアムを殺すように命じた。
今までのように嘲笑うような調子は奇麗さっぱりなくなり、増悪が籠っていた。
それを聞いたドラゴッシュの巨躯は内側から弾けるかと思えるほど盛り上がった。
グレアムは明確に死を意識しながら右手に残った折れた剣を握りしめた。
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