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第一章
第72話:第三世界
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「アラステア、第三世界はどうなっていますか」
オードリーが守護石のアラステアに話しかけた。
「第三世界は魔界と同じ時間の流れのようですね。
なかなか開拓が進まないようですが、その代わり時間の流れの違いで家族や友人が哀しい目にあうこともないようです」
「そう、魔族とは言え私のような不幸が起こるのは可哀想だものね。
それで、人族が移民できる第四世界は見つかったの」
「はい、今は苔や雑草を増やしている状態です」
魔界での話し合いが終わったオードリー達は一旦人界に戻った。
だが綿密に話し合った分時間がかかり、人界では三年の時が流れていた。
三年もの間、人界皇帝ともいえるルーパスが不在だったのだ。
各地の有力者の中には欲に駆られて悪事を働く者もいた。
そんな連中の処罰と跡始末のためにルーパスは人界中を翔け回っていた。
「苔や雑草が増えたら虫や草食の動物を送るのね」
「はい、いずれは人が住める世界になる事でしょう。
ですがそれ以上に重大なのは、魔力を集められる世界を確保する事です。
魔力さえあればいいので、空気がなくても人族にあわない重さでもいいのです」
「魔力を集めるのですか……
アラステア、私は戦いを好みません。
色々と辛く哀しい思いをしました。
自殺を選んでしまったのはアラステアが誰よりも知ってくれていますよね。
一時は人を恨み復讐したいと思った事もあります。
ですが今は違います、誰かを殺したいとは思っていません」
「分かっていますよ、オードリー。
グレアムと幸せに暮らしていきたいのですよね」
「はい、誰が何と言おうとも、彼は素敵な人間です。
人を善意を信じる心と悪人を許さない心を兼ね備えています。
いえ、理由など私にも分かりません。
ただグレアムの側にいると幸せだと思えるのです。
それだけでいいと思っています」
「そんな事を言ってしまったら、馬達が哀しみますよ。
馬達もオードリーの事を心から愛し、背中にオードリーを乗せて翔ける事を何よりも楽しみにしているのですから」
「あれはアラステアがやったのですか。
馬に翼が生えて空を翔けるようになるなんて、母上や父上ですら、とても信じられないと驚いていましたよ」
「あれもルーパスの責任ですよ。
馬に守護石や魔力収集魔法陣を与えるから、進化が早まったのです。
馬達のオードリーを護りたいという強い想いが突然の変化を生み出したのです」
「また父上のせいですか?」
「はい、全部ルーパスのせいです。
ですが、それはもうどうでもいい事です。
後は私に任せて、グレアムと一緒に馬に乗って散歩してきなさい」
「アラステアに任せてって、アラステアはずっと私と一緒にいるじゃない」
「しばらく新しい世界の発見に集中するので、話しかけられないという意味ですよ」
「頼みますよ、絶対に私の側から離れないでね」
オードリーが守護石のアラステアに話しかけた。
「第三世界は魔界と同じ時間の流れのようですね。
なかなか開拓が進まないようですが、その代わり時間の流れの違いで家族や友人が哀しい目にあうこともないようです」
「そう、魔族とは言え私のような不幸が起こるのは可哀想だものね。
それで、人族が移民できる第四世界は見つかったの」
「はい、今は苔や雑草を増やしている状態です」
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ですがそれ以上に重大なのは、魔力を集められる世界を確保する事です。
魔力さえあればいいので、空気がなくても人族にあわない重さでもいいのです」
「魔力を集めるのですか……
アラステア、私は戦いを好みません。
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一時は人を恨み復讐したいと思った事もあります。
ですが今は違います、誰かを殺したいとは思っていません」
「分かっていますよ、オードリー。
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「はい、誰が何と言おうとも、彼は素敵な人間です。
人を善意を信じる心と悪人を許さない心を兼ね備えています。
いえ、理由など私にも分かりません。
ただグレアムの側にいると幸せだと思えるのです。
それだけでいいと思っています」
「そんな事を言ってしまったら、馬達が哀しみますよ。
馬達もオードリーの事を心から愛し、背中にオードリーを乗せて翔ける事を何よりも楽しみにしているのですから」
「あれはアラステアがやったのですか。
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「はい、全部ルーパスのせいです。
ですが、それはもうどうでもいい事です。
後は私に任せて、グレアムと一緒に馬に乗って散歩してきなさい」
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「頼みますよ、絶対に私の側から離れないでね」
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