3 / 94
第一章
第2話:義親子喧嘩
皇紀2210年・王歴214年・秋・エレンバラ王国男爵領
最悪の状況を想定していたが、ロスリン伯爵は領内まで攻め込んでこなかった。
父が命懸けでロスリン伯爵に迫り、伯爵軍の主力百人を殺した事が大きかった。
父の立場なら、家や領地を守るために仕方がない決断だったのだろう。
だが、俺から見れば困った決断だった。
ロスリン伯爵側から経済封鎖されたとしても、山を越えたクレイヴェン伯爵側と交易する事ができるのだから、無理をする事などなかったのだ。
「オリビア、ハリーに大切な話がある、席を外してくれ」
祖父が真剣な表情をして母に話しかけている。
義理の父親とは言え、未亡人になった母とは二人きりにならないようにしている。
数人の侍女が同席する場所でなければ母と話さないのだ。
俺と母と祖父だけになってしまうと、悪い噂がたつのかもしれない。
母の侍女にも聞かせられない話なのだろう。
母が素直に祖父の言う事を聞いてくれればいいのだが。
「どのような話しをされるのか教えていただけないと、席は外せません」
普段は臆病な母が、震えながらとはいえ祖父に口答えした。
俺を護ろうとしてくれているのかもしれないが、困る、とても困る。
ここは素直に祖父に従って欲しい。
まだ二歳の、しかも異世界の状況が分からない俺には、祖父の知恵が必要だ。
生き残るためには色々な話しを聞かなければいけないのだ。
「ハリーの気持ちを聞きたいのだ。
男爵家に残りたいのか、それともオリビアの実家に帰りたいのか、母親であるオリビアの感情が入らない状態で、本心が聞きたい」
「まあ、私はハリーの母親です。
ハリーを護らなければいけないのです。
私のいない所で、男爵家の後継問題の話などさせられません」
「ふう、オリビアがハリーを護ろうとする気持ちはよく分かる。
母親として息子を護ろうとするのは当然の事だろう。
だが、儂もハリーを護らなければならん。
ハリーがオリビアの実家に戻ったら、厄介者扱いされかねない」
「まあ、お義父様は私がハリーを捨てると言われるのですか」
「オリビアはハリーを大切にしたいと思うだろう。
だが、ヴィンセント子爵家がハリーを大切にしてくれるとは限らない。
オリビアも実家の経済状況は分かっているだろう。
少しでも力のある王国貴族と縁を結び、支援をしてもらわなければならない。
オリビアを再婚させない訳がないのだ。
だが我が家がこんな状況になって、ハリーとともに実家に戻るのだ。
再婚する時は、我が家よりも家格も経済状況も悪い家に嫁ぐことになる。
それに、後継問題でもめるかもしれないハリーを連れていく事を、新しい嫁ぎ先が許してくれるとも思えん」
祖父と母の話で、どうしても分からない事がある。
我がエレンバラ家を王国貴族と言う事だ。
王国貴族以外にも貴族があるのだろうか。
王国が統制力を失い貴族が領地争いに明け暮れているのは分かっている。
そんな中で、新たに貴族家を任命するような強大な家が現れて王公国を名乗ったら、王国貴族以外の貴族があってもおかしくはない。
だがそんな勢いのある国の貴族なら、王国貴族よりも力を持っているはずだ。
祖父の話しでは、母の実家のヴィンセント子爵家は、王国貴族である我がエレンバラ男爵家よりも力がないという。
他に考えられるのは、王国以外にも国がある場合だ。
広い大陸の一部が王国領で、周囲に他の国があるのだろうか。
だがそれだと、こんなに内乱の激しい国を周辺の国が見過ごすはずがない。
併呑しようと攻め込んで来るのが普通だが、そんな話しは聞いた事がない。
そういう力関係を正確に知っておかなければ、俺の身の置き所を決められない。
今俺に必要なのは、知識、いや、情報と時間なのだ。
魔力を増強して魔術を覚えるまでは安全な場所が確保する事が一番大切なのだ。
そして安全と時間を確保するためには、情報が必要なのだ。
「ははうえ、じじさまのはなしがききたいです。
ははうえとはなればなれにならないほうほうをおしえてもらいます。
だから、じじさまとふたりにしてください」
最悪の状況を想定していたが、ロスリン伯爵は領内まで攻め込んでこなかった。
父が命懸けでロスリン伯爵に迫り、伯爵軍の主力百人を殺した事が大きかった。
父の立場なら、家や領地を守るために仕方がない決断だったのだろう。
だが、俺から見れば困った決断だった。
ロスリン伯爵側から経済封鎖されたとしても、山を越えたクレイヴェン伯爵側と交易する事ができるのだから、無理をする事などなかったのだ。
「オリビア、ハリーに大切な話がある、席を外してくれ」
祖父が真剣な表情をして母に話しかけている。
義理の父親とは言え、未亡人になった母とは二人きりにならないようにしている。
数人の侍女が同席する場所でなければ母と話さないのだ。
俺と母と祖父だけになってしまうと、悪い噂がたつのかもしれない。
母の侍女にも聞かせられない話なのだろう。
母が素直に祖父の言う事を聞いてくれればいいのだが。
「どのような話しをされるのか教えていただけないと、席は外せません」
普段は臆病な母が、震えながらとはいえ祖父に口答えした。
俺を護ろうとしてくれているのかもしれないが、困る、とても困る。
ここは素直に祖父に従って欲しい。
まだ二歳の、しかも異世界の状況が分からない俺には、祖父の知恵が必要だ。
生き残るためには色々な話しを聞かなければいけないのだ。
「ハリーの気持ちを聞きたいのだ。
男爵家に残りたいのか、それともオリビアの実家に帰りたいのか、母親であるオリビアの感情が入らない状態で、本心が聞きたい」
「まあ、私はハリーの母親です。
ハリーを護らなければいけないのです。
私のいない所で、男爵家の後継問題の話などさせられません」
「ふう、オリビアがハリーを護ろうとする気持ちはよく分かる。
母親として息子を護ろうとするのは当然の事だろう。
だが、儂もハリーを護らなければならん。
ハリーがオリビアの実家に戻ったら、厄介者扱いされかねない」
「まあ、お義父様は私がハリーを捨てると言われるのですか」
「オリビアはハリーを大切にしたいと思うだろう。
だが、ヴィンセント子爵家がハリーを大切にしてくれるとは限らない。
オリビアも実家の経済状況は分かっているだろう。
少しでも力のある王国貴族と縁を結び、支援をしてもらわなければならない。
オリビアを再婚させない訳がないのだ。
だが我が家がこんな状況になって、ハリーとともに実家に戻るのだ。
再婚する時は、我が家よりも家格も経済状況も悪い家に嫁ぐことになる。
それに、後継問題でもめるかもしれないハリーを連れていく事を、新しい嫁ぎ先が許してくれるとも思えん」
祖父と母の話で、どうしても分からない事がある。
我がエレンバラ家を王国貴族と言う事だ。
王国貴族以外にも貴族があるのだろうか。
王国が統制力を失い貴族が領地争いに明け暮れているのは分かっている。
そんな中で、新たに貴族家を任命するような強大な家が現れて王公国を名乗ったら、王国貴族以外の貴族があってもおかしくはない。
だがそんな勢いのある国の貴族なら、王国貴族よりも力を持っているはずだ。
祖父の話しでは、母の実家のヴィンセント子爵家は、王国貴族である我がエレンバラ男爵家よりも力がないという。
他に考えられるのは、王国以外にも国がある場合だ。
広い大陸の一部が王国領で、周囲に他の国があるのだろうか。
だがそれだと、こんなに内乱の激しい国を周辺の国が見過ごすはずがない。
併呑しようと攻め込んで来るのが普通だが、そんな話しは聞いた事がない。
そういう力関係を正確に知っておかなければ、俺の身の置き所を決められない。
今俺に必要なのは、知識、いや、情報と時間なのだ。
魔力を増強して魔術を覚えるまでは安全な場所が確保する事が一番大切なのだ。
そして安全と時間を確保するためには、情報が必要なのだ。
「ははうえ、じじさまのはなしがききたいです。
ははうえとはなればなれにならないほうほうをおしえてもらいます。
だから、じじさまとふたりにしてください」
あなたにおすすめの小説
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!