虐待され続けた公爵令嬢は身代わり花嫁にされました。

克全

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「こちらにおられるのがアメリア様だと言われるのですな?
 長年王都に駐在し、色々な事を見聞きしてきた臣に、リングストン王国が正式にアメリア様だと断言されるのですな!」

 リングストン王国に駐在するウィントン大公国の大使は、虎獣人族でも大柄な三メートルの身体を怒りに震わせながら詰問した。
 大柄で精強無比の虎獣人族だが、同時に密偵としての能力にも秀でていた。
 リングストン王国の内情は、ほぼ完ぺきに把握していた。
 だから目の前に立つアメリアと紹介された令嬢が、偽者だと分かっていた。

「そうよ!
 間違いないわ!
 リングストン王国が保証するわ。
 それに母親である私が保証するのだから間違いないわ。
 この子は私が腹を痛めて生んだアメリアよ」

 ウィントン大公国の大使のあまりの怒りように、思わず本当の事を言いかけたジョエル王太子をさえぎり、無礼にもマクリンナット公爵夫人ネーラが、勝手に大使に明言してしまった。

 まだここでジョエル王太子やノエル国王がネーラの言葉を否定し、マクリンナット公爵家が勝手にやった事だと詫びれば、問題を鎮静化することができただろう。
 だがジョエル王太子とノエル国王はそれぞれアメリアとネーラに籠絡されていた。
 特にノエル国王は、不義密通という、絶対に表にだせない弱みを握られていた。
 ジョエル王太子とノエル国王が黙認したことで、偽者を仕立てたことが、リングストン王国の正式な行いとなってしまった。

「それは結構。
 大いに結構な事だ!
 大公殿下の花嫁を偽りなどしたら、それは我が国に対する明らかな背信だ。
 いや、許し難い侮蔑に他ならない!
 そのようなことになれば、我が国はこの国の民を一人残らず殺し尽くさねばならないところであった。
 本物のアメリア嬢であるなら、両国にとってこれほど幸いな事はない」

 居並ぶ廷臣は、皆一様に顔面蒼白となっていた。
 それどころか、歯の根が合わないほどガタガタと震えていた。
 いや、それは廷臣に限らなかった。
 殿上にいる王族達も同じだった。

「大使殿。
 ひとつたずねたいのだが、今のは冗談であろう?
 確かに花嫁を偽るなど卑怯下劣な行為で、絶対に許されることではないが、国民すべてを皆殺しにするなど酷過ぎる。
 万が一そのような事があったとしても、賠償金や領地の割譲で話し合えるのではないか?」

 マテオ第二王子が恐怖に耐えながら使者に質問した。
 マテオ第二王子は、ジョエル王太子とノエル国王の決定を間違いだと思っていた。
 ネーラの無礼を苦々しく思っていた。
 だから嘘がバレた時は、マクリンナット公爵家の取り潰しと、その領地の割譲で話をすまそうと考えていた。
 だがその考えは、大使の激烈な言葉で木っ端微塵に吹きとばされた。
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