虐待され続けた公爵令嬢は身代わり花嫁にされました。

克全

文字の大きさ
92 / 94

91話

しおりを挟む
 多くの者が慎重に事を運んでいたはずの謀略が、あっけなく露見した。
 いや、偶発的な戦闘を始めさせてしまった。
 某愛妾の戦闘侍女が、ベン皇子とリドル皇子の力を封じるための魔晶石を盗もうとしている時に、同じように盗もうとしていた某女性魔術師と鉢合わせしてしまった。

 遠距離からの魔術攻撃ならば、某女性魔術師の方が強い
 近接の格闘戦ならば、戦闘侍女の方が強い。
 今回は双方周囲を経過していたが、某女性魔術師が魔術で自分を隠蔽していたので、戦闘侍女は直近で臭気を感じるまで気がつかなかった。
 戦闘侍女は虎獣人族の特性で隠密行動が得意なので、某女性魔術師は攻撃を受けるまで、いや、殺されるまで気がつかなかった。

 普通なら、盗もうとしている場所に人がいたら、盗むのを諦める。
 だが、新皇帝選出方法がベン皇子とリドル皇子の実力を認め、純血虎獣人族を護る案に決まったことが、某愛妾を追い詰めていた。
 虎獣人族の総意が、ベン皇子かリドル皇子の皇帝即位を求めていると、某愛妾は思ってしまった。
 このままでは、自分の子供達には皇位を争うチャンスさえ与えらないと思ってしまい、冷静な判断ができなくなっていた。

 そもそも、莫大な魔力を持つ魔晶石を毎日創り出すカチュアに勝てるはずがないし、ベン皇子とリドル皇子を同時に殺しつつ、皇帝と他の皇子皇女を同時に皆殺しにしにできなければ、全てを敵に回して勝たなくてはいけない。
 普通の判断力があれば、不可能なのは明白だった。
 その当たり前の判断ができないほど、某愛妾は欲に眼がくらんでいた。

 その愚かな判断に、戦闘侍女は従っていた。
 だから、事が露見する状況で、引くのではなく前に出てしまった。
 後宮内で殺人を犯してしまった以上、もう後には引けない。
 このまま皇位簒奪に突き進むしかない。
 そう考えた戦闘侍女は、実戦経験もそれなりにある戦士だった。

 そのまま逃げるのではなく、殺した女性魔術師の持ち物を探り、鹵獲品を確保したが、そこに七つもの魔晶石があった。
 一つしか魔晶石を確保していない某愛妾配下の戦闘侍女は、一つが八つになり、さらにこの場の魔晶石を確保して、これで勝てると思い込んでしまったのだ。

 だが、後宮総取締のマリアムは愚か者ではない。
 いや、恐ろしく切れる女なのだ。
 皇国を護りもすれば滅ぼしもする、戦略兵器の魔晶石を盗まれて気がつかないはずがなく、後宮内部に危険分子がいる事を悟っていた。

 だからカチュア製作魔晶石は、所定の位置から外されたら、後宮全体に警報が鳴るように改造されていた。
 改造したのが女性魔術師団だったから、某女性魔術師なら警報を鳴らさずに盗めただろうが、その時には危険分子が女性魔術師団にいる事が分かる。

 そのような分かり切った事が分からなくなるくらい、某女性魔術師も焦っていたし、某愛妾を余裕を失っていた。
 それくらい新皇帝選出法の発表は大きかった。
 そして今、後宮にはけたたましい警報が鳴り響いていた。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました! ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...