冤罪で婚約破棄され八つ裂きを言い渡された伯爵令嬢はブチ切れる。

克全

文字の大きさ
9 / 22

8話

しおりを挟む
 私はアウロラを御姫様抱っこしても荷物が運べるように、王城の使用人に背負い籠を用意してもらいました。
 使用人達は喜んで用意してくれました。
 王太子ばかりでなく、王族全てに恨みや憎しみがあるのでしょう。
 でも使用人達が後で罰せられないように、脅してやらせた証拠として、王城の一部を破壊しておきます。

 あまりに簡単に短時間で王太子を叩きのめせたので、王城で手に入れたドレスを背負い籠に入れて移動しようとしました。
 ですが、使用人の一人がさりげなく目配せしてくれました。
 彼女の視線の後を追うと、立派な衣装箱が幾つも置いてありました。

「他にも衣装箱はあるのですか?
 あるのなら正直に教えなさい。
 教えないと王太子や王族を殺しますよ!」

「はい、はい、はい。
 王太子殿下に何かあっては大変です。
 教えさせていただきます」

 完全な芝居ですが、言い訳ができるようにするには仕方ありません。
 彼女はさらに多くのドレスや武具がある場所も教えてくれました。
 これで無理にコヴェントリー侯爵家だけから手に入れる必要がなくなりました。
 アウロラが使うドレスが虫に食われないように、下着が不潔にならないように、使用人の女性を脅した芝居をして、キッチリと閉まる衣装箱にドレスと下着を詰めてもらいました。

 コヴェントリー侯爵家の屋敷に戻る前に、王城と隠れ家の洞窟を衣装箱を背負って四度往復しました。
 衣装や下着だけでなく、ハムとベーコン、チーズとウィンナー、塩や調味料も衣装箱に入れて運びました。
 不味くはありませんが、できればもう蝙蝠をアウロラに食べさせるような、下品なことはしたくなかったのです。

 私は装備した兜の上から、鍋や釜をかぶりました。
 アウロラを御姫様抱っこしているので、両手がふさがっているのです。
 背中には大きな衣装箱を二つも括り付けて背負っています。
 頭に被れるものは、人目を気にせず被るしかありません。

「ヴァルナ様がこんな剽軽な格好をされるとは思いませんでした」

「私もこんな格好をすることになるなんて、今の今まで思ってもいませんでした」

 私が御姫様抱っこしているアウロラも、アウロラを御姫様抱っこしている私も、昨日までこんな状況になるとは想像もしていませんでした。
 あまりに珍妙な姿に、状況も忘れて大笑いしてしまいました。
 笑うことで先の見えない将来を悲観しなくてすみます。
 笑うことは大切ですね。
 アウロラと二人なら、何とでもなると思えます。
 アウロラもそう思ってくれていればいいのですが……
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...