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第一章
第1話:幸福
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フィフス王国の王太子リカルドはとても幸せだった。
王国を苦境に追い込んできた魔王軍は、勇者によって撃退されていた。
そしてやっと、物心ついた時から恋している幼馴染、フィエン公爵家令嬢アセリカとの結婚式が、国内外の王侯貴族を招いて今日行うことができる。
アセリカは勇者と共に前線で戦い、聖女と称えられている。
リカルドも一緒に戦いたかったが、兵站や治安維持をする者がおらず、仕方なく後方任務に励んだが、それが一番重要だという事を、貴族も国民も知らなかった。
「王太子殿下、アセリカ嬢の到着が少し遅れるそうでございます」
侍従の一人が緊急の伝言を伝えに来てくれた。
魔境に新たな魔王軍が現れ、勇者とフィエン公爵家軍が迎撃に向かっている。
花嫁とその父親が、王太子と娘が結婚式を挙げる当日に神殿にいないというのは、本当に大問題である。
だが、領主として、家臣領民を危険にさらしておいて、自分が私事の結婚式に参加するわけにはいかないという、フィエン公爵の言い分は、国民を守る責任がある王太子としては、理解しなければいけない。
「民を護るためには仕方がない事だ。
列席してくださっている方々には、よく説明してくれ」
一番問題なのは、花嫁のアセリカ嬢も不在だという事だ。
挙式時間には必ず戻ると約束してくれていたのに、何があったのだろう?
勇者も、命に代えても挙式時間にはアセリカ嬢に戻ってもらうと誓っていた。
二人が自ら望んで約束を破るわけがないから、本当に魔王軍が再度来襲していて、迎撃に手間取っているのだろう。
「勇者やフィエン公爵からの伝令は来ていないのか?
魔王軍の第二軍が来襲してきているのなら、援軍を出さなければいけない」
私の言葉を聞いた側近達が、顔を見合わせて困っている。
それほど無理な事を言った心算はないのだが、どうしたのだろう。
確かに我が国は苦しい戦いを強いられてきたが、民に無理な徴兵をしなかった事で、生産力を落とすことなく魔王軍を撃退できた。
専業の騎士団や徒士団、傭兵部隊を国内移動させるくらいの余力はある。
兵站の責任を負っていた私には分かっている。
「向こうから伝令が来ないのならば、よほど苦しい戦いをしているのか、伝令が途中で魔王軍に襲われた可能性もある。
勇者と公爵軍が領都に籠城しているのなら、一刻も早く援軍を送る必要がある。
こちらから索敵部隊を送るのが戦の常道ではないのか?
王都の警備に不安があるというのなら、私の直属騎士団だけでもいい。
直ぐに威力偵察に行かせるのだ。
私の愛するアセリカ嬢が苦境にあるかもしれないのだぞ!」
ああ、待っていてくれ、アセリカ、今直ぐ私が助けに行くからね。
王国を苦境に追い込んできた魔王軍は、勇者によって撃退されていた。
そしてやっと、物心ついた時から恋している幼馴染、フィエン公爵家令嬢アセリカとの結婚式が、国内外の王侯貴族を招いて今日行うことができる。
アセリカは勇者と共に前線で戦い、聖女と称えられている。
リカルドも一緒に戦いたかったが、兵站や治安維持をする者がおらず、仕方なく後方任務に励んだが、それが一番重要だという事を、貴族も国民も知らなかった。
「王太子殿下、アセリカ嬢の到着が少し遅れるそうでございます」
侍従の一人が緊急の伝言を伝えに来てくれた。
魔境に新たな魔王軍が現れ、勇者とフィエン公爵家軍が迎撃に向かっている。
花嫁とその父親が、王太子と娘が結婚式を挙げる当日に神殿にいないというのは、本当に大問題である。
だが、領主として、家臣領民を危険にさらしておいて、自分が私事の結婚式に参加するわけにはいかないという、フィエン公爵の言い分は、国民を守る責任がある王太子としては、理解しなければいけない。
「民を護るためには仕方がない事だ。
列席してくださっている方々には、よく説明してくれ」
一番問題なのは、花嫁のアセリカ嬢も不在だという事だ。
挙式時間には必ず戻ると約束してくれていたのに、何があったのだろう?
勇者も、命に代えても挙式時間にはアセリカ嬢に戻ってもらうと誓っていた。
二人が自ら望んで約束を破るわけがないから、本当に魔王軍が再度来襲していて、迎撃に手間取っているのだろう。
「勇者やフィエン公爵からの伝令は来ていないのか?
魔王軍の第二軍が来襲してきているのなら、援軍を出さなければいけない」
私の言葉を聞いた側近達が、顔を見合わせて困っている。
それほど無理な事を言った心算はないのだが、どうしたのだろう。
確かに我が国は苦しい戦いを強いられてきたが、民に無理な徴兵をしなかった事で、生産力を落とすことなく魔王軍を撃退できた。
専業の騎士団や徒士団、傭兵部隊を国内移動させるくらいの余力はある。
兵站の責任を負っていた私には分かっている。
「向こうから伝令が来ないのならば、よほど苦しい戦いをしているのか、伝令が途中で魔王軍に襲われた可能性もある。
勇者と公爵軍が領都に籠城しているのなら、一刻も早く援軍を送る必要がある。
こちらから索敵部隊を送るのが戦の常道ではないのか?
王都の警備に不安があるというのなら、私の直属騎士団だけでもいい。
直ぐに威力偵察に行かせるのだ。
私の愛するアセリカ嬢が苦境にあるかもしれないのだぞ!」
ああ、待っていてくれ、アセリカ、今直ぐ私が助けに行くからね。
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