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第一章
第17話:名声と恩
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リカルド王太子は、元フィエン公爵領、特に領都の民からの忠誠心を得るために魔法袋から大量の肉をだし、直接民に肉を配った。
何より喜ばれたのは、肉を美味しく食べるため絶対に必要な塩と香草だった。
輸送隊が運び込んだ長期保存が可能な雑穀は、領都に駐屯する部隊が領民を統制するために必要なので、駐屯騎士団が領民に配給することになっていた。
「殿下、主人と姫、お子様の首でございます」
フィエン公爵家の騎士団長が、仮面のような表情で主家一族の首を差し出した。
騎士団長アイルは、主人を追って死にたい気持ちと、憎き偽勇者ロイドを切り刻みたい気持ちの間で揺れ動いていた。
だがまずは、主人の名声を守るために民を護り、リカルド王太子に民を引き継がなければいけないと、歯を食いしばり主家一族の首を差し出していた。
「うむ、ヘリドス殿は立派な領主であられた。
アセリカ嬢は悪知恵の働くロイドに騙されたのであろう。
もしかしたら魅了の魔術で操られていたのかもしれないな。
御子はアーサー殿と言われたか、片親がロイドであろうが子に罪はない。
母親と一緒に弔ってあげよ。
それと、一族の方々も懇ろに弔ってあげるがよい」
「有難き幸せでございます」
仮面をかぶったように表情を隠していたアイルだったが、リカルド王太子が主家の名誉を守る発言に感激し、思わず涙を流していた。
「ただ問題は葬る場所だな……
フィエンでは今回の件を恨みに思う者に墓を荒らされるかもしれん。
王都や他の街でも破壊されてしまうだろう、それは理解してくれるな、アイル」
「……はい」
アイルもよく理解していた。
アセリカ嬢の愚かな行動のせいで、領都以外の街や村は破壊され民は皆殺しになっていたし、領都でも多くの義勇兵が死んでいた。
王都や貴族領でフィエン一族が激烈な恨みを買っているの明らかだった。
「ここからは政治的な話になるから、断ってくれても構わない。
どうかな、フィエン家に仕えていた将兵で傭兵団を設立しないか。
傭兵団には基本給と駐屯領を与える。
いずれはアイルを貴族に取立てる。
その領地ならフィエン一族の墓があらされることもないだろう」
「有難き幸せでございます、希望者を募り傭兵団を設立させていただきます」
アイルにもこれが温情ではなく軍事的に必要な措置だとは分かっていた。
フィエン城にはフィエン家を恨んでいる王国軍が駐屯するだろう。
そこにフィエン家の将兵が残っていたら確実に争いごとが起こる
王都であろう貴族領であろうと同じで、どこもフィエン家に仕えていた者は受け入れらず、目の敵にされるのは明らかだった。
国内に残すと山賊になるしか生きる道がないので、普通なら禍根を断つために国外追放にするだろう。
だがそれでは大切な戦力を失うことになる。
一番いいのがリカルド王太子が提案した傭兵として残す事なのだが、恨みを抱いている人間が理性的になれないのは、アイル自身が誰よりも知っていた。
リカルド王太子が、アイル達を処刑しろ追放しろと声高に叫ぶ貴族重臣を、根気強く説得してくれたのが理解できた。
アイルはこらえていた嗚咽が漏れるのを自覚していた。
何より喜ばれたのは、肉を美味しく食べるため絶対に必要な塩と香草だった。
輸送隊が運び込んだ長期保存が可能な雑穀は、領都に駐屯する部隊が領民を統制するために必要なので、駐屯騎士団が領民に配給することになっていた。
「殿下、主人と姫、お子様の首でございます」
フィエン公爵家の騎士団長が、仮面のような表情で主家一族の首を差し出した。
騎士団長アイルは、主人を追って死にたい気持ちと、憎き偽勇者ロイドを切り刻みたい気持ちの間で揺れ動いていた。
だがまずは、主人の名声を守るために民を護り、リカルド王太子に民を引き継がなければいけないと、歯を食いしばり主家一族の首を差し出していた。
「うむ、ヘリドス殿は立派な領主であられた。
アセリカ嬢は悪知恵の働くロイドに騙されたのであろう。
もしかしたら魅了の魔術で操られていたのかもしれないな。
御子はアーサー殿と言われたか、片親がロイドであろうが子に罪はない。
母親と一緒に弔ってあげよ。
それと、一族の方々も懇ろに弔ってあげるがよい」
「有難き幸せでございます」
仮面をかぶったように表情を隠していたアイルだったが、リカルド王太子が主家の名誉を守る発言に感激し、思わず涙を流していた。
「ただ問題は葬る場所だな……
フィエンでは今回の件を恨みに思う者に墓を荒らされるかもしれん。
王都や他の街でも破壊されてしまうだろう、それは理解してくれるな、アイル」
「……はい」
アイルもよく理解していた。
アセリカ嬢の愚かな行動のせいで、領都以外の街や村は破壊され民は皆殺しになっていたし、領都でも多くの義勇兵が死んでいた。
王都や貴族領でフィエン一族が激烈な恨みを買っているの明らかだった。
「ここからは政治的な話になるから、断ってくれても構わない。
どうかな、フィエン家に仕えていた将兵で傭兵団を設立しないか。
傭兵団には基本給と駐屯領を与える。
いずれはアイルを貴族に取立てる。
その領地ならフィエン一族の墓があらされることもないだろう」
「有難き幸せでございます、希望者を募り傭兵団を設立させていただきます」
アイルにもこれが温情ではなく軍事的に必要な措置だとは分かっていた。
フィエン城にはフィエン家を恨んでいる王国軍が駐屯するだろう。
そこにフィエン家の将兵が残っていたら確実に争いごとが起こる
王都であろう貴族領であろうと同じで、どこもフィエン家に仕えていた者は受け入れらず、目の敵にされるのは明らかだった。
国内に残すと山賊になるしか生きる道がないので、普通なら禍根を断つために国外追放にするだろう。
だがそれでは大切な戦力を失うことになる。
一番いいのがリカルド王太子が提案した傭兵として残す事なのだが、恨みを抱いている人間が理性的になれないのは、アイル自身が誰よりも知っていた。
リカルド王太子が、アイル達を処刑しろ追放しろと声高に叫ぶ貴族重臣を、根気強く説得してくれたのが理解できた。
アイルはこらえていた嗚咽が漏れるのを自覚していた。
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