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第1章
第21話:美味しい物と人助け
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転生1年目の夏
巨樹、エンシェントトレントたちはつながっているようだ。
ドーナツハウスから遠く離れた、これまで何も頼んだ事のない巨木に命じても、全てのエンシェントトレントがお酒を造ってくれた。
これで1日に何度も酒造りをお願いしなくでもよくなった。
巨樹ごとにお願いしなくても、その場にいる巨樹にお願いすればよいと分かった。
その分他の事ができるようになった。
そうは言っても、やりたい事など限られる。
今はキンモウコウに乗るのが上手になりたいだけだ。
そう思っていたのだが、サ・リの言葉にハッとさせられた。
「みんなどうしているのかな?
私たちは運よく助かったけれど、殺されていたりしないかな?
奴隷にされていたりしないかな?」
酔い潰れたサ・リが幼い子たちの寝顔を見てつぶやいた。
俺は自分の鈍感さ、想像力の無さに腹が立った。
自分で自分の事を思いっきり叱った。
「シェイマシーナ、サ・リの家族、仲間の居場所は分からないか?」
俺は仲良くなって名前を教えてくれた、精霊の代表に聞いてみた。
「世界中にいる妖精族の仲間に聞けば分かると思います」
「ここに連れて来る事はできるか?」
妖精の中には、子供を入れ変える悪質にいたずらをする者もいると聞く。
転生前のおとぎ話とは違うかもしれないが、できれば助かる。
「できる妖精もいますが、さらわせましょうか?」
「やれるのなら頼む、お礼は酒で良いのか?」
「はい、イチロウのお酒がお礼なら、よろこんでさらってくるでしょう」
ちょっと心配になってきた。
「さっらってくるのは、サ・リの家族と仲間だけだぞ!
人間に襲われて困っている金猿獣人族だけだぞ!
他の獣人族や人間をさらって来ても酒は渡さないぞ!」
「分かっています、イチロウの性格は分かっています。
イチロウを怒らせてお酒が飲めなくなるような、バカな事をする妖精はいません。
安心して任せてください」
シェイマシーナがそう言ってから6日で全ての金猿獣人族が連れてこられた。
幼い金猿獣人族の両親や兄弟姉妹も助ける事ができた。
全員で483人の金猿獣人族が大魔境に連れてこられた。
「ありがとうございます、このご恩は一生忘れません。
いえ、金猿獣人族が滅ぶまで子々孫々伝えさせていただきます」
「いや、そこまでしなくて良いから。
サ・リや子供たちがかわいそうだから、俺が勝手にやった事だから。
普通にお礼を言ってくれたら、それでもう良いから」
俺はそう言ったのだが、金猿獣人族は律儀に何度もお礼を言ってくれる。
恩を返すと言って、巨樹に実らせた果物を集めてくれる。
ただ、金猿獣人族もお酒が大好きなようで、結構泥酔している。
陽の出ている間は良く働いてくれているが、陽が沈んでからは、各種ワインを飲んで大いびきをかいている。
幼い金猿獣人族の子たちが、そんな両親に抱きついて寝ている。
安心した姿、幸せそうな表情を見ると、助けてよかったと心から思えた。
もっと早く気がつけばよかったと反省した。
その程度の反省ですんでいるのは、誰も殺されていなかったからだ。
人間が、殺す事よりも奴隷にして利益を得ようとしたからだ。
もし、俺がサ・リたちに出会った春から夏にかけて殺された人がいたら、助ける事を思いつかなかった自分を激しく責めただろう。
金猿獣人族のためにたくさんの家を造った。
巨樹にお願いして、中心部の巨樹全てにドーナツ型の家を造った。
外周一面に果物や穀物を発酵させてお酒にする樽が並んでいる。
樽が並んでいるといっても、家の壁と一体化している。
最初は上が開いているのだが、果物や穀物を入れ、俺がお願いすると同時に根でできた蓋が閉まって発酵させる。
発酵を始めて半日でアルコール度数18度の醸造酒になる。
それをカメに入れ替えるのも金猿獣人族の仕事だ。
金猿獣人族は比較的非力なので、入れ替えたカメを地下の蒸留所に運ぶのは、ヴァルタルたちエンシェントドワーフの仕事だ。
妖精族の中には、転移魔術が使える悪質ないたずらが好きもいるが、そう言う連中は進んで荷運びを手伝おうとはしない。
酒の代価にシブシブ手伝うだけだ。
「この程度の手伝いで、村長様の酒を飲む気じゃないだろうね?!
極上のワインが飲みたいのなら、酒樽100個運んで1杯だよ!
クズクズしていたら村から追い出すよ!」
最初の頃からここにいる家事精霊が、悪質いたずら妖精に命じている。
仕事に高いプライドを持つのが家事妖精の性格だった。
でも今では、家事よりも酒造りに命を賭けている。
そんな家事妖精が造るのを手伝った酒を、正当な代価を払わずに飲もうとした妖精は、同じ妖精族と思えないほど怒られ厳しい罰を受けた。
特に、転移の魔術が使えるのを良い事に、酒を盗もうとした妖精は、俺が背筋が寒くなるくらい厳しい罰を受けていた。
殺されなかったのは、盗もうとして盗めなかったからだ。
悪質ないたずら妖精よりも、エンシェントトレントの方がはるかに強い。
そんなエンシェントトレントが守るお酒を盗めるわけがない。
逃げようとしても逃げられるわけがない。
俺がお願いして、悪質妖精に金猿獣人族を助けてもらったから、エンシェントトレントが手加減してくれただけだ。
俺と全く関係がない悪質妖精だったら、猿魔獣の時のように殺されている。
そうエンシェントドワーフのヴァルタルが言っていた。
巨樹、エンシェントトレントたちはつながっているようだ。
ドーナツハウスから遠く離れた、これまで何も頼んだ事のない巨木に命じても、全てのエンシェントトレントがお酒を造ってくれた。
これで1日に何度も酒造りをお願いしなくでもよくなった。
巨樹ごとにお願いしなくても、その場にいる巨樹にお願いすればよいと分かった。
その分他の事ができるようになった。
そうは言っても、やりたい事など限られる。
今はキンモウコウに乗るのが上手になりたいだけだ。
そう思っていたのだが、サ・リの言葉にハッとさせられた。
「みんなどうしているのかな?
私たちは運よく助かったけれど、殺されていたりしないかな?
奴隷にされていたりしないかな?」
酔い潰れたサ・リが幼い子たちの寝顔を見てつぶやいた。
俺は自分の鈍感さ、想像力の無さに腹が立った。
自分で自分の事を思いっきり叱った。
「シェイマシーナ、サ・リの家族、仲間の居場所は分からないか?」
俺は仲良くなって名前を教えてくれた、精霊の代表に聞いてみた。
「世界中にいる妖精族の仲間に聞けば分かると思います」
「ここに連れて来る事はできるか?」
妖精の中には、子供を入れ変える悪質にいたずらをする者もいると聞く。
転生前のおとぎ話とは違うかもしれないが、できれば助かる。
「できる妖精もいますが、さらわせましょうか?」
「やれるのなら頼む、お礼は酒で良いのか?」
「はい、イチロウのお酒がお礼なら、よろこんでさらってくるでしょう」
ちょっと心配になってきた。
「さっらってくるのは、サ・リの家族と仲間だけだぞ!
人間に襲われて困っている金猿獣人族だけだぞ!
他の獣人族や人間をさらって来ても酒は渡さないぞ!」
「分かっています、イチロウの性格は分かっています。
イチロウを怒らせてお酒が飲めなくなるような、バカな事をする妖精はいません。
安心して任せてください」
シェイマシーナがそう言ってから6日で全ての金猿獣人族が連れてこられた。
幼い金猿獣人族の両親や兄弟姉妹も助ける事ができた。
全員で483人の金猿獣人族が大魔境に連れてこられた。
「ありがとうございます、このご恩は一生忘れません。
いえ、金猿獣人族が滅ぶまで子々孫々伝えさせていただきます」
「いや、そこまでしなくて良いから。
サ・リや子供たちがかわいそうだから、俺が勝手にやった事だから。
普通にお礼を言ってくれたら、それでもう良いから」
俺はそう言ったのだが、金猿獣人族は律儀に何度もお礼を言ってくれる。
恩を返すと言って、巨樹に実らせた果物を集めてくれる。
ただ、金猿獣人族もお酒が大好きなようで、結構泥酔している。
陽の出ている間は良く働いてくれているが、陽が沈んでからは、各種ワインを飲んで大いびきをかいている。
幼い金猿獣人族の子たちが、そんな両親に抱きついて寝ている。
安心した姿、幸せそうな表情を見ると、助けてよかったと心から思えた。
もっと早く気がつけばよかったと反省した。
その程度の反省ですんでいるのは、誰も殺されていなかったからだ。
人間が、殺す事よりも奴隷にして利益を得ようとしたからだ。
もし、俺がサ・リたちに出会った春から夏にかけて殺された人がいたら、助ける事を思いつかなかった自分を激しく責めただろう。
金猿獣人族のためにたくさんの家を造った。
巨樹にお願いして、中心部の巨樹全てにドーナツ型の家を造った。
外周一面に果物や穀物を発酵させてお酒にする樽が並んでいる。
樽が並んでいるといっても、家の壁と一体化している。
最初は上が開いているのだが、果物や穀物を入れ、俺がお願いすると同時に根でできた蓋が閉まって発酵させる。
発酵を始めて半日でアルコール度数18度の醸造酒になる。
それをカメに入れ替えるのも金猿獣人族の仕事だ。
金猿獣人族は比較的非力なので、入れ替えたカメを地下の蒸留所に運ぶのは、ヴァルタルたちエンシェントドワーフの仕事だ。
妖精族の中には、転移魔術が使える悪質ないたずらが好きもいるが、そう言う連中は進んで荷運びを手伝おうとはしない。
酒の代価にシブシブ手伝うだけだ。
「この程度の手伝いで、村長様の酒を飲む気じゃないだろうね?!
極上のワインが飲みたいのなら、酒樽100個運んで1杯だよ!
クズクズしていたら村から追い出すよ!」
最初の頃からここにいる家事精霊が、悪質いたずら妖精に命じている。
仕事に高いプライドを持つのが家事妖精の性格だった。
でも今では、家事よりも酒造りに命を賭けている。
そんな家事妖精が造るのを手伝った酒を、正当な代価を払わずに飲もうとした妖精は、同じ妖精族と思えないほど怒られ厳しい罰を受けた。
特に、転移の魔術が使えるのを良い事に、酒を盗もうとした妖精は、俺が背筋が寒くなるくらい厳しい罰を受けていた。
殺されなかったのは、盗もうとして盗めなかったからだ。
悪質ないたずら妖精よりも、エンシェントトレントの方がはるかに強い。
そんなエンシェントトレントが守るお酒を盗めるわけがない。
逃げようとしても逃げられるわけがない。
俺がお願いして、悪質妖精に金猿獣人族を助けてもらったから、エンシェントトレントが手加減してくれただけだ。
俺と全く関係がない悪質妖精だったら、猿魔獣の時のように殺されている。
そうエンシェントドワーフのヴァルタルが言っていた。
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