来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。

克全

文字の大きさ
30 / 53
第1章

第30話:平身低頭

しおりを挟む
1年目秋

「申し訳ございません、もう2度とこのような事はいたしません。
 どうかお許しください。
 それと……厚かましいお願いなのですが、これからも毎日お酒を飲ませていただきませんか?
 私たちにできる事なら何でもさせていただきます。
 あいた、何をするんですか?」

 ワイルドハント、妖精狩猟団に参加していた弱神たちが土下座して謝っている。
 上司に当たる中間管理職の神が、余計な事を言った弱神の頭を叩いた。

「何をではありません、本気で謝っているのですか?! 
 それでは酒をせびっているのと一緒でしょう!」

「申し訳ありません、ですが魔境神さまもお酒が欲しいですよね?」

「余計な事を言うは止めなさい!」

 ぱーん!

 大魔境を担当しているという、一定の地域を管理する神さまが、どこからかハリセンを取り出して余計な事を言った弱神の頭を叩いた。

 魔境神さま、そのハリセンは自分で作ったのですか?
 この世界にボール紙があるのですか?
 それとも地球のような世界で買ったのですか?

「人間、大魔境を任されている神として正式に謝る、申し訳なかった」

「魔境神さま、謝る必要などありません。
 妖精狩猟団はこの世界の正常な働きなのでしょう?
 だったら謝る必要はありません。
 ただ、地域神さまが介入した事には正式に抗議します。
 殺す者には殺される覚悟が必要です。
 こちらが殺す前に、そこにいる神たちを解放したのは、この世界の理にあっているのですか、反しているのですか?!」

 俺は地域神に殺されるのを覚悟で抗議した。
 ここで抗議しなければ、また弱神たちが襲ってくる。

 今回と同じように酒に釣られて酔い潰れてくれれば助かる。
 だが腐っても神だ、同じ罠にはまるとは考えられない。

 次の妖精狩猟団では、大切な仲間が殺されてしまう可能性がとても高い。
 後で殺される可能性が高いのなら、今が命の賭け時だ!
 ここで魔境神に殺されるのを覚悟で強く抗議した。

「……反している、妖精狩猟団の被害は、愚かな神たち行いではあるが、この世界の者に神を畏れされるのに必要だと認められている。
 だが同時に、この世界の者が神を超える機会でもある。
 神殺しの英雄を見出す大切な行いなのだが……」

「弱神さまとはいえ、あまりにも多くの神が1度に殺されてしまうと、神々の威信が地に落ちてしまうから、理に反して介入したのですね?
 同じ神を助けるために、次の妖精狩猟団で多くの者が弱神たちに殺されるのが分かっていて、理に反したのですね?!」

「私の力の権限において、もう2度と大魔境には妖精狩猟団を入れない。
 無理に入って来ようとしたら、私の手で滅殺する。
 先ほど口にしていたような、酒をせびるような事もさせない」

「弱神さまたちが、妖精狩猟団ではなく、1柱の神として酒をせびりに来たらどうするのですか、地域神さまの力で完全に防げるのですか?」

「……隠れ潜むのが得意な神もいるからなぁ~。
 絶対と約束できるかと言われれば、できない」

「その時に俺が殺されたら、どう責任を取ってくれるのですか?
 来訪神様の御厚意でこの世界に転生させていただいたのに、1年も経たずにこの世界の神に殺されてしまうのでは、死んでも死に切れません!」

「来訪神様だと、イチロウ殿、来訪神様に転生させられたのか?!」

「はい、地球という世界からこの世界に転生させていただきました。
 何か不都合があるのですか?
 来訪神様に敵意を持っているから、弱神さまたちが、私を殺すように仕向けているのですか?!」

「違う、そんな気はない、来訪神様に敵意を持つなど、そんな命知らずなマネは絶対にやらん、魔境を預かる神として誓う」

 やっぱり来訪神様はこの世界の神々を圧倒しているようだ。
 虎の威を借りる狐のような言動をするのは嫌だが、みんなの命には代えられない。
 来訪神様のご厚意に応えるためにも、この世界で幸せに長生きする。

「だったら妖精狩猟団に参加していた神たちを幽閉してください。
 殺させろとも殺してくれとも言いません。
 神殺しの英雄になりたい訳ではありません。
 来訪神さまのご好意をムダにしたくないだけです。
 俺が殺されないように、キッチリと幽閉してください」

「分かった、私の全能力を使ってこいつらを封印する。
 大魔境の地下、奥深くに封印する。
 イチロウが生きている間は絶対にでられないようにする。
 ただ、その為にはかなり多くの魔力と命力が永続的に必要になる。
 多くは望まんが、毎日三食の時間に酒を捧げてくれ。
 イチロウの造った酒は神々に力を与えるのだ。
 そのせいで、こいつらを取り押さえるのが大変だった」

 俺の造った酒が神々に力を与えるだと?!
 そんな厄介な力はいらない、今直ぐ捨ててしまいたいが……いただいたギフトだ。
 三柱の神々がくださったギフトを捨てるなんて罰当たりな事はできない。

 一瞬でも厄介な力だと思ってしまった事が、俺の思い上がりだ。
 そんな力があるからこそ、今の幸せな生活ができているのだ。
 三柱の神さま、思い上がっていた事を心から反省します。

「分かりました、毎食大盃1杯か大酒杯1杯の醸造酒を捧げます。
 今から弱神たちを封じるのにも酒が必要でしょう。
 醸造酒1樽、1石(100升180リトル)分差し上げます。
 お土産に1石の酒樽を5つ差し上げます。
 ですから、今直ぐ、そこにいる弱神たちを封じてください」

「「「「「いやだ!」」」」」
「「「「「許してくれ」」」」」
「「「「「助けてくれ」」」」」
「「「「「逃げろ!」」」」」」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...