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第1章
第43話:ハイトレント
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2年目の春
俺が本気で怒った事で、妖精族とエンシェントドワーフ族はおとなしくなった。
むりに格上げさせようとしなくなったし、ドラゴンを狩るとも言わなくなった。
俺の指示通り、避難村の果物を収穫していろんなワインを造った。
「「「「「ウォオオオオン」」」」」
ただ、問題もあって、大魔境の魔力が必要な子は避難村に住めない。
キンモウコウと巨大蚕、マーダビーが移住できない。
大魔境では生きて行けない金猿獣人族の避難村だからしかたがないのだが……
「シェイマシーナ、前に話してくれた、人が入れない森じゃなく、大魔境以外の魔境では、金猿獣人族は生きて行けないのか?」
「絶対に無理とは言えませんが、難しいと思います
もう少し強ければいいのですが、今の強さでは危険です」
「キンモウコウはどうだ、他の魔境では、魔力が少なくて生きて行けないのか?」
「いえ、そんな事はないと思います。
私たち妖精族でも十分生きて行ける魔力量です。
キンモウコウの強さなら、よゆうで縄張りを確保できます」
「金猿獣人族とキンモウコウはとても仲が良い。
他の魔境でキンモウコウが生きて行けるなら、助け合って生きて行けないか?」
「そうでした、忘れていました、協力すれば十分生きて行けます」
「じゃあ、試しに他の魔境に行ってみよう。
行ってみて、俺のギフトで村を作れないか試してみよう」
「他の魔境に縄張りを広げるのは賛成ですが、今直ぐ村長が行くのは反対です。
村長が行くのは、私たちが安全を確認してからです」
「いや、大魔境が1番危険な場所なんだろう?
さんざん俺を非常識な何でもできる者だと言っておいて、今更危険もないだろう」
「村長が非常識で何でもできるのは間違いありませんが、ダメです。
人間何があるか分からないと言っていたのは村長自身です。
だいじょうぶだと思って行ってみたら、エンシェントドラゴンがいた。
そんな事になったら取り返しがつきません、絶対に行かせません」
自分の言った事がブーメランになって返ってきてしまった。
「そうだぞ、村長、自分が言った事は守ってくれ。
村長に何かあったら、村のみんなが絶望する」
その絶望は、俺が造った酒が飲めなくなる事だよな?
なんか……複雑な気持ちになってしまう。
よろこんで良いのか、悲しんで良いのか、何ともいえない。
しかたがないので穀物を成長させる事にした。
そのまま長期保存する事を考えると、果物よりも穀物の方が向いている。
それに、果物だと1度がんばってくれた巨樹に2度目の実りを頼むことになる。
強力な力を持つというエンシェントトレントだけど、無理はさせたくない。
雪どけに1度ギフトで実らせてくれた上に、旬にまた実らせてくれるのだ。
それ以外の時期はゆっくりしてもらいたい。
そう思っていたのだが、魔境神がエンシェントドワーフと一緒にやってきた。
「村長、穀物よりも果物を実らせてくれ。
果物で造るワインをもっとたくさん造ってくれ」
「ダメだ、エンシェントトレントに無理はさせない!」
「エンシェントトレントに無理をさせる気はない。
エンシェントトレント以外の樹に実らせてくれればいい。
普通の木だと多少は味が落ちるが、他の酒のように飲めないほどではない」
「エンシェントトレントに無理をさせないなら構わない」
俺がそう言って普通の木でギフトを使おうとすると……
「村長、エンシェントトレントがお願いをしています。
他の木を使わないで、自分たちを使って欲しいそうです。
村長のギフトは身体に負担がかからないそうです。
ギフトを使う前と後に、土を豊かにしてくれるからだいじょうぶだそうです」
「そうか、ギフトの負担を和らげるように、ギフト後も土を良くしておいたのは正解だったのだな」
「はい、ああしてもらえるなら、毎日でも実らせると言っています」
「いや、毎日収穫しなくても十分な量がある。
そんなにやったら村のみんなが倒れてしまう。
ワインが欲しい者たちで、無理なく収穫できる量を実らせる、それで良いな?」
俺はだまって聞いていた魔境神とエンシェントドワーフたちに言った。
「吾はそれでかまわぬ。
エンシェントトレントの果物を毎日収穫できて、毎日ワインが造れるのなら、あわてることもない。
味の劣るハイトレントのワインでがまんする必要もない。」
魔境心が安心したように言う。
「儂らもそれでよい。
エンシェントトレントのワインが毎日手に入るのなら、儂らもハイトレントのワインでがまんしようとは思わない。
村長に寿命が心配だったのと、エンシェントトレントの果実が1年に2度しか収穫できないからあわてていただけだ」
「ちょっと待ってくれ、さっきからハイトレントと言っているが、俺が避難村でギフトを使ったのは、人間の国から手に入れた普通の木の種だ、ハイトレントじゃない」
「そう聞いて手伝ったが、ハイトレントだったぞ」
「うむ、魔境神様の申される通りじゃ、儂らが収穫したのはハイトレントの実じゃ」
「魔境神様、これを見てください、避難村でギフトを使った木の種です。
ごく普通の木の種で間違いありませんよね?」
「……ごく普通の木の種じゃ、間違いない」
「だから言っていたではないか、村長のギフトはとんでもないと」
「いや、だが、いくらなんでも、普通の木の種をハイトレントに進化させるなんて、あまりにもおかしいだろう?」
「「「「「村長、いまさらです!」」」」」
「「「「「これまでからおかしすぎです!」」」」」
俺が本気で怒った事で、妖精族とエンシェントドワーフ族はおとなしくなった。
むりに格上げさせようとしなくなったし、ドラゴンを狩るとも言わなくなった。
俺の指示通り、避難村の果物を収穫していろんなワインを造った。
「「「「「ウォオオオオン」」」」」
ただ、問題もあって、大魔境の魔力が必要な子は避難村に住めない。
キンモウコウと巨大蚕、マーダビーが移住できない。
大魔境では生きて行けない金猿獣人族の避難村だからしかたがないのだが……
「シェイマシーナ、前に話してくれた、人が入れない森じゃなく、大魔境以外の魔境では、金猿獣人族は生きて行けないのか?」
「絶対に無理とは言えませんが、難しいと思います
もう少し強ければいいのですが、今の強さでは危険です」
「キンモウコウはどうだ、他の魔境では、魔力が少なくて生きて行けないのか?」
「いえ、そんな事はないと思います。
私たち妖精族でも十分生きて行ける魔力量です。
キンモウコウの強さなら、よゆうで縄張りを確保できます」
「金猿獣人族とキンモウコウはとても仲が良い。
他の魔境でキンモウコウが生きて行けるなら、助け合って生きて行けないか?」
「そうでした、忘れていました、協力すれば十分生きて行けます」
「じゃあ、試しに他の魔境に行ってみよう。
行ってみて、俺のギフトで村を作れないか試してみよう」
「他の魔境に縄張りを広げるのは賛成ですが、今直ぐ村長が行くのは反対です。
村長が行くのは、私たちが安全を確認してからです」
「いや、大魔境が1番危険な場所なんだろう?
さんざん俺を非常識な何でもできる者だと言っておいて、今更危険もないだろう」
「村長が非常識で何でもできるのは間違いありませんが、ダメです。
人間何があるか分からないと言っていたのは村長自身です。
だいじょうぶだと思って行ってみたら、エンシェントドラゴンがいた。
そんな事になったら取り返しがつきません、絶対に行かせません」
自分の言った事がブーメランになって返ってきてしまった。
「そうだぞ、村長、自分が言った事は守ってくれ。
村長に何かあったら、村のみんなが絶望する」
その絶望は、俺が造った酒が飲めなくなる事だよな?
なんか……複雑な気持ちになってしまう。
よろこんで良いのか、悲しんで良いのか、何ともいえない。
しかたがないので穀物を成長させる事にした。
そのまま長期保存する事を考えると、果物よりも穀物の方が向いている。
それに、果物だと1度がんばってくれた巨樹に2度目の実りを頼むことになる。
強力な力を持つというエンシェントトレントだけど、無理はさせたくない。
雪どけに1度ギフトで実らせてくれた上に、旬にまた実らせてくれるのだ。
それ以外の時期はゆっくりしてもらいたい。
そう思っていたのだが、魔境神がエンシェントドワーフと一緒にやってきた。
「村長、穀物よりも果物を実らせてくれ。
果物で造るワインをもっとたくさん造ってくれ」
「ダメだ、エンシェントトレントに無理はさせない!」
「エンシェントトレントに無理をさせる気はない。
エンシェントトレント以外の樹に実らせてくれればいい。
普通の木だと多少は味が落ちるが、他の酒のように飲めないほどではない」
「エンシェントトレントに無理をさせないなら構わない」
俺がそう言って普通の木でギフトを使おうとすると……
「村長、エンシェントトレントがお願いをしています。
他の木を使わないで、自分たちを使って欲しいそうです。
村長のギフトは身体に負担がかからないそうです。
ギフトを使う前と後に、土を豊かにしてくれるからだいじょうぶだそうです」
「そうか、ギフトの負担を和らげるように、ギフト後も土を良くしておいたのは正解だったのだな」
「はい、ああしてもらえるなら、毎日でも実らせると言っています」
「いや、毎日収穫しなくても十分な量がある。
そんなにやったら村のみんなが倒れてしまう。
ワインが欲しい者たちで、無理なく収穫できる量を実らせる、それで良いな?」
俺はだまって聞いていた魔境神とエンシェントドワーフたちに言った。
「吾はそれでかまわぬ。
エンシェントトレントの果物を毎日収穫できて、毎日ワインが造れるのなら、あわてることもない。
味の劣るハイトレントのワインでがまんする必要もない。」
魔境心が安心したように言う。
「儂らもそれでよい。
エンシェントトレントのワインが毎日手に入るのなら、儂らもハイトレントのワインでがまんしようとは思わない。
村長に寿命が心配だったのと、エンシェントトレントの果実が1年に2度しか収穫できないからあわてていただけだ」
「ちょっと待ってくれ、さっきからハイトレントと言っているが、俺が避難村でギフトを使ったのは、人間の国から手に入れた普通の木の種だ、ハイトレントじゃない」
「そう聞いて手伝ったが、ハイトレントだったぞ」
「うむ、魔境神様の申される通りじゃ、儂らが収穫したのはハイトレントの実じゃ」
「魔境神様、これを見てください、避難村でギフトを使った木の種です。
ごく普通の木の種で間違いありませんよね?」
「……ごく普通の木の種じゃ、間違いない」
「だから言っていたではないか、村長のギフトはとんでもないと」
「いや、だが、いくらなんでも、普通の木の種をハイトレントに進化させるなんて、あまりにもおかしいだろう?」
「「「「「村長、いまさらです!」」」」」
「「「「「これまでからおかしすぎです!」」」」」
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