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第二部 異世界剣士と屍蝕の魔女
第31話:恐るべき凶刃使いの襲撃者
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「困ったねェ。自分はそういう、泣かせる話は苦手なんだよねェ」
「カズマ! ここはいい、人を呼んでこい!」
「でも……!」
「いいから行け!」
デュクスの言葉に、俺は戸惑った。
呼ぶだけなら大声でいい。
だったら、なぜあえて「呼んで来い」なのか。
その瞬間、本能的に身を引いた。
同時に、肩に衝撃!
「……判断が遅いのは、致命的だったねェ」
「カズマッ!」
世界がやけにゆっくりと動いている。
男のあざけるような声と、悲鳴のようなデュクスの叫びが、妙に間延びして聞こえた気がした。
革鎧の肩当てのような場所に、ギザギザな刃の短剣が食い込んでいる……!
「君の教え子か何かかい? ざぁんねんだったねェ。かすっただけでももうおしまいさ、そいつは」
低く笑うその声に、背筋にぞわりと冷たいものが走る。
……くそっ! おしまいって、そんなことがあってたまるか!
俺は、鎧に突き刺さっている短剣の柄をつかむと、力任せに引き抜いた。刃はまるでノコギリのようなギザギザの返しがついていて、鎧がさらに引き裂かれてしまったけれど、こんなものを刺したままでいる方が怖かった。
奴は両手に短剣を持っていたのに、さらにその上でこんな禍々しい短剣を、しかもこの暗いのに、正確に俺の顔面を狙ってきていた。もし身を引くのが遅れていたら、この短剣は、このギザギザな刃で、俺の顔を引き裂いていただろう!
俺がここにいたら、間違いなく足手まといだ。デュクスは強い、必ず勝ってくれる! 俺ができることは……!
背を向けてその場から走り出すと、「敵襲! 敵襲!」と叫ぶ!
「二番台車と三番台車の間! 守りを固めろ、動けるものは二番台車と三番台車の間!」
背後から「小癪な小僧が!」という声と、デュクスの「甘えっ!」という声と共に澄んだ金属音! デュクスが、何かの攻撃を弾いてくれたんだろう。この暗い中で、すごい人だ。
その時だった。
「ご、ご主人さまぁっ!」
シェリィだった。
ひどく顔を歪めて、こちらに向かって走ってくる。
一番見たくない姿だった。
俺には一応、革の鎧がある。
だけどシェリィは、簡単な胸当てしかつけていないんだ。
もし、さっきのあのギザギザのナイフを彼女に投げつけられたら……!
「戻れ! お前は来るな! 戻れ、戻れったら!」
声を限りに叫ぶ。
ドンッ!
またしても肩に衝撃──! また狙われたのか! くそっ、しつこい奴は嫌われるんだぞ!
ただ、幸いにも突き刺さった感じはしなかった。ナイフの柄の方が当たったんだろうか。たまらずつんのめりそうになるが、かろうじて立て直す。
「ボク、ご主人さまのおそばに……!」
違う! なんでこっちに来るんだ!
今、戻れって言ったばかりなのに!
今だって俺が狙われてるんだ。万が一、狙いがそれて……いや、むしろ彼女が狙われたりしたら!
あのギザギザの刃は、絶対にとんでもない傷跡を残すはずだ。彼女がそれで傷つくところなんて、絶対に見たくない!
「シェリィ、お前は来るなって言ってるだろ! あっちに行け! ──おおい! 動ける奴は二番台車と三番台車の間! 頼む、急いでくれ!」
シェリィが、口元に手を当てて立ち止まったのが分かった。分かってくれた──ほっとしてすぐさま引き返す。
「守りを固めろ! 動ける奴は二番台車と三番台車の間! 走れ!」
どうした、何があったと素早く応えてくれた男たちと共に、俺はデュクスの元に走る。
「デュクス!」
「……カズマか。よく、動いてくれたな……」
彼は地面に膝をついていた。
例の男は、片腕をだらりと下げながら、すさまじい表情でデュクスをにらみつけている。
「まったく……弱いくせに群れたら気ばかり大きくなる……。本当に忌々しいヤツらだ……!」
吐き捨てる男に対して、逃がすな、捕らえて口を割らせろ、と、護衛の男たちが徐々に間合いを詰めていく。
「デュクス! 立てるか!」
「なあに、ちっとばかり年を食っちまったかもしれんと実感してるだけさ……!」
デュクスが軽口を叩く。けれど、そんな軽いものじゃないことくらい、俺だって分かる。
──やっちまえ!
誰かが叫んだ。
その瞬間、皆が一斉に斬りかかる!
「やだやだ、雑魚はこれだからさァ……!」
そのとき、俺の脳は、理解を拒否していたんじゃないだろうか。
なぜ目の前に、こいつがいるんだ?
なぜ周囲から一斉に斬りかかられたこいつが、俺の目の前にいるんだ?
剣を突き出していたのは、ここしばらく、デュクスによってしごかれていたおかげかもしれない。
俺の目の前で火花が散る!
その衝撃で重心が崩されたところを、さらに一撃!
受け流せたのが奇蹟のようなタイミング!
「……ガキィ……てめェは何モンだァ……? そんな体勢で、なぜ受け止めることができる……なぜ耐えることができる、このバケモノめがァ……!」
さっきまでの慇懃な態度はどこへ行ったのか、敵意むき出しの男に、俺は必死に体勢を立て直して怒鳴り返す!
「だっ……誰が化け物だ、そっちのほうがよっぽど化け物だろっ!」
「抜かせ、このガキィっ!」
再び目の前で飛び散る火花!
とっさに受けた俺を蹴りつけるようにして軌道を変えて着地、そこから数ステップを踏んでまた突っ込んでくる!
ガッ! ガキンッ! ギインッ!
くそぉっ! サルだかカエルだかみたいに飛び跳ねては、俺を踏み台に一撃離脱だって⁉ この化け物め!
次に飛び掛かってきたら斬り払ってやる──そう思ったら、奴はたまたま斬りかかって来た護衛の男を踏み台にするように蹴り倒して、カエルのような姿勢で地に飛び降りた。
「このガキィ……てめェ、本当に人間か?」
「俺は人間だよ! さっきからぴょんぴょん跳んで逃げ回りやがって! 気持ち悪いんだよ!」
「てめェこそ、人間ってのはなァ……。普通はああなるべきモンなんだよ、このバケモノめッ……!」
なんであの体勢から──こっちが叫びたくなる!
ガキィンっ!
すさまじい勢いで跳び込んできた奴の短剣を、かろうじて剣で受け止める! と、奴は俺の左腕の盾めがけて強烈なキックをして、またしても距離をとる。
こんな挙動をとられては、まともな剣士はとても戦えたもんじゃないだろう。真っ当な戦い方じゃない。まともな剣士ですらない俺なんて、戦うどころか受けるだけで精いっぱいだ。
「てめェ、何度受けやがった? このバケモンがァ……」
たった今、顔面を踏み台にされて転倒して伸びてしまった男を親指で示しながら、いらだたしげに吐き捨てる。それはこっちのセリフだよ!
「知るか、この人外変態野郎! お前こそ、人間離れした変態軌道で飛び掛かってきやがって!」
「生意気なクソガキめ──」
男が言いかけたとき、背後から冒険者が斬りかかる!
けれど、まるで背後に目がついているかのように男はその斬撃をソードブレイカーによって受け止める!
「まったく、雑魚ってのは卑怯でいけねェなァ……」
「ぐっ……この野郎!」
「剣ってのはなァ……こうしてやるとさァ……!」
奴が腕を軽く振るようにしてみせると、まるで冒険者の男はひったくられたかのように剣を落とす──
「うおっ……ぐぶっ⁉」
「弱い、弱いねェ」
剣を取り落とした冒険者の腹に、そのままソードブレイカーをねじ込んだのだ!
「──全く、冒険者のくせに鉄の鎧とはねェ。臆病だねェ、獅子奮迅の働きより石壁にでもなりたかったのかい?」
くずおれた冒険者の横面を、男は蹴り飛ばす……!
「やりやがったな!」
「てめぇ、ぶっ殺してやる!」
いきり立つ周りの男たちが斬りかかるのを、素早く飛び退くクソ野郎!
「はっはァ、雑魚同士、無力な傷のなめ合いかい?」
クソ野郎が嗤った時だった。
「まったく、お笑いだよ君たちは……ぐぅッ⁉︎」
そう。クソ野郎めがけて、さっき奴に投げつけられた短剣を投げつけたんだ。ギザギザの刃が凶悪な、アレだ。奴はとっさに短剣で弾いたようだけど、完全に防げなかったみたいで、奴の顔に赤い筋が浮かんでくる。
「て……て、てンめェェエエエエエエッ!」
クソ野郎が、爆発したように叫んだ。
「殺す! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すッ! 覚えたぞカズマとやら、このバケモノめが! 絶対に楽には死なせねえからなァッ!」
信じられないほどの跳躍力を見せて囲みを抜けたクソ野郎は、そのまま丘からやや離れた森の方に姿を消した。あれほど余裕を見せていたのに、俺のぶん投げた短剣が、そんなに奴に脅威だったとも思えなかったのに、だ。
「カズマ……。お前、どこで、あんなものを?」
苦しげに肩で息をしながら聞いてきたデュクスに、「俺の鎧に突き刺さった奴をとっておいたんだ」と答える。
「でも、大して怪我したわけでもないのに、なんであんなに怒ったんだ?」
「格下のヤツだと思っていた相手に、思わぬ反撃を喰らった……それだけでも、許せない理由に、なるだろうよ……」
洗い息を吐きながら、ニヤリと笑ってみせるデュクスの肩を、俺は「どうせ俺は未熟者だよ」と笑って叩く。彼にまた助けられた──そんな思いも込めて。
──だから、そのまま地面に倒れたのを見て、俺は息を呑んだ。
「って、デュクス⁉ おい! どうした、デュクス! しっかりしろ!」
「カズマ! ここはいい、人を呼んでこい!」
「でも……!」
「いいから行け!」
デュクスの言葉に、俺は戸惑った。
呼ぶだけなら大声でいい。
だったら、なぜあえて「呼んで来い」なのか。
その瞬間、本能的に身を引いた。
同時に、肩に衝撃!
「……判断が遅いのは、致命的だったねェ」
「カズマッ!」
世界がやけにゆっくりと動いている。
男のあざけるような声と、悲鳴のようなデュクスの叫びが、妙に間延びして聞こえた気がした。
革鎧の肩当てのような場所に、ギザギザな刃の短剣が食い込んでいる……!
「君の教え子か何かかい? ざぁんねんだったねェ。かすっただけでももうおしまいさ、そいつは」
低く笑うその声に、背筋にぞわりと冷たいものが走る。
……くそっ! おしまいって、そんなことがあってたまるか!
俺は、鎧に突き刺さっている短剣の柄をつかむと、力任せに引き抜いた。刃はまるでノコギリのようなギザギザの返しがついていて、鎧がさらに引き裂かれてしまったけれど、こんなものを刺したままでいる方が怖かった。
奴は両手に短剣を持っていたのに、さらにその上でこんな禍々しい短剣を、しかもこの暗いのに、正確に俺の顔面を狙ってきていた。もし身を引くのが遅れていたら、この短剣は、このギザギザな刃で、俺の顔を引き裂いていただろう!
俺がここにいたら、間違いなく足手まといだ。デュクスは強い、必ず勝ってくれる! 俺ができることは……!
背を向けてその場から走り出すと、「敵襲! 敵襲!」と叫ぶ!
「二番台車と三番台車の間! 守りを固めろ、動けるものは二番台車と三番台車の間!」
背後から「小癪な小僧が!」という声と、デュクスの「甘えっ!」という声と共に澄んだ金属音! デュクスが、何かの攻撃を弾いてくれたんだろう。この暗い中で、すごい人だ。
その時だった。
「ご、ご主人さまぁっ!」
シェリィだった。
ひどく顔を歪めて、こちらに向かって走ってくる。
一番見たくない姿だった。
俺には一応、革の鎧がある。
だけどシェリィは、簡単な胸当てしかつけていないんだ。
もし、さっきのあのギザギザのナイフを彼女に投げつけられたら……!
「戻れ! お前は来るな! 戻れ、戻れったら!」
声を限りに叫ぶ。
ドンッ!
またしても肩に衝撃──! また狙われたのか! くそっ、しつこい奴は嫌われるんだぞ!
ただ、幸いにも突き刺さった感じはしなかった。ナイフの柄の方が当たったんだろうか。たまらずつんのめりそうになるが、かろうじて立て直す。
「ボク、ご主人さまのおそばに……!」
違う! なんでこっちに来るんだ!
今、戻れって言ったばかりなのに!
今だって俺が狙われてるんだ。万が一、狙いがそれて……いや、むしろ彼女が狙われたりしたら!
あのギザギザの刃は、絶対にとんでもない傷跡を残すはずだ。彼女がそれで傷つくところなんて、絶対に見たくない!
「シェリィ、お前は来るなって言ってるだろ! あっちに行け! ──おおい! 動ける奴は二番台車と三番台車の間! 頼む、急いでくれ!」
シェリィが、口元に手を当てて立ち止まったのが分かった。分かってくれた──ほっとしてすぐさま引き返す。
「守りを固めろ! 動ける奴は二番台車と三番台車の間! 走れ!」
どうした、何があったと素早く応えてくれた男たちと共に、俺はデュクスの元に走る。
「デュクス!」
「……カズマか。よく、動いてくれたな……」
彼は地面に膝をついていた。
例の男は、片腕をだらりと下げながら、すさまじい表情でデュクスをにらみつけている。
「まったく……弱いくせに群れたら気ばかり大きくなる……。本当に忌々しいヤツらだ……!」
吐き捨てる男に対して、逃がすな、捕らえて口を割らせろ、と、護衛の男たちが徐々に間合いを詰めていく。
「デュクス! 立てるか!」
「なあに、ちっとばかり年を食っちまったかもしれんと実感してるだけさ……!」
デュクスが軽口を叩く。けれど、そんな軽いものじゃないことくらい、俺だって分かる。
──やっちまえ!
誰かが叫んだ。
その瞬間、皆が一斉に斬りかかる!
「やだやだ、雑魚はこれだからさァ……!」
そのとき、俺の脳は、理解を拒否していたんじゃないだろうか。
なぜ目の前に、こいつがいるんだ?
なぜ周囲から一斉に斬りかかられたこいつが、俺の目の前にいるんだ?
剣を突き出していたのは、ここしばらく、デュクスによってしごかれていたおかげかもしれない。
俺の目の前で火花が散る!
その衝撃で重心が崩されたところを、さらに一撃!
受け流せたのが奇蹟のようなタイミング!
「……ガキィ……てめェは何モンだァ……? そんな体勢で、なぜ受け止めることができる……なぜ耐えることができる、このバケモノめがァ……!」
さっきまでの慇懃な態度はどこへ行ったのか、敵意むき出しの男に、俺は必死に体勢を立て直して怒鳴り返す!
「だっ……誰が化け物だ、そっちのほうがよっぽど化け物だろっ!」
「抜かせ、このガキィっ!」
再び目の前で飛び散る火花!
とっさに受けた俺を蹴りつけるようにして軌道を変えて着地、そこから数ステップを踏んでまた突っ込んでくる!
ガッ! ガキンッ! ギインッ!
くそぉっ! サルだかカエルだかみたいに飛び跳ねては、俺を踏み台に一撃離脱だって⁉ この化け物め!
次に飛び掛かってきたら斬り払ってやる──そう思ったら、奴はたまたま斬りかかって来た護衛の男を踏み台にするように蹴り倒して、カエルのような姿勢で地に飛び降りた。
「このガキィ……てめェ、本当に人間か?」
「俺は人間だよ! さっきからぴょんぴょん跳んで逃げ回りやがって! 気持ち悪いんだよ!」
「てめェこそ、人間ってのはなァ……。普通はああなるべきモンなんだよ、このバケモノめッ……!」
なんであの体勢から──こっちが叫びたくなる!
ガキィンっ!
すさまじい勢いで跳び込んできた奴の短剣を、かろうじて剣で受け止める! と、奴は俺の左腕の盾めがけて強烈なキックをして、またしても距離をとる。
こんな挙動をとられては、まともな剣士はとても戦えたもんじゃないだろう。真っ当な戦い方じゃない。まともな剣士ですらない俺なんて、戦うどころか受けるだけで精いっぱいだ。
「てめェ、何度受けやがった? このバケモンがァ……」
たった今、顔面を踏み台にされて転倒して伸びてしまった男を親指で示しながら、いらだたしげに吐き捨てる。それはこっちのセリフだよ!
「知るか、この人外変態野郎! お前こそ、人間離れした変態軌道で飛び掛かってきやがって!」
「生意気なクソガキめ──」
男が言いかけたとき、背後から冒険者が斬りかかる!
けれど、まるで背後に目がついているかのように男はその斬撃をソードブレイカーによって受け止める!
「まったく、雑魚ってのは卑怯でいけねェなァ……」
「ぐっ……この野郎!」
「剣ってのはなァ……こうしてやるとさァ……!」
奴が腕を軽く振るようにしてみせると、まるで冒険者の男はひったくられたかのように剣を落とす──
「うおっ……ぐぶっ⁉」
「弱い、弱いねェ」
剣を取り落とした冒険者の腹に、そのままソードブレイカーをねじ込んだのだ!
「──全く、冒険者のくせに鉄の鎧とはねェ。臆病だねェ、獅子奮迅の働きより石壁にでもなりたかったのかい?」
くずおれた冒険者の横面を、男は蹴り飛ばす……!
「やりやがったな!」
「てめぇ、ぶっ殺してやる!」
いきり立つ周りの男たちが斬りかかるのを、素早く飛び退くクソ野郎!
「はっはァ、雑魚同士、無力な傷のなめ合いかい?」
クソ野郎が嗤った時だった。
「まったく、お笑いだよ君たちは……ぐぅッ⁉︎」
そう。クソ野郎めがけて、さっき奴に投げつけられた短剣を投げつけたんだ。ギザギザの刃が凶悪な、アレだ。奴はとっさに短剣で弾いたようだけど、完全に防げなかったみたいで、奴の顔に赤い筋が浮かんでくる。
「て……て、てンめェェエエエエエエッ!」
クソ野郎が、爆発したように叫んだ。
「殺す! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すッ! 覚えたぞカズマとやら、このバケモノめが! 絶対に楽には死なせねえからなァッ!」
信じられないほどの跳躍力を見せて囲みを抜けたクソ野郎は、そのまま丘からやや離れた森の方に姿を消した。あれほど余裕を見せていたのに、俺のぶん投げた短剣が、そんなに奴に脅威だったとも思えなかったのに、だ。
「カズマ……。お前、どこで、あんなものを?」
苦しげに肩で息をしながら聞いてきたデュクスに、「俺の鎧に突き刺さった奴をとっておいたんだ」と答える。
「でも、大して怪我したわけでもないのに、なんであんなに怒ったんだ?」
「格下のヤツだと思っていた相手に、思わぬ反撃を喰らった……それだけでも、許せない理由に、なるだろうよ……」
洗い息を吐きながら、ニヤリと笑ってみせるデュクスの肩を、俺は「どうせ俺は未熟者だよ」と笑って叩く。彼にまた助けられた──そんな思いも込めて。
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