90 / 785
第一部 異世界建築士と獣人の少女
第83話:未来へとつながる図面
しおりを挟む
「ムラタさん、まだ寝ないんですか……?」
ベッドから、恐る恐るといった様子でリトリィが声をかけてきた。
「ああ、今ちょっといい感じに図面の神様が舞い降りて来ててさ……。リトリィは先に寝てていいよ」
ランプの油代も部屋代の一つ、夜遅くまで起きていると出費がかさむ。
だが、夜のほうがアイディアが浮かんできやすいのは、向こうの世界にいた頃からずっと変わらない習慣なのだ。
「……ひょっとして、宿代が気になる?」
「そうじゃないですけど……」
リトリィが、身を起こす。
「いつ、お休みになるのかなって。
……お夕飯のあとから、ずっとおうちのこと考えて、いろいろとうわの空でしたよね?」
「心配させてごめん。なるべく早く寝るようにするからさ――って……?」
言い終わらぬうちに、リトリィが、後ろからふわりと抱きしめてきた。
「……ムラタさんって、本当に、意地悪な人です……」
「……意地悪?」
唐突に、いじめっ子認定されてしまった。首を振り向けると、やや頬をふくらませて口を尖らせたリトリィが、図面をのぞき込んでいる。
リトリィも、興味をもってくれたのか。
しかし、意地悪?
どういう意味なのだろう。使いづらそうだ、ということなのか?
「リトリィ、この図面、見てどう思うんだ?」
意地悪認定されたということは、普段、家で家事全般を司っている彼女の視点からして、使いづらそうな動線になっているということなのかもしれない。聞いてみるのが一番だ。
彼女は俺の質問に面食らったようだが、勝手口のないことを指摘した。俺がパントリーを設置していた箇所に、出入り口があったほうが便利かもしれないと言う。
――そうか、上水道やガスなどのインフラがない以上、水や燃料を直接運び入れることができる勝手口は、住む人にとって便利だろう。
早速書き足そうとすると、リトリィが不思議そうにつぶやいた。
「そもそも、あの家を建て替えるとして、誰が住むんですか?」
「――!?」
しまった、その発想は無かった!
なんの疑問もなく、誰かが住む家を想定していたが、そもそも無人の小屋の建て替え案なのだ。
公民館のようなものにしたほうがいいのかもしれない。
「ありがとう! リトリィの言う通りだよ!」
早速、図面の引き直しだ。
明日までに案を考えてみると、ペリシャさんと約束したのだ。
まずはこの初仕事、叩き台としての価値がなければ、話にならない。ちょっと、気合を入れ直して頑張らないと。
とりあえず今書いていたものは床に置き、新たな草皮紙を準備する。外枠はいいとして、もう一度部屋割の見直しだ。
「あ、あの、ムラタさん……?」
なにやら戸惑った様子の声。一からやり直し始めた俺を見て、罪悪感でも覚えたのだろうか?
――とんでもない!
自分に欠けていた視点をもらえて、むしろ大感謝だ!
そのことを伝えると、リトリィは嬉しそうな、だが困ったような、大変複雑そうな顔をした。
優しい彼女のことだ。俺の仕事がやり直しになったことを悔いているのかもしれない。
いやいや、こちらは、掛け値なしの感謝なのだ。浄水の風力利用でも、俺のために作ってくれたナイフのことでもそうだが、彼女の疑問や発想には、こちらも何かしら気づかされてばかりだ。
やはり、将来のジルンディール工房を支える影の立役者は、彼女かもしれない。
再びカリカリと草皮紙に図面を描き始めた俺――だったのだが。
リトリィが、隣の席に座ったまま、動こうとしない。
「リトリィ、先に寝ていいんだよ?」
しかし彼女は、動かない。
「リトリィ?」
「……ムラタさんがお仕事をがんばっているのに、わたしだけ寝るわけにはまいりませんから」
「いや、これは俺が頑張るべきことだから。リトリィはちゃんと寝てくれよ」
「でも……」
「なんだ、俺のこと監視してなきゃ心配なのか? 俺って、そんなに信用ないかな?」
「そんなわけ……!」
「だったら、もうリトリィは寝て、明日、俺はどうせ寝坊するに決まってるから叩き起こしてくれよ」
なにやら釈然としない様子だったが、その顎をとらえて彼女の頬を押さえると、たっぷりとキスをくれてやる。
「……じゃあ、お休みリトリィ」
「……ずるい、です」
リトリィの目尻に、じわりと涙が浮かぶ。
うわ、慣れないキザったらしいことしたら彼女を泣かせてしまった!?
ああもう、くそっ、俺の馬鹿野郎!
「ご、ごめん、嫌だったか!?」
慌てて謝る。不快にさせるつもりなんてなかったのだ。
しかし、リトリィの反応は予想外のものだった。
「……どうして、ムラタさんが謝るんですか?」
すでに真っ赤になった目で、だが小首を傾げる。
「だって、いま嫌だったんだろ?」
「何がですか?」
「え?」
「え?」
「いや、泣いてるから……」
「だ、だってそれは、ムラタさんが、その――」
「俺が、なに?」
俺の問いに、リトリィは頬を押さえて首をぶんぶん振る。
「か――」
「か?」
「……かっこいいんですもの!」
「……は?」
――何を言っているんだ?
開いた口が塞がらない俺の前で、リトリィがくねくねし始める。
「だって、わたしのあごをくいってさせて、そこからながーい口づけをくださって! それが終わったら、薄く微笑みながら『……お休み、リトリィ』って!!」
……あれ?
泣いてたんじゃなかったのか?
「それに、前は口づけをくださるとき、慣れてなくて眉をきゅっとしてて、それが可愛かったのに、今なんてすごく自然で、舌もすごく絡めてきて! いつの間にこんなにかっこよくなってくださったのって!」
いや、あの、その……何? その、褒め殺し的な何か。
「それに、口づけをくださってる間、ずっと頬をなでてくださってて! もう、ぞくぞくしてどきどきしてたんですっ!」
きゅーん、と、何やら可愛らしい声を上げながら、尻尾をバサバサ振り回している彼女は、いつもの落ち着いたリトリィではない。
「ああ、この人がわたしの旦那さまになるんだって! わたし、この人に添い遂げるんだって!
もう、もう……!!」
きゅーん! と、謎の擬声語を発しながら身悶えし続けるリトリィに、ちょっと、ついていけない。
あー、あれかな? 寝る前のハイテンション状態ってやつ?
なんにせよ、悲しくて泣いているのではなかったことが何よりだった。
……何よりだったが、これは一体どういうことだろう。
図面を引いている目の前で、こっくりこっくり船を漕ぐリトリィ。
眠いならベッドで寝ればいいのに、「ムラタさんが頑張ってるのに、わたしだけ寝るわけにはいきませんから」と、頑として聞かない。
「リ~トリィ?」
呼びかけるだけでは、もう起きなくなった彼女。このままだと、近いうちにテーブルに突っ伏してくるだろう。そこまで放置するのは、さすがにかわいそうだ。
寝床へ抱っこして運ぶことにする。
「ムラタ……さん?」
慎重に、揺らさないように、ついでに自分の腰も痛めないようにゆっくりと抱え上げたつもりだったが、起こしてしまったようだ。
が、すぐにしだれかかってきて、そのまま、可愛らしい寝息を立て始める。
まあ、起きなかったのはよしとしよう。
ベッドに寝かせると、今度は絡みつくようにしがみついてきて、放そうとしない。
寝ているとは思えない力でガッチリとホールドしてくる。
しばらく腕をほどこうと奮戦し、しかし体をかがめた状態で力が入るはずもなく、仕方なく、リトリィの上に覆い被さるように、ベッドに横なる。
「リトリィ……本当は、起きてるんだろう?」
しばらくリトリィの反応はなかったが、
「……ふふ」
――やっぱりだ。起きていた。
「だって、初めてだっこされたんですもの。ほんの少しの間でしたけど、うれしかったんですよ?」
「それは分かったから、放してくれないか?」
「……放すと、思いますか?」
「思う」
「……いやです、って言ったら?」
いたずらっぽい笑みを浮かべて言うリトリィにたっぷりと口をふさがれたあと、俺はため息をつきながら答える。
「リトリィが、俺を困らせるようなことを、これ以上続けるわけがない」
「……さあ、どうでしょうか?」
ここは大真面目を通す。
リトリィも大切だが、ペリシャさんから受けた依頼――依頼と呼べるほどのものでもなく、要望程度のものだが――は、今後のこの世界での、俺の生き方を左右するかもしれないものだ。ここで存在感を示しておきたい。
彼女を養っていく、独り立ちして家族として一緒に暮らしてくためには、仕事が必要だ。
今回の件は、その実績作りの第一歩だ。もし、ツーバイフォー工法あらため一×三寸工法が有用性を示せたら、リトリィを妻に迎える準備が一歩前進することになる。
一軒建てたぐらいで即、事務所を立てることができるとは思わないが、現場で大工と一緒に作業をすれば存在感もアピールできるかもしれないし、そうしたら、早くて頑丈な家をたてるムラタ、という口コミは、次の仕事を呼び込んでくれるかもしれないのだ。
そう、この世界での初仕事はほぼボランティアになるかもしれないが、自分の将来性を売るための投資だと思えばいい。つまりこの図面は、大げさに言えば、俺の――俺とリトリィが共に生きる未来へとつながる図面なのだ。
今は寂しい思いをさせるかもしれないが、リトリィは聡い女性だ。きっと分かってくれる。
リトリィははじめこそ微笑みを浮かべていたが、俺の表情が硬いまま変わらないことを悟ると、その笑みは寂しげなものに変わり、腕を緩めた。
「……ごめん、なさい……」
「いや、ごめん。おれも、今夜中にやりたいことだからさ、アレは」
「ペリシャさんのお願いのこと、ですか?」
「ああ、『明日までには』って、俺が言っちゃったからな。約束は守らないと」
「やくそく……」
リトリィが目をそらす。
「……じゃあ、図面が出来上がったら、今度はわたしに、お時間をいただけますか?」
ベッドから、恐る恐るといった様子でリトリィが声をかけてきた。
「ああ、今ちょっといい感じに図面の神様が舞い降りて来ててさ……。リトリィは先に寝てていいよ」
ランプの油代も部屋代の一つ、夜遅くまで起きていると出費がかさむ。
だが、夜のほうがアイディアが浮かんできやすいのは、向こうの世界にいた頃からずっと変わらない習慣なのだ。
「……ひょっとして、宿代が気になる?」
「そうじゃないですけど……」
リトリィが、身を起こす。
「いつ、お休みになるのかなって。
……お夕飯のあとから、ずっとおうちのこと考えて、いろいろとうわの空でしたよね?」
「心配させてごめん。なるべく早く寝るようにするからさ――って……?」
言い終わらぬうちに、リトリィが、後ろからふわりと抱きしめてきた。
「……ムラタさんって、本当に、意地悪な人です……」
「……意地悪?」
唐突に、いじめっ子認定されてしまった。首を振り向けると、やや頬をふくらませて口を尖らせたリトリィが、図面をのぞき込んでいる。
リトリィも、興味をもってくれたのか。
しかし、意地悪?
どういう意味なのだろう。使いづらそうだ、ということなのか?
「リトリィ、この図面、見てどう思うんだ?」
意地悪認定されたということは、普段、家で家事全般を司っている彼女の視点からして、使いづらそうな動線になっているということなのかもしれない。聞いてみるのが一番だ。
彼女は俺の質問に面食らったようだが、勝手口のないことを指摘した。俺がパントリーを設置していた箇所に、出入り口があったほうが便利かもしれないと言う。
――そうか、上水道やガスなどのインフラがない以上、水や燃料を直接運び入れることができる勝手口は、住む人にとって便利だろう。
早速書き足そうとすると、リトリィが不思議そうにつぶやいた。
「そもそも、あの家を建て替えるとして、誰が住むんですか?」
「――!?」
しまった、その発想は無かった!
なんの疑問もなく、誰かが住む家を想定していたが、そもそも無人の小屋の建て替え案なのだ。
公民館のようなものにしたほうがいいのかもしれない。
「ありがとう! リトリィの言う通りだよ!」
早速、図面の引き直しだ。
明日までに案を考えてみると、ペリシャさんと約束したのだ。
まずはこの初仕事、叩き台としての価値がなければ、話にならない。ちょっと、気合を入れ直して頑張らないと。
とりあえず今書いていたものは床に置き、新たな草皮紙を準備する。外枠はいいとして、もう一度部屋割の見直しだ。
「あ、あの、ムラタさん……?」
なにやら戸惑った様子の声。一からやり直し始めた俺を見て、罪悪感でも覚えたのだろうか?
――とんでもない!
自分に欠けていた視点をもらえて、むしろ大感謝だ!
そのことを伝えると、リトリィは嬉しそうな、だが困ったような、大変複雑そうな顔をした。
優しい彼女のことだ。俺の仕事がやり直しになったことを悔いているのかもしれない。
いやいや、こちらは、掛け値なしの感謝なのだ。浄水の風力利用でも、俺のために作ってくれたナイフのことでもそうだが、彼女の疑問や発想には、こちらも何かしら気づかされてばかりだ。
やはり、将来のジルンディール工房を支える影の立役者は、彼女かもしれない。
再びカリカリと草皮紙に図面を描き始めた俺――だったのだが。
リトリィが、隣の席に座ったまま、動こうとしない。
「リトリィ、先に寝ていいんだよ?」
しかし彼女は、動かない。
「リトリィ?」
「……ムラタさんがお仕事をがんばっているのに、わたしだけ寝るわけにはまいりませんから」
「いや、これは俺が頑張るべきことだから。リトリィはちゃんと寝てくれよ」
「でも……」
「なんだ、俺のこと監視してなきゃ心配なのか? 俺って、そんなに信用ないかな?」
「そんなわけ……!」
「だったら、もうリトリィは寝て、明日、俺はどうせ寝坊するに決まってるから叩き起こしてくれよ」
なにやら釈然としない様子だったが、その顎をとらえて彼女の頬を押さえると、たっぷりとキスをくれてやる。
「……じゃあ、お休みリトリィ」
「……ずるい、です」
リトリィの目尻に、じわりと涙が浮かぶ。
うわ、慣れないキザったらしいことしたら彼女を泣かせてしまった!?
ああもう、くそっ、俺の馬鹿野郎!
「ご、ごめん、嫌だったか!?」
慌てて謝る。不快にさせるつもりなんてなかったのだ。
しかし、リトリィの反応は予想外のものだった。
「……どうして、ムラタさんが謝るんですか?」
すでに真っ赤になった目で、だが小首を傾げる。
「だって、いま嫌だったんだろ?」
「何がですか?」
「え?」
「え?」
「いや、泣いてるから……」
「だ、だってそれは、ムラタさんが、その――」
「俺が、なに?」
俺の問いに、リトリィは頬を押さえて首をぶんぶん振る。
「か――」
「か?」
「……かっこいいんですもの!」
「……は?」
――何を言っているんだ?
開いた口が塞がらない俺の前で、リトリィがくねくねし始める。
「だって、わたしのあごをくいってさせて、そこからながーい口づけをくださって! それが終わったら、薄く微笑みながら『……お休み、リトリィ』って!!」
……あれ?
泣いてたんじゃなかったのか?
「それに、前は口づけをくださるとき、慣れてなくて眉をきゅっとしてて、それが可愛かったのに、今なんてすごく自然で、舌もすごく絡めてきて! いつの間にこんなにかっこよくなってくださったのって!」
いや、あの、その……何? その、褒め殺し的な何か。
「それに、口づけをくださってる間、ずっと頬をなでてくださってて! もう、ぞくぞくしてどきどきしてたんですっ!」
きゅーん、と、何やら可愛らしい声を上げながら、尻尾をバサバサ振り回している彼女は、いつもの落ち着いたリトリィではない。
「ああ、この人がわたしの旦那さまになるんだって! わたし、この人に添い遂げるんだって!
もう、もう……!!」
きゅーん! と、謎の擬声語を発しながら身悶えし続けるリトリィに、ちょっと、ついていけない。
あー、あれかな? 寝る前のハイテンション状態ってやつ?
なんにせよ、悲しくて泣いているのではなかったことが何よりだった。
……何よりだったが、これは一体どういうことだろう。
図面を引いている目の前で、こっくりこっくり船を漕ぐリトリィ。
眠いならベッドで寝ればいいのに、「ムラタさんが頑張ってるのに、わたしだけ寝るわけにはいきませんから」と、頑として聞かない。
「リ~トリィ?」
呼びかけるだけでは、もう起きなくなった彼女。このままだと、近いうちにテーブルに突っ伏してくるだろう。そこまで放置するのは、さすがにかわいそうだ。
寝床へ抱っこして運ぶことにする。
「ムラタ……さん?」
慎重に、揺らさないように、ついでに自分の腰も痛めないようにゆっくりと抱え上げたつもりだったが、起こしてしまったようだ。
が、すぐにしだれかかってきて、そのまま、可愛らしい寝息を立て始める。
まあ、起きなかったのはよしとしよう。
ベッドに寝かせると、今度は絡みつくようにしがみついてきて、放そうとしない。
寝ているとは思えない力でガッチリとホールドしてくる。
しばらく腕をほどこうと奮戦し、しかし体をかがめた状態で力が入るはずもなく、仕方なく、リトリィの上に覆い被さるように、ベッドに横なる。
「リトリィ……本当は、起きてるんだろう?」
しばらくリトリィの反応はなかったが、
「……ふふ」
――やっぱりだ。起きていた。
「だって、初めてだっこされたんですもの。ほんの少しの間でしたけど、うれしかったんですよ?」
「それは分かったから、放してくれないか?」
「……放すと、思いますか?」
「思う」
「……いやです、って言ったら?」
いたずらっぽい笑みを浮かべて言うリトリィにたっぷりと口をふさがれたあと、俺はため息をつきながら答える。
「リトリィが、俺を困らせるようなことを、これ以上続けるわけがない」
「……さあ、どうでしょうか?」
ここは大真面目を通す。
リトリィも大切だが、ペリシャさんから受けた依頼――依頼と呼べるほどのものでもなく、要望程度のものだが――は、今後のこの世界での、俺の生き方を左右するかもしれないものだ。ここで存在感を示しておきたい。
彼女を養っていく、独り立ちして家族として一緒に暮らしてくためには、仕事が必要だ。
今回の件は、その実績作りの第一歩だ。もし、ツーバイフォー工法あらため一×三寸工法が有用性を示せたら、リトリィを妻に迎える準備が一歩前進することになる。
一軒建てたぐらいで即、事務所を立てることができるとは思わないが、現場で大工と一緒に作業をすれば存在感もアピールできるかもしれないし、そうしたら、早くて頑丈な家をたてるムラタ、という口コミは、次の仕事を呼び込んでくれるかもしれないのだ。
そう、この世界での初仕事はほぼボランティアになるかもしれないが、自分の将来性を売るための投資だと思えばいい。つまりこの図面は、大げさに言えば、俺の――俺とリトリィが共に生きる未来へとつながる図面なのだ。
今は寂しい思いをさせるかもしれないが、リトリィは聡い女性だ。きっと分かってくれる。
リトリィははじめこそ微笑みを浮かべていたが、俺の表情が硬いまま変わらないことを悟ると、その笑みは寂しげなものに変わり、腕を緩めた。
「……ごめん、なさい……」
「いや、ごめん。おれも、今夜中にやりたいことだからさ、アレは」
「ペリシャさんのお願いのこと、ですか?」
「ああ、『明日までには』って、俺が言っちゃったからな。約束は守らないと」
「やくそく……」
リトリィが目をそらす。
「……じゃあ、図面が出来上がったら、今度はわたしに、お時間をいただけますか?」
0
あなたにおすすめの小説
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について
国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”
人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
異世界カフェ食堂で皿洗いをしますと思ったら日本料理を創造する力が与えられていた!(もふもふ聖獣猫のモフにゃーと楽しく日本料理を創造します)
なかじまあゆこ
ファンタジー
可愛いもふもふ達とアリナは異世界でスローライフをします。
異世界召喚された安莉奈は幼女の姿になっていた。神様に与えられた能力を使い眷属聖獣猫モフにゃーや魔獣のライオン魔獣鳥に魔獣の日焼けとお料理を創造します!
熊元安莉奈(くまもとありな)は黄色のバスに乗せられ異世界召喚された。 そして、なぜだか幼女の姿になっていた。しかも、日本の地球人だったことを忘れていたのだ。 優しいモリーナ夫妻に養子として引き取れた安莉奈はアリナになった。 モリーナ夫妻はカフェ食堂を経営していたが繁盛しておらず貧乏だった。料理が出来ないアリナはお皿洗いなどのお手伝いを小さな体ながらしていたのだけど。 神様から日本料理を創造する力が与えられていた! その力を使うと。
地球では辛い生活を送っていた安莉奈が異世界ではアリナとしてお父さんに激愛され幸せに生きている。
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる