無職のお姉ちゃんですが、美形の弟(血縁なし)が気になります【R18】

人面石発見器

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5 ひさしぶりにお仕事しましたっ!

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 夏が終わり、季節は秋へ。

 夏着のままだと肌寒さを感じるようになった、10月中旬。
 わたしは数年ぶりに、イラストのお仕事をしていた。

 お金はほぼ出ないけど、出版社のノベルティーグッズに使うカレンダーに、わたしの絵を使いたいらしい。

 できれば新作を……と、わたし担当編集者であり大学の先輩でにある人に頼まれたから、断ることはできなかった。
 あの人がわたしの見出してくれたから、今の「無職でもやっていけてるわたし」があるのだから。

 わたしは発表はしていなかったけど、デジタルで絵は描き続けていた。
 ずっと描き続けている猫の絵も、風景や、弟のあおくんの絵も……。

 求めらているのは、過去にヒットした猫のキャラクターの絵だろう。
 カレンダーの何月に使われる絵なのかわからなかったから、わたしはどの月で使われてもいいように、12枚の絵を描いた。

 思ったいたより早くかけて、作業は3日で終わった。
 お仕事という意識を持って絵を描いたのは、本当にひさしぶりだ。そのおかげかな? 自分でもいい絵になってると思う。

 だけど出版社で先輩に絵を見せる日まで、まだ一週間もある。
 わたしは絵を描きたい気分になっていて、なんだかいい絵が描けそうな気分でもあった。

 時間はある。というか、時間ばかりがある。
 わたしは自分のココロが望むままに、自分の中にある絵をこの世界へと取りだす作業を続けた。


     ◆


 一応、自分なりにおしゃれはして、出版社で先輩と会う。
 タブレットを渡すと、先輩は保存されている画像を確認していった。

「どうですか? ひさしぶりだから、わかんないですけど。大丈夫そうですか?」

 なにか答えてよ。なんで無言なの。

「あの……先生?」

 先輩は社内では、わたしを「先生」と呼ぶ。普段は「あなた」だけど。
 わたしにあるイラストが映された画面を見せて、

「これ、なんですか?」

 探るような視線を突き刺す先輩。

 なにといわれても、

「イラストですけど」

「そういう意味じゃなくて、これ、実在している誰かなんですか? 先生の絵にしたらリアリティーがあるというか、先生の色ですけど、別人が描いたみたいにも見えるというか、モデルがいて見て描いたような……先生の世界観の住人じゃないですよね、この美少年」

 うーん……別に隠すことじゃないか?

「それ、弟です。血は繋がってないですけど、実在している、わたしの弟です」

 わたしの言葉に、

「妄想じゃないの!? 引きこもりすぎて頭おかしくなったんじゃないの!? あなた大丈夫なの!? そういう作家先生はときどきいるのよ? こころの病院ってわかる?」

 いやいやいや、失礼な先輩だな。

「ちがいますよ、ほら」

 わたしはスマホに保存してある、碧くんとのプライペートな姉弟写真を見せる。

「い、いや……でも……ねえ?」

 なにが、「いや……でも……ねえ?」になるの。
 姉弟だっていってるでしょ!?

 わたしは碧くんにテレビ電話をかける。先輩が映らないように気をつけながら。
 碧くんはすぐ電話に出てくれた。背景を見るかぎり、家で夕ご飯を作ってくれてるみたい。

「どうしたの、お姉ちゃん。お仕事終わった? 今日はお姉ちゃんが好きな、コーンシチュー作ってるんだよ。お仕事終わったなら、早く帰ってきてね」

「うん、もうすぐ帰るよ。あと1時間くらいで帰れるかな?」

「わかった。あっ、お姉ちゃん」

「なに? 碧くん」

「今日はおしゃれしてるんだね、とっても可愛いよ。楽しみだな、早くおしゃれ可愛いお姉ちゃんに会いたな。じゃあ、待ってるからね」

 電話は碧くんの方から切られた。
 料理している途中みたいだから、しょうがない。

「ね?」

「あなた、外人の美少年囲ってお姉ちゃんなんて呼ばせてるの!? 犯罪でしょそれっ!」

「いや、ホントに弟なんですって! なんで信じないんですかっ」

 めっちゃコワイ顔でわたしを睨んでくる先輩。
 この人、本気で疑ってるよ……。

 出版業界には、そういうことしちゃうヤバイ先生もいるのかな?
 確かに碧くんの外見じゃ、わたしと姉弟とは思えないだろうけど。

「わかりました。じゃあ弟から直接確認してください。わたしたちが姉弟だって。今からうちに来ます? 今日は弟お手製のコーンシチューみたいですよ? うちの弟、料理上手ですよー?」

 わたしよりは確実にねっ!

 碧くんはわたしが「お友だち」を家に連れてきたことを、とっても喜んでいた。

「お姉ちゃん、お友だちいたんだね。よかったー」

 と、涙ぐんでいたね。

 わたし弟に、どれだけ心配かけてるんだろ?
 こっわ……。

 ちなみに先輩は、納得できるまで、3日連続でうちに来た。
 で、カレンダーには、こどもの日をイメージした5月のイラストを使いたいそうだ。

 それとは別に、小学生の頃の碧くんをイメージして描いたイラスト数点も、子供服の雑誌で使いたいといってて、それにはちゃんと原稿料が出るらしい。

 そのお金で、お正月に碧くんと美味しいものを食べようかな。


     ◆


 12月も中旬に入り、寒さがはっきりしてきた頃。
 わたしが風邪で寝込んだ。

 病院にはいったけど、

「お薬を飲んでゆっくりしてください」

 という診察結果でその通りにしてたけど、病院にいった翌朝には身体を動かすのもだるくて、わたしはベッドから起き上がれなくなった。

 その日。
 わたしを心配した碧くんは、学校を休んで家にいてくれた。

「ごめんね」

 そういったけど、声に出ていたかどうかわからない。そのくらい、わたしは弱っていた。

 碧くん、とっても心配そうな顔している。
 安心させたかったけど、わたしの意識はもうろうとしていて、弱った姿を弟に見せることしかできなかった……。


     ◆


 で、翌朝。土曜日。

 昨日の辛さがウソのように、身体に多少の痛みは感じたけど、風邪の症状はなくなっていた。

 わたしが目覚めたのがわかったかの様なタイミングで、わたしの部屋のドアがノックされる。

「お姉ちゃん、起きてる?」

 ドアの向こうからの呼びかけに、

「今起きたよ」

 わたしは返す。

「入っていい?」

「うん、いいよ」

 わたしの返事に、すぐにドアが開いて、心配顔の碧くんがベッドに近づいてくる。

「大丈夫?」

「うん、もう大丈夫だよ」

「なにか欲しいものは? なにたべられる?」

 しっかりしてるな、この子。

「お風呂入りたいな。わたし、汗くさくない?」

 碧くんは頭を横に動かして、

「お姉ちゃんは、いつも通りいい匂いだよ」

 な、なに変態みたいなこといってるのこの子!? いつもわたしの匂い嗅いでるの!?
 碧くんだからギリギリ気持ち悪くないレベルだよ? そのセリフ。

「じゃあ、お風呂沸かしてくるね。お姉ちゃんは寝てて」

 碧くん今日は学校……と一瞬思ったけど、今日は土曜日で学校はお休みだ。
 なら安心かな。

 ベッドで待つこと10分くらい。

「お姉ちゃん、もうすぐお風呂が沸くよ」

 部屋の外から碧くんの声。

「うん、ありがとう」

 ベッドから降りると、一瞬だけクラっとしたけど、すぐに良くなった。

 パジャマのまま部屋を出て、碧くんに手を握られて支えられながらお風呂場へ移動する。
 お風呂場へ入るときには、 

「なにかあったら呼んでね。ぼく、お風呂場の前にいるから」

 心配そうな顔の弟にそういわれた。

「それはやめて」

「でも、心配だよ……」

 確かに、心配をさせているのはわたしだ。

「あんまり、音聞かないでね。恥ずかしいから」

「お風呂の中の音は聞こえないと思うよ?」

 そうかな?
 でも、浴室のドアもあるから聞こえないかー。

「じゃあ、なにかあったら呼ぶから、そこにいてね」

 わたしはいい残して、お風呂場に入った。

 わたしのバスタオルは、準備されてる。それ以外……着替えはないみたい。
 さすがにそれは自分で準備した。お風呂場には、パジャマや下着を入れてあるタンスがあるから。

 昨日一日中着ていたパジャマを脱ぎ、ショーツだけの下着姿に。
 碧くんに看病してもらっているとはいえ、さすがにブラはしていられなかった。ノーブラなのは少し気になったけど、そんな状態じゃなかったから。

 パジャマとショーツを洗濯カゴに入れて、浴室へ。
 一日ぶりのお風呂は、やっぱり気持ちよかった。

 だけど浴室から出た瞬間。

 急に目の前が真っ暗になって、電源が切られたみたいに、意識が、なくなった……。
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