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第3章
03-EX 異世界転生した三十路のオレが騎士団の少年姫士になって濡れ濡れ生活を満喫できるのは、すべて女神さまのおかげです[の第一章]
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1
オレは子どもの頃から、自分はオトコだけどオンナだと感じていた。
何をいってるか自分でもわからないが、肉体的に男でそれを拒否するわけじゃないけど、気持ち的にはオンナとして男性に可愛がってほしいという欲求に苦しんでいた。
簡単にいえば、男の身体のまま男性に愛してほしいと、そんな欲求に支配されていたわけだ。
といってもおれは、見た目はとても美男子じゃないし、趣味で筋トレしてたこともあって身体がゴツい系だった。
それに男性の趣味が「強い男」というもので、格闘家とかスポーツ選手とか、そういう普段から肉体を鍛えるている男が好きだった。
でも、そんな男性たちが「ブサいゴツ男」に興味を持ってくれるわけもなく、オレは30歳になっても男相手も女相手も童貞で、このまま寂しく年を取っていくだけなんだろうな……と思っていたんだけど。
オレが30歳になって一ヶ月ほど。
気がついたときオレは、真っ白な空間で美女と対面していた。
夢かな?
普通に考えればそうなんだけど、夢にしては意識がはっきりしている。
「もうしわけありません。妹の手違いで、あなたを死なせてしまいました」
困ったような顔をする美女。美人だけど胸が小さいな。そう思った瞬間。
「貧乳といったら地獄に落とす」
美女がすごい憤怒の顔をした。
「す、すみませんっ」
オレが謝罪すると、
「わかればよろしいのです。わかれば」
美女は表情を戻して微笑した。
「はい……すみませんでした」
こっわ、なにこれ?
「それでですね。あー、自己紹介しましょうか、わたくしは女神アルフレイド。女神シノリアの姉です」
そうですか。
という以外、何と感想を持てばいいのやら。
だって知らない名前だし。
「ピンときてませんね」
「はい、ごめんなさい」
「まぁ、いいでしょう。それでですね、あなたはまだ死ぬ定めになかったのですが、うちの可愛い妹がちょいやらかしましてね、あなたを含め約11万人を死なせてしまったのです」
約11万人って……めちゃくちゃ多いな。
何したんだその妹さん。
というかオレ、本当に死んだの?
まぁ……でも、そこまで未練はないな。
どうせ、寂しい一生を過ごすだけだったろうし。家族もいないしな。
「ですので、元の世界にでも別の異世界にでも、適当な世界に転生さえてあげようと思いまして。ついでに多少の優遇もできますよ?」
……はい?
「元の世界に生まれ変われるのですか?」
「できますよ。ただあの世界は、これからちょい大変なことになるので、オススメはしません。妹が……ね?」
なんだかわからないけど、元の世界はやめたほうがいいかも。妹さんが……ね。
「でしたら、比較的平和な世界に生まれ変わらせてください」
「いいですよ。何かこんな感じの世界がいいとかありますか? それに、あまり多くを与えることはできませんが、少しは優遇してあげられますから」
そ、そうだな。だったら、
「女性的な美少年になって、騎士様とかそういうカッコ強いイケメンに弄ばれたいですッ! 性的にッ」
オレは幼い頃からの夢を口にした。
女神様は無表情で数秒間固まったあと、にっこり微笑んで、
「わかりました。あたなのそのアレな感じの願い、叶えましょう」
やったーっ!
すげぇ、マジで!?
こうして女神様に異世界転生をさせてもらったオレは、願い通り女の子みたいな美少年として騎士の家に生まれ、「少年姫士(リノール)」を目指すことになった。
少年姫士というのは、女性の立ち入りが厳禁となっている騎士団において、団員の性的な相手を務める職務にある少年騎士のことで、要するに「騎士様たちの性処理係」を任務にする騎士のことだ。
女神様はオレの「アレな感じの願い」が、ちゃんと叶うような世界に転生させてくれたらしい。
ありがとう女神様っ!
◆
12歳から15歳までの4年間を騎士学院で過ごしたオレは、学院を卒業して騎士となり、「少年姫士」としてヴァドフ騎士団第8中隊の所属となった。
少年姫士は階級的には下から三番目の中級騎士扱いで、年齢の割に出世が速いエリートではある。
騎士学院を卒業したばかりの新米としては、一番上の階級と思ってくれていい。
例外もあるけど、それは王族に連なる者か高位貴族のおぼっちゃまという特殊な立場の者ばかりで、騎士階級の家の子息なら新米で中級騎士というのは、上位5%に入るエリート騎士だ。
少年姫士はエリート騎士。
それは少年姫士が騎士団にとって重要な役割を持っている証明であり、大切な任務であることを示している。
男ばかりの中で「女性の役」をになうことができる者は貴重だ。男にも関わらず、ちゃんと「女」と認識されるほどの容姿の者は。
オレが所属するヴァドフ騎士団第8中隊は、東の国境を守るフレイド砦で任務についている。
だからオレも、今はフレイド砦で生活している。
現在この国は、他国と交戦状態にはない。特に東の隣国とは同盟関係にあって、オレたちヴァドフ騎士団第8中隊は緊張感のある状況に置かれているわけじゃなく、のんびりとしたものだった。
もちろん日々の訓練を欠かしたりはしないが、でもそのくらいだ。
夜になるとオレは、少年姫士としての任務に就くことが多い。
とはいえ、毎日ではないけど。
それに一晩で相手をするのは、多くてふたりで普段はひとりだ。
少年姫士には美女系もいるけど、オレは「ボーイッシュな美少女系」だと思う。美人というより可愛い系だ。
この世界でのオレは女神様にそうお願いしたからだろうけど、顔は完全に美少女だし、身体つきは細く肌もなめらかで、腰つきもなんだか女性っぽくある。
声も少年というよりは少女で、前世での「理想の姿」みたいにしてもらえた。
女神様、ホント女神ッ!
今夜オレがお相手をさせてもらうのは、第8中隊のモーレッド副隊長だ。
モーレッド副隊長は三十代半ばのゴツい筋肉系で、前世のオレとちょっと似ている感じがする。
彼の剣の腕が凄いのはみんな知っているし、ゴリっぽい見た目に反して頭もいい。それに顔に似合わず優しいし、部下に気をつかえるいい上官だ。
モーレッド副隊長は、オレが思うにそれほど性欲は強くない。少年姫士と床を共にするのも、副隊長である自分が少年姫士と行為を持つことで、他の隊員もオレを「利用しやすくなる空気」を作っているんだと思う。
団や隊にもよるけど、少年姫士との行為は「推奨されない」という場合もあるらしいから。
それは、それぞれの団や隊の考えだからオレがどうこういえるものじゃないけど、この隊が「そう」じゃなくて良かったと思う。
だってオレは、騎士のような強くてカッコイイ男に抱かれたくて、この世界に転生させてもらったんだから。
前世では180cm近い高身長で身体もゴツかったオレだけど、この世界では155cmほどで体重は50kgもない。
モーレッド副隊長は、前世のオレと似た感じの体型だ。前世のオレは彼ほど、筋肉モリモリじゃなかったけど。
体格差があるオレとモーレッドさん。体重は確実に2倍以上の差がある。
オレが少年姫士として任務に就く夜は、通称で「姫部屋」と呼ばれる場所で相手を迎える。薄暗く、微かに香を漂わせた部屋だ。
今夜もそれは変わらず、オレは姫部屋のベッドの上で、正面から下半身を抱えられるようにしてモーレッドさんを受け入れている。
時々、顔や首筋に触れてくるヒゲが痛いんだけど、でもこれこそオレが求め続けた快感だ。
「んく……ッ」
彼のたくましいモノがオレを深く貫き、奥へと潜りこんでくる。
「ぁっ、ンァっ!」
激しく揺らされ、喘ぎが溢れてしまう。
太い肉棒で、めいっぱいに広げられた入り口。変に力を入れると裂けてしまいそうなくらいだ。
めちゃくちゃ……きもちいぃ~っ
あまりの快感に、オレのモノもピンコ勃ちしちゃってる。
この世界のオレのは、あまり大きくはない。皮もかぶってるし。
だけどそれが、可愛らしくていいと思う。この美少女のような雰囲気に、極太なのは似合わないだろう。
最大に膨らんでも先端に皮をまとったオレのを、
「ゃんっ! だ、ダメですっ」
モーレッド副隊長の無骨な手がしごいてくる。
オレも気持ち良くしてくれてるんだろう。
「ぁんっ、で、でちゃうっ! やだっ、は、恥ずかしいっ!」
恥ずかしなんてない。むしろ嬉しいですっ!
身体をくねらせながら演技するオレは、副隊長の手に導かれて絞り取られた。
オレは溢れたものを副隊長の腹部に浴びせ、
「はぁ、はぁ、はぁ……」
色っぽい吐息をつく。
オレが放出の快感を得ても、まだ副隊長が達したわけじゃない。彼のは太く硬いまま、オレの中で蠢いている。
激しく揺らされる身体。
「ぁんっ♡」
モーレッドさんの太い指が、左の乳首をこね回す。
オレ、乳首弱いんだよな。
前世ではそうでもなかったけど、この女神様にもらった身体、すんごい乳首の感度が良くて、本当に女の子みたいなんだ。
「ふ、副隊長、ぁっ、ぁんっ……乳首、もっとちくびぃ♡」
こねるだけでなく摘んだりひねったり、モーレッド副隊長がオレを可愛がってくれる。
だけどしばらくして、副隊長の両手がオレの細い腰を固定した。
これはモーレッドさんが達したい証拠だ。
「た、たくさん……ください」
彼がこれまで以上に、激しく腰を動かし始める。
その動きでオレの身体が振り回されるように揺らされていたのは、長い時間じゃない。1分もないくらいだろう。
モーレッド副隊長はうめきと共に、オレの中に快感の証を溢れさせた。
体内に溢れる男の精を、オレは幸福と共に感じる。
幸せだ。
ありがとう女神様。胸が小さいとか思ってごめんなさい。
放出しても、副隊長は大きさを変えなかった。
今日は調子がいいみたい。
「お元気なままです。このままもうすこし、可愛がってほしいです」
オレのおねだりにモーレッド副隊長は、そのまま二回目に突入してくれた。
2
この国では騎士になるためには、ある程度の身分が必要になる。
適当に腕に覚えのあるチンピラが騎士になりたいからといって、なれるわけじゃないってことだ。
騎士になるにはまず、12歳になったら騎士学院に入らなければならない。そこが一番ハードルが高くて、騎士になるには「騎士の家系の生まれ」であることが有利に働く。
騎士学院に入るには、上級騎士以上の者の推薦状が必要になるからだ。
まぁ騎士といっても、コネ社会的な側面もあるってことかな。
オレは上級騎士の家系に生まれ、男児だったことから幼いころより騎士となるべく教育を受けてきた。
「お前は少年姫士に向いている」
父上も早くからそういっていたくらい、オレは女神様のご好意で見た目が女の子っぽいし、やけに色気があるというか男性好きする雰囲気で生まれてきた。
それに何より、前世からの記憶と性格を引き継いているので、男の身体に対して嫌悪感がない。むしろ大好きだ。
騎士は強くあるべき。
それは間違いないだろうけど、この世界では「少年姫士」も騎士を支える立派な騎士という認識で、蔑まれる立場ではない。
少年姫士を目指して努力している者も、たくさんとはいえないが、いることにはいる。
12歳になったオレも騎士学院に入り、そこで少年姫士を目指す道を歩いた。
学院の同期で少年姫士を目指す生徒はオレだけでなく、ノットという美人系の子と、サリーナという美少年系の子もいた。
その中でもオレの容姿は、女神様のおかげもあって一つ抜き出ていたと思う。
騎士学院では、二人一組の「タッグ」と呼ばれるチームで行動することが決められていて、オレとタッグを組んだのはロイドという少年だった。
ロイドは背が高く体格にも恵まれていて、爽やかな雰囲気のいいやつだった。
オレが少年姫士を目指しているのを知っても、
「そうか、お前は可愛いしなれるんじゃなか? オレも応援するよ。一緒にがんばろう」
といってくれて、実際に協力もしてくれた。
タッグは寮でも同室で生活するから、オレは12歳から15歳までの4年間をロイドと共有したといっていいくらいだ。
そんなロイドも、オレと同じヴァドフ騎士団第8中隊の所属だ。どうやらタッグは、同じ隊に配属されることが多いらしい。
騎士は戦いになれば戦場に出ることになるし、気心が知れた相手が近くにいたほうが何かと良い効果が生まれるのかもしれない。
平日の訓練。
少年姫士といっても、騎士なのには変わりない。騎士として最低限の技量は必要だ。
オレも基本的な訓練には参加してるし、そこで落ちこぼれているわけでもない。基礎訓練くらいは普通にこなせる技量はある。
物心ついたことから上級騎士の父上に仕込まれてきたから、前世では筋トレくらいでたいした運動はしていなかったけど、この世界のオレはそれなり剣を扱える。
でも筋力がないから、一番軽くて弱い剣しか扱えないんだけど。
訓練の後。訓練場の陰になっている場所で休憩していると、
「よくやれるよな」
ロイドが話しかけてきた。
何が。
とは聞かなくてもわかる。
少年姫士の任務のことだ。
「どうして?」
オレの問いに、ロイドは困ったような顔をするだけで答えない。
「僕は小さな頃から、少年姫士になるための教育を受けてきたからね」
というか、自分でその道を望んだわけだが。趣味的にね、最高の仕事だと思ったし。
「学院でも、そうなれるように努力してたでしょ? ロイドも応援してくれてたじゃない」
「それは、そうだけど……」
でも実際にオレが少年姫士になり、騎士団員の性処理を担当するのを目の当たりにして、ロイドは複雑な思いをするようになったみたいだ。
オレはこれがしたかったし、満足なんだけど。
だけど友達が「男の性処理係」をやっているというのは、16歳の少年には思うところもあるんだろうな。
「僕のような人間も、騎士団には必要だと思わない?」
「思うよ、それは。少年姫士は、立派な任務だしちゃんとした騎士だ。それは、わかってるけど」
ロイドは一度口籠り、
「……だけど、お前がやらなくてもいいだろ?」
いや、それは違う。
オレが、やりたいんだよ。
このことはロイドにも何度か話したんだけど、彼はオレが「父の希望で少年姫士を目指した」と思っている。
というか、そう思いたいみたいなんだ。
「お前だったら、普通に騎士としてやっていけるだろ」
オレとロイドの剣技に、それほどの差はない。むしろオレのほうが強いくらいだと思う。それはロイドも認めているところだ。
「僕はね、この任務に向いていると思う。嫌じゃないし、父上にいわれたからじゃないよ」
納得していない顔だね、ロイド。
「だからね……」
オレはロイドの耳元に口を寄せ、
「ロイドにも、わたしを可愛がってほしいな」
少年姫士の任務のときのような、女の声で囁いた。
ロイドは顔を赤くして、怒ったような顔をする。
「そういう冗談はやめてくれッ!」
そういい残し、ロイドは走り去った。
ちょっとからかい過ぎたかな。
ごめんね、ロイド。
ロイドがオレに興味を持っているのは、学院のころからわかっていた。
オレは騎士学校に入った当時、ロイドと出会った頃は本当に女の子みたいで、最初ロイドはオレを女の子のように扱ってた。
でも一緒に訓練や学科をこなしていくうちに、彼はだんだんとオレを「仲間」として見てくれるようになった。
見た目は女の子みたいでも、自分と同じ騎士を目指す仲間なんだと、そう認めてくれたんだ。
だけど、それでも。
ふとした瞬間にロイドが、オレを「女として」見ていることに気がついてしまう。
それは、今でもだ。
だからロイドは、オレを説得しようとしている。
少年姫士を辞退して、普通の騎士となるようにと。
でもそんなこと、よほどの事情がないとできないんだけどね。
ロイドはわかってないのかな?
それとも、わかってていってるのかな?
ロイド。オレは「少年姫士」なんだよ。
これを、この場所を目指してきたんだ。
たぶん、この世界に生まれる前からオレは、「少年姫士」になりたかったんだ。
きみにはわからないだろうし、きっとわからないほうがいいんだろうけど。
だけどオレたちは、騎士になった。
ロイドは下級騎士に、オレは少年姫士に。
そうしてオレは、ロイドにも「手がとどく存在」になった。
ロイドにとっては、なってしまったんだろう。
ロイドだって、オレと「しよう」と思えば「できる」立場にあるんだ。それは彼自身がわかっている。
だけどそれが、彼を苦しめているのかもしれない。
そんな気がした。
ダメならダメで仕方ない。諦めばいいし、そもそも望まなければいい。
だけどオレは、ロイドが「手を伸ばせは届く場所」にいる。
ロイドは新米とはいえ騎士だ。
オレは騎士の性欲処理を任務とする存在で、オレに性処理を頼むのは悪いことでもなんでもない。
誰にも非難されないし、オレと「関係を持つ」ことは、ロイドにとってもオレにとっても何も悪いことじゃない。
オレたちは、「そういう立場」になったんだ。
3
騎士の中で「少年姫士」を可愛がりたいと思う人は、半数もいない。
多くても三分の一くらいかな。
それはそうだ。いくら見た目が女の子みたいだからって、少年姫士は男なんだから、男に手を出すくらいなら自分で処理すると思う人がいるのは当たり前だ。
そういう理由もあって、オレに少年姫士として任務が少ない日だって、珍しいことじゃない。
今日オレは、三人を手で導き、二人を口で慰めただけで、それ以降の任務はない。
特に夜は、誰からも指名されていなかった。
だから急に入ってきた夜の任務も、なんの問題もなく受けることができた。
ただ、今夜オレを求めてきた人物が、友達のロイドだったってだけで。
少年姫士の「姫部屋」。
「来てくれたんだね、ロイド。嬉しいよ」
オレは初めて、少年姫士としての夜の姿をロイドにさらした。女性用の身体が透けるような薄い服を着て、下半身には女性の下着をつけている姿をだ。
薄暗い姫部屋では、オレは日の光の下以上に女に見える。顔も身体も、男のそれとは違っているように。
オレは少年姫士となるべくそういう努力をしてきたし、そもそもオレは女神様の力で「女性的な美少年」として誕生しているんだから、完全に女性ではないけど女性に見える男ではあるはずだ。
ロイドの手を引いて、ベッドへと誘う。ロイドはオレに手を取られたまま、ゆっくりとついてくるだけ。
先にロイドをベッドに座らせ、オレも彼に身体をくっつけて座る。
ロイドは動かない。
彼の身体にしなだれかかってしばらく待ってみたけど、なんのアクションもない。
「ねぇ、どうするの? しないの?」
ロイドはまだ16歳になったばかりの少年で、こうして近くで見るとまだ子どもみたいだ。
「僕を……わたしを、可愛がりにきてくれたんじゃないの?」
オレは繋がったままのロイドの手を握り、彼の目を覗きこむ。
怯えと期待。
ロイドの目には、それが混ざり合っていた。
「したくないなら、いいよ。でも、帰ってくれる? ここは、わたしを可愛がってくれる人だけがいていい場所なの」
ロイドだってわかってる。
この部屋は、少年姫士が任務をはたすところだと。
オレが騎士として、任務をする部屋なんだと。
ロイドが激しく息をしだす。
混乱しているような、慌てているような、怖がっているような。
「落ち着いて、ロイド」
ロイドを抱きしめるオレ。
彼は震え、鼓動も速い。
「ねぇ、ロイド。ここにはわたしたちふたりしかいないわ。あの頃と、学院でのわたしたちの部屋と同じ。誰も、わたしたちを見ていない」
ロイドは何度か深呼吸をして、
「わ、わたしって……僕じゃないのか? お前はいつも、自分のことを僕といっていただろ」
ロイドの指摘に、
「僕のほうがいい? だったら、そうするけど」
「そいうことじゃないッ!」
大きく目を見開くロイド。オレはその唇に、
ちゅっ
触れるだけのキスをした。
「落ち着いて。このくらい、嫌じゃないでしょ?」
ロイドは苦しそうな顔で歯ぎしりをして、
「嫌じゃないから……嫌なんだよッ!」
そう、吐き捨てた。
オレはロイドの頭を胸に抱き、
「嫌じゃないなら、ちゃんと抱いて」
その言葉をいい終えると同時に、ロイドがオレを押し倒した。
ベッドに仰向けになり、上になったロイドを見つめる。
少し首をかしげて愛らしく微笑み、オレはまぶたを閉じた。
わかる……よね?
ロイドはわかったようで、
くちゅっ……
オレの唇を自分のそれで塞ぎ、それだけなく舌まで伸ばしてきくる。
オレはロイドの身体に腕をまわし、身体を密着させて彼の唇と舌に応えていく。
湿った音が室内に響く。ロイドがオレの胸に手を当て、なでる。
もっと柔らかな膨らみがあればよかった?
それとも、これがいいの?
ロイドとの初めてのキス。
4年間タッグを組んでいた、友達とのキス。
だけどオレは、それほど特別なものは感じなかった。
それはきっと、オレがロイドに特別な感情を持っていないからだろう。
大切な友達で、大好きな友人。
それに違いはないけど、それ以外の感情的な部分で、ロイドは他の騎士たちと同列だ。
激しく、貪るようなキス。
乱暴で、男の子らしい。
こういうのは嫌いじゃない。
オレもロイドを貪るように、彼の舌を吸った。
長いキスのあと、ロイドが身体を持ち上げてベッドに座る。
股間が大きく盛り上がっているのが、ズボン越しでもわかった。
「大きくしてくれたの? 嬉しいわ」
オレが彼の股間の膨らみをなでると、
「な、なんでそんな……女みたいにッ」
ロイドはオレのジャマはしなかったけど、自分の股間に置かれたオレの手からは目をそらせた。
「だって今のわたしは女だもの。姫なのよ?」
オレは笑顔でロイドの顔を両手で掴み、自分へと顔を向けさせる。
彼の目をじっと見ると、ロイドは目をそらせた。
「ねぇ、ロイド。服、脱ごうよ」
オレは率先して服と下着を脱ぎ、裸になる。
呆然とオレを見つめるロイドに見せつけるように、彼の前に立って大人しいままの股間を置いた。
オレのは、正直いって小さい。
小さくていいんだけど。オレが男として求められることは全くないから。
固まったまま、動かないロイド。オレは彼の前に膝をつき、服のボタンを外していく。されるがままの彼は、すぐに上半身を裸にされた。
ロイドの身体は、正直見慣れている。一緒にお風呂に入ったことも、数え切れないほどある。
「ズボンも、脱がせてほしいの?」
ロイドはハッとなったように、
「じ、自分でできるッ」
はい、いい子ですね。
でも、見られていると恥ずかしいかな。オレは後ろを向いて、彼が裸になるのを待った。
「もういい?」
「あっ、あぁ」
なんだろう? 男としての意地かな?
ベッドで立ち上がったままのロイドは、大きくなっているモノを隠すことなくオレに突きつけてきた。
「こんなにしてるロイド、はじめてみる」
「い、今のお前は、女なんだろ」
女になら、こうなってても恥ずかしくないってこと?
「うん、嬉しい」
オレはロイドの正面で膝まづき、硬くなってる肉に手をそえる。
そして、
くちゅっ……
彼の先端を自分の口の中に迎えた。
ロイドは驚いたように腰を跳ねさせたけど、それだけでじっとしている。
他の騎士たちと同じ。ロイドのモノは、特別な味はしなかった。
だけどオレは、胸が苦しくなるほどの何かを感じた。それが何かまでは、わからなかったけど。
ちゅくっ
まだ口に入れただけなのに、ロイドは味を滲ませていた。
この様子だと、すぐに出ちゃうだろうな。
ぬちょ、ねるぬろぉ~っ
ロイドの先端を舌で転がす。上も下も、全体を舌でなでてあげる。
腰が引けていくロイド。出ちゃいそうなんだろうな。
オレは一度彼を外に出し、
「いいの。飲ませて」
そうつげて、すぐにしゃぶりついた。
彼の硬い肉をしゃぶり、先に舌を這わせる。
根元のやわらかな袋をなでると、ロイドは一瞬逃げようとする動きを見せたあと、
ドビュッ! びゅっ、びゅくびゅるっ
彼の精を、オレの口の中へと溢れさせた。
4
ドロリと濃厚な、若い子の味。
おれはロイドの肉をしゃぶりながら、濃厚な汁を飲み込んでいく。
さすがに若いだけあって、一度出したくらいではロイドのモノは治まってくれないみたい。
汁をすすってお肉を外に出しても、彼のは口に入れる前と何も変わらない状態だった。
「ロイドは初めてだよね?」
これで終わりじゃない、ここからが本番。おれの言葉の意味をロイドは理解できたのか、無言でうなずいた。
「だったら、後ろからのほうがいいかな」
オレは前かがみに四つん這いになって、ロイドにお尻を差し出す。
「入れる前に、ちゃんとほぐしてね。できないなら、自分でやるけど」
ロイドがオレの入り口を、じっと見つめているのを感じる。
「恥ずかしいんだけど?」
ごめんね、ロイド。本当は気持ちいよ。もっと見て欲しいと思ってるけど、さすがにそんなこといえない。
ロイドが膝を折り、オレの入り口へと顔を寄せてくる。
ほぐしてといったからだろうけど、何するつもりだろ?
両腕はベッドに置いて身体を支えるのに使い、顔だけを近づけてくる。
さすがに、何をしようとしてるかわかった。
「汚いよ?」
お口でほぐしてくれるつもりなの? 嬉しいけど、そんなことしてれくる人、ほとんどいないよ?
「汚くない。それに少年姫士は、する前には身体を清めるんだろ?」
「うん、そうだよ。そう……だね、ちゃんときれいにしてあるよ。ロイドに可愛がってもらえるのが楽しみで、ドキドキしながら身体を清めたんだよ」
ウソでないけど、本当でもない。
今夜の相手がロイドだと知っても、オレは特別な感情を抱かなかった。
いつも通りの準備をして、いつも通りの心構えをした。
それだけ。
「それじゃあ、お願いしちゃうね。楽しみだな」
そっと、オレのお尻に顔を埋め、底の穴に舌を伸ばしてくるロイド。
彼の滑りがオレに与えられ、恐る恐るといった感じのわずかな蠢きがオレを攻める。
「いやなら、いいんだよ?」
「嫌じゃない。お前こそ、気持ち悪くないのか?」
「ううん。いいよ。ロイドに舐めてもらえて、嬉しい」
「だったら……」
再びロイドが、オレの入り口に唇をつけ、
ちゅくぴちょちゅくちゅぴっ
激しく唇と舌を使ってきた。
「ぁん♡ い、いいよ、きもちいい……よ?」
貪るようにオレの入り口をしゃぶるロイド。それだけでなく、舌を埋めようとまでしてくる。
オレは、自分のモノが大きくなっているのを感じた。
ロイドに舐めらながら、そっと自分のモノを弄る。
唾液が……ロイドの唾液が中に入ってくる。
これだけ緩めてもらえたら、
「もういいよ、ロイド。もう……できるよ」
オレの言葉に、ロイドが上半身を持ち上げる。
「大丈夫だから、思い切り入れてね」
お尻を突き上げるオレに、
「お前の顔を見ながら、したいんだけど」
ロイドがいったきた。オレは身体を起こしてロイドを向き、
「前からがいいの? 初めてでしょ? ちょっと難しいよ」
ロイドは首を横に振って、
「お前の顔を見ていたい」
はっきりと、そういった。
正直なところ、オレには彼の気持ちがわからなかった。
それは多分、本質的なところで彼が男で、オレが女だからだと思う。
女のオレには、男のロイドの気持ちが理解できない。
「うん、わかった」
オレは彼が望む通り、正面からの挿入を迎える体制をとる。
ベッドで仰向けになって大きく股を開き、両腕をそれぞれ左右の膝裏に置くようにして脚を持ち上げ、お尻を上げて入り口を露出させる格好だ。
この姿、初めてのロイドには刺激が強くないかな。
「きて、ロイド」
ロイドがオレの正面に身体を置いて、開いた股の間に下半身を入れてくる。
「わたしあまり動けないから、位置は自分でお願いね」
いわれた通り、挿入ポイントを探っていく。彼の先端がオレのお尻の谷間を行き来して、くすぐったい。
だけど、
……くにっ
ポイントを見つけたロイドの動きが止まり、オレの入り口が彼の先端を捕まえた。
「押しこんで……大丈夫だから」
グイッ
強く押しつけられる。オレの入り口は自分からロイドを飲み込むように広がって、先端は軽々と埋まった。
「痛く……ないのか?」
オレは笑ってしまった。
声は出さなかったけど、顔は笑みを浮かべただろう。
「大丈夫だよ? 心配してくれて、ありがとう」
ロイドのくらいじゃ、なんともないよ。
もっと大きくて太いのを、何度も飲み込んでいる場所なんだよ?
「入ってるよ。わかる?」
ロイドは、何も答えなかった。
「わたしの中に入ってるの、わかる?」
オレはもう一度聞いてやった。
「わ、わかる……」
何、顔赤くしてるの? 可愛いね。
「気持ちいい? わたしの中」
「わ、わからないよ。お前は、その……いいのか?」
オレは意識して可愛く微笑んで、
「もっと奥まで来てくれないと、気持ちよくなれないよ?」
ロイドは何かいおうとするように唇を動かしたけど、言葉にして何も聞こえてこなかった。もしかしたら自分の中だけで、オレに何かをいってくれたのかもしれないけど。
ぐっ……ぐいぃッ
腰を動かし、オレの奥へと向かってくるロイド。
「ぁ……ロ、イドぉっ」
まるっきり演技というわけでもない。自然と彼の名を口にしていた。
深く、奥まで。
少なくともロイドにとっては、ここが最深部なんだろう。
オレの名を呼びながら、激しく腰を動かすロイド。
初めてなのに正面からなんて、動きにくいでしょ?
そう思うけど、ロイドは無心に腰を動かして、オレを突き刺してくる。
苦しそうな顔。
辛そうな顔。
でも、少しは気持ちいいでしょ?
オレを見つめて腰を動かすロイドに、オレは笑みを返した。
「きもち、いいよ?」
そうつげて、演技だけど喘ぎをプレゼントする。
喜んでくれればいいけど。
そう思うけど、よくわからない。
男を求める男の気持ちはわからなくないけど、ロイドは違う。
彼が求めてるのはオレで、他の男じゃない。
きっとロイドは、オレよりも女性らしくて美人な少年姫士が目の前にいたとしても、全く興味を示さないと思う。
そのくらいには、オレはロイドという友達のことを理解している。
もう、限界だね。
男がイキそうな顔は、わかるよ。
「ロイド」
オレの声に、彼はかすかに微笑んだ。
そして深く突き刺して、
ドプッ、びゅくびゅるびゅくン……ッ!
オレの奥へと、熱いものを注ぎ込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
オレとロイドが、同じように息を整える。
オレを見下ろすロイド。こいつ、こんなに幼かったっけ?
本当にまだ少年だ。16歳なんだから、当たり前か。
オレなんか前世で30年、今世で16年だからな。
オレの中で、小さくなっていくロイド。やがて自然に、オレたちの結合が解かれる。
ロイドがオレの腰から手を離し、身体も離して距離をとる。
オレと完全に離れると、ロイドは両手で顔を覆って泣き始めた。
「泣かないで、ロイド」
彼の腕に手を置くオレ。ロイドは腕を振ってそれを跳ね除け、
「俺はお前と、こんなことしたいわけじゃなかったんだッ!」
悲鳴のような声だった。
自分で自分がわからない。なぜこんなことをしてしまったのか、理解ができない。
そんな気持ちなんだろうと、想像はできた。
オレだってきみに、こんな声を出させたくなかったよ。
「うん、わかってる」
この少年は、オレと肩を並べて戦いたかったんだろう。
騎士として、国のため国民のために。
だけどオレは違ったんだ。
オレは最初から、こうして強くてカッコイイ男性に抱かれたかっただけ。
ロイド……きみのような素敵な騎士と交わりたかっただけの、そんなやつなんだ。
「立派な騎士様になってね、ロイド」
ロイドは急いで着替えると、オレを一瞥して無言で部屋を出て行った。
あの目。
あの顔。
ロイドとはこれが最初で最後になる、オレにはそれがわかった。
油断すると溢れそうになるロイドのプレゼントを、オレは力を込めて体内に留める。
ロイドとは4年間、一緒の部屋で暮らしたんだ。
オレの青春時代は、ロイドとともにあったんだ。
剣を交え、励ましあい。同じ目標へと、騎士への道を一緒に走ってきたんだ。
涙が溢れる。
オレだってロイドのこと、友達だと思ってたよ。
泣きたいわけじゃないけど、オレは今、この世界での青春時代が終わったことを理解した。
そうだ。
オレはこの瞬間に、本物の少年姫士になったんだ。
EX
第一章を読み終わり、おれは本を閉じた。
「最初はまだシリアス路線なんだけど、話が進むごとにだんだんアレな展開になっていくところがまたいいのよっ! とくに騎士団長と恋人のふりして敵国に潜入したときに、敵国の王子に捕まって監禁されてたときの王子とのロマンスがまた最高にアレなのよッ」
と部長さんはいってたけど、最初でもう十分アレだと思いますけど?
というか監禁されてロマンスって、意味がわからない。
これ、咲久耶お姉さまが書いたんだよな?
車坂さんは、これを読んで感動したの? 泣けたっていってたけど、とりあえずここまでに泣ける要素はない。
おれにわかったのは、おれはたとえお話の中でもむさいオッさんが相手なのは嫌だなということと、これが書けるお姉さまは、おれたち三兄弟の従姉で間違いないということだ。
表紙を見る。
なんでこの主人公の元おっさん、こんなにロリっ娘みたいな顔で描かれてるだろ? さすがに可愛すぎだろ。完全に女の子じゃん。あと絵だと16歳には見えない。もっと幼く見える。
いろいろとヤバイなこの本。
17歳の親戚のお姉ちゃんが書いた話だというところが、一番ヤバイけど。
とりあえずオレは、これ以上この本を読み進める勇気が持てなかった。
本をパラパラとめくって、表紙の元おっさんの男の娘が肉ダルマみたいなヤツに襲われてる感じのイラストを見て、挫けた。
せっかくのサイン本だし、フリマサイトに出品してみようかと思ったけど、お姉さまは余計なことにサインの隣に、
「いとこのコウきゅんへ おねえさまより♡」
と書いていた。
いや、ホントに余計なことしてくれるなあの人。
これじゃ、売りに出せないじゃないか……。
本棚に置くのも嫌なので、机の一番下の引き出しに放り込んで、オレは勉強することにした。
おれ、むさいオッさんはイヤなんだってッ!
[End]
オレは子どもの頃から、自分はオトコだけどオンナだと感じていた。
何をいってるか自分でもわからないが、肉体的に男でそれを拒否するわけじゃないけど、気持ち的にはオンナとして男性に可愛がってほしいという欲求に苦しんでいた。
簡単にいえば、男の身体のまま男性に愛してほしいと、そんな欲求に支配されていたわけだ。
といってもおれは、見た目はとても美男子じゃないし、趣味で筋トレしてたこともあって身体がゴツい系だった。
それに男性の趣味が「強い男」というもので、格闘家とかスポーツ選手とか、そういう普段から肉体を鍛えるている男が好きだった。
でも、そんな男性たちが「ブサいゴツ男」に興味を持ってくれるわけもなく、オレは30歳になっても男相手も女相手も童貞で、このまま寂しく年を取っていくだけなんだろうな……と思っていたんだけど。
オレが30歳になって一ヶ月ほど。
気がついたときオレは、真っ白な空間で美女と対面していた。
夢かな?
普通に考えればそうなんだけど、夢にしては意識がはっきりしている。
「もうしわけありません。妹の手違いで、あなたを死なせてしまいました」
困ったような顔をする美女。美人だけど胸が小さいな。そう思った瞬間。
「貧乳といったら地獄に落とす」
美女がすごい憤怒の顔をした。
「す、すみませんっ」
オレが謝罪すると、
「わかればよろしいのです。わかれば」
美女は表情を戻して微笑した。
「はい……すみませんでした」
こっわ、なにこれ?
「それでですね。あー、自己紹介しましょうか、わたくしは女神アルフレイド。女神シノリアの姉です」
そうですか。
という以外、何と感想を持てばいいのやら。
だって知らない名前だし。
「ピンときてませんね」
「はい、ごめんなさい」
「まぁ、いいでしょう。それでですね、あなたはまだ死ぬ定めになかったのですが、うちの可愛い妹がちょいやらかしましてね、あなたを含め約11万人を死なせてしまったのです」
約11万人って……めちゃくちゃ多いな。
何したんだその妹さん。
というかオレ、本当に死んだの?
まぁ……でも、そこまで未練はないな。
どうせ、寂しい一生を過ごすだけだったろうし。家族もいないしな。
「ですので、元の世界にでも別の異世界にでも、適当な世界に転生さえてあげようと思いまして。ついでに多少の優遇もできますよ?」
……はい?
「元の世界に生まれ変われるのですか?」
「できますよ。ただあの世界は、これからちょい大変なことになるので、オススメはしません。妹が……ね?」
なんだかわからないけど、元の世界はやめたほうがいいかも。妹さんが……ね。
「でしたら、比較的平和な世界に生まれ変わらせてください」
「いいですよ。何かこんな感じの世界がいいとかありますか? それに、あまり多くを与えることはできませんが、少しは優遇してあげられますから」
そ、そうだな。だったら、
「女性的な美少年になって、騎士様とかそういうカッコ強いイケメンに弄ばれたいですッ! 性的にッ」
オレは幼い頃からの夢を口にした。
女神様は無表情で数秒間固まったあと、にっこり微笑んで、
「わかりました。あたなのそのアレな感じの願い、叶えましょう」
やったーっ!
すげぇ、マジで!?
こうして女神様に異世界転生をさせてもらったオレは、願い通り女の子みたいな美少年として騎士の家に生まれ、「少年姫士(リノール)」を目指すことになった。
少年姫士というのは、女性の立ち入りが厳禁となっている騎士団において、団員の性的な相手を務める職務にある少年騎士のことで、要するに「騎士様たちの性処理係」を任務にする騎士のことだ。
女神様はオレの「アレな感じの願い」が、ちゃんと叶うような世界に転生させてくれたらしい。
ありがとう女神様っ!
◆
12歳から15歳までの4年間を騎士学院で過ごしたオレは、学院を卒業して騎士となり、「少年姫士」としてヴァドフ騎士団第8中隊の所属となった。
少年姫士は階級的には下から三番目の中級騎士扱いで、年齢の割に出世が速いエリートではある。
騎士学院を卒業したばかりの新米としては、一番上の階級と思ってくれていい。
例外もあるけど、それは王族に連なる者か高位貴族のおぼっちゃまという特殊な立場の者ばかりで、騎士階級の家の子息なら新米で中級騎士というのは、上位5%に入るエリート騎士だ。
少年姫士はエリート騎士。
それは少年姫士が騎士団にとって重要な役割を持っている証明であり、大切な任務であることを示している。
男ばかりの中で「女性の役」をになうことができる者は貴重だ。男にも関わらず、ちゃんと「女」と認識されるほどの容姿の者は。
オレが所属するヴァドフ騎士団第8中隊は、東の国境を守るフレイド砦で任務についている。
だからオレも、今はフレイド砦で生活している。
現在この国は、他国と交戦状態にはない。特に東の隣国とは同盟関係にあって、オレたちヴァドフ騎士団第8中隊は緊張感のある状況に置かれているわけじゃなく、のんびりとしたものだった。
もちろん日々の訓練を欠かしたりはしないが、でもそのくらいだ。
夜になるとオレは、少年姫士としての任務に就くことが多い。
とはいえ、毎日ではないけど。
それに一晩で相手をするのは、多くてふたりで普段はひとりだ。
少年姫士には美女系もいるけど、オレは「ボーイッシュな美少女系」だと思う。美人というより可愛い系だ。
この世界でのオレは女神様にそうお願いしたからだろうけど、顔は完全に美少女だし、身体つきは細く肌もなめらかで、腰つきもなんだか女性っぽくある。
声も少年というよりは少女で、前世での「理想の姿」みたいにしてもらえた。
女神様、ホント女神ッ!
今夜オレがお相手をさせてもらうのは、第8中隊のモーレッド副隊長だ。
モーレッド副隊長は三十代半ばのゴツい筋肉系で、前世のオレとちょっと似ている感じがする。
彼の剣の腕が凄いのはみんな知っているし、ゴリっぽい見た目に反して頭もいい。それに顔に似合わず優しいし、部下に気をつかえるいい上官だ。
モーレッド副隊長は、オレが思うにそれほど性欲は強くない。少年姫士と床を共にするのも、副隊長である自分が少年姫士と行為を持つことで、他の隊員もオレを「利用しやすくなる空気」を作っているんだと思う。
団や隊にもよるけど、少年姫士との行為は「推奨されない」という場合もあるらしいから。
それは、それぞれの団や隊の考えだからオレがどうこういえるものじゃないけど、この隊が「そう」じゃなくて良かったと思う。
だってオレは、騎士のような強くてカッコイイ男に抱かれたくて、この世界に転生させてもらったんだから。
前世では180cm近い高身長で身体もゴツかったオレだけど、この世界では155cmほどで体重は50kgもない。
モーレッド副隊長は、前世のオレと似た感じの体型だ。前世のオレは彼ほど、筋肉モリモリじゃなかったけど。
体格差があるオレとモーレッドさん。体重は確実に2倍以上の差がある。
オレが少年姫士として任務に就く夜は、通称で「姫部屋」と呼ばれる場所で相手を迎える。薄暗く、微かに香を漂わせた部屋だ。
今夜もそれは変わらず、オレは姫部屋のベッドの上で、正面から下半身を抱えられるようにしてモーレッドさんを受け入れている。
時々、顔や首筋に触れてくるヒゲが痛いんだけど、でもこれこそオレが求め続けた快感だ。
「んく……ッ」
彼のたくましいモノがオレを深く貫き、奥へと潜りこんでくる。
「ぁっ、ンァっ!」
激しく揺らされ、喘ぎが溢れてしまう。
太い肉棒で、めいっぱいに広げられた入り口。変に力を入れると裂けてしまいそうなくらいだ。
めちゃくちゃ……きもちいぃ~っ
あまりの快感に、オレのモノもピンコ勃ちしちゃってる。
この世界のオレのは、あまり大きくはない。皮もかぶってるし。
だけどそれが、可愛らしくていいと思う。この美少女のような雰囲気に、極太なのは似合わないだろう。
最大に膨らんでも先端に皮をまとったオレのを、
「ゃんっ! だ、ダメですっ」
モーレッド副隊長の無骨な手がしごいてくる。
オレも気持ち良くしてくれてるんだろう。
「ぁんっ、で、でちゃうっ! やだっ、は、恥ずかしいっ!」
恥ずかしなんてない。むしろ嬉しいですっ!
身体をくねらせながら演技するオレは、副隊長の手に導かれて絞り取られた。
オレは溢れたものを副隊長の腹部に浴びせ、
「はぁ、はぁ、はぁ……」
色っぽい吐息をつく。
オレが放出の快感を得ても、まだ副隊長が達したわけじゃない。彼のは太く硬いまま、オレの中で蠢いている。
激しく揺らされる身体。
「ぁんっ♡」
モーレッドさんの太い指が、左の乳首をこね回す。
オレ、乳首弱いんだよな。
前世ではそうでもなかったけど、この女神様にもらった身体、すんごい乳首の感度が良くて、本当に女の子みたいなんだ。
「ふ、副隊長、ぁっ、ぁんっ……乳首、もっとちくびぃ♡」
こねるだけでなく摘んだりひねったり、モーレッド副隊長がオレを可愛がってくれる。
だけどしばらくして、副隊長の両手がオレの細い腰を固定した。
これはモーレッドさんが達したい証拠だ。
「た、たくさん……ください」
彼がこれまで以上に、激しく腰を動かし始める。
その動きでオレの身体が振り回されるように揺らされていたのは、長い時間じゃない。1分もないくらいだろう。
モーレッド副隊長はうめきと共に、オレの中に快感の証を溢れさせた。
体内に溢れる男の精を、オレは幸福と共に感じる。
幸せだ。
ありがとう女神様。胸が小さいとか思ってごめんなさい。
放出しても、副隊長は大きさを変えなかった。
今日は調子がいいみたい。
「お元気なままです。このままもうすこし、可愛がってほしいです」
オレのおねだりにモーレッド副隊長は、そのまま二回目に突入してくれた。
2
この国では騎士になるためには、ある程度の身分が必要になる。
適当に腕に覚えのあるチンピラが騎士になりたいからといって、なれるわけじゃないってことだ。
騎士になるにはまず、12歳になったら騎士学院に入らなければならない。そこが一番ハードルが高くて、騎士になるには「騎士の家系の生まれ」であることが有利に働く。
騎士学院に入るには、上級騎士以上の者の推薦状が必要になるからだ。
まぁ騎士といっても、コネ社会的な側面もあるってことかな。
オレは上級騎士の家系に生まれ、男児だったことから幼いころより騎士となるべく教育を受けてきた。
「お前は少年姫士に向いている」
父上も早くからそういっていたくらい、オレは女神様のご好意で見た目が女の子っぽいし、やけに色気があるというか男性好きする雰囲気で生まれてきた。
それに何より、前世からの記憶と性格を引き継いているので、男の身体に対して嫌悪感がない。むしろ大好きだ。
騎士は強くあるべき。
それは間違いないだろうけど、この世界では「少年姫士」も騎士を支える立派な騎士という認識で、蔑まれる立場ではない。
少年姫士を目指して努力している者も、たくさんとはいえないが、いることにはいる。
12歳になったオレも騎士学院に入り、そこで少年姫士を目指す道を歩いた。
学院の同期で少年姫士を目指す生徒はオレだけでなく、ノットという美人系の子と、サリーナという美少年系の子もいた。
その中でもオレの容姿は、女神様のおかげもあって一つ抜き出ていたと思う。
騎士学院では、二人一組の「タッグ」と呼ばれるチームで行動することが決められていて、オレとタッグを組んだのはロイドという少年だった。
ロイドは背が高く体格にも恵まれていて、爽やかな雰囲気のいいやつだった。
オレが少年姫士を目指しているのを知っても、
「そうか、お前は可愛いしなれるんじゃなか? オレも応援するよ。一緒にがんばろう」
といってくれて、実際に協力もしてくれた。
タッグは寮でも同室で生活するから、オレは12歳から15歳までの4年間をロイドと共有したといっていいくらいだ。
そんなロイドも、オレと同じヴァドフ騎士団第8中隊の所属だ。どうやらタッグは、同じ隊に配属されることが多いらしい。
騎士は戦いになれば戦場に出ることになるし、気心が知れた相手が近くにいたほうが何かと良い効果が生まれるのかもしれない。
平日の訓練。
少年姫士といっても、騎士なのには変わりない。騎士として最低限の技量は必要だ。
オレも基本的な訓練には参加してるし、そこで落ちこぼれているわけでもない。基礎訓練くらいは普通にこなせる技量はある。
物心ついたことから上級騎士の父上に仕込まれてきたから、前世では筋トレくらいでたいした運動はしていなかったけど、この世界のオレはそれなり剣を扱える。
でも筋力がないから、一番軽くて弱い剣しか扱えないんだけど。
訓練の後。訓練場の陰になっている場所で休憩していると、
「よくやれるよな」
ロイドが話しかけてきた。
何が。
とは聞かなくてもわかる。
少年姫士の任務のことだ。
「どうして?」
オレの問いに、ロイドは困ったような顔をするだけで答えない。
「僕は小さな頃から、少年姫士になるための教育を受けてきたからね」
というか、自分でその道を望んだわけだが。趣味的にね、最高の仕事だと思ったし。
「学院でも、そうなれるように努力してたでしょ? ロイドも応援してくれてたじゃない」
「それは、そうだけど……」
でも実際にオレが少年姫士になり、騎士団員の性処理を担当するのを目の当たりにして、ロイドは複雑な思いをするようになったみたいだ。
オレはこれがしたかったし、満足なんだけど。
だけど友達が「男の性処理係」をやっているというのは、16歳の少年には思うところもあるんだろうな。
「僕のような人間も、騎士団には必要だと思わない?」
「思うよ、それは。少年姫士は、立派な任務だしちゃんとした騎士だ。それは、わかってるけど」
ロイドは一度口籠り、
「……だけど、お前がやらなくてもいいだろ?」
いや、それは違う。
オレが、やりたいんだよ。
このことはロイドにも何度か話したんだけど、彼はオレが「父の希望で少年姫士を目指した」と思っている。
というか、そう思いたいみたいなんだ。
「お前だったら、普通に騎士としてやっていけるだろ」
オレとロイドの剣技に、それほどの差はない。むしろオレのほうが強いくらいだと思う。それはロイドも認めているところだ。
「僕はね、この任務に向いていると思う。嫌じゃないし、父上にいわれたからじゃないよ」
納得していない顔だね、ロイド。
「だからね……」
オレはロイドの耳元に口を寄せ、
「ロイドにも、わたしを可愛がってほしいな」
少年姫士の任務のときのような、女の声で囁いた。
ロイドは顔を赤くして、怒ったような顔をする。
「そういう冗談はやめてくれッ!」
そういい残し、ロイドは走り去った。
ちょっとからかい過ぎたかな。
ごめんね、ロイド。
ロイドがオレに興味を持っているのは、学院のころからわかっていた。
オレは騎士学校に入った当時、ロイドと出会った頃は本当に女の子みたいで、最初ロイドはオレを女の子のように扱ってた。
でも一緒に訓練や学科をこなしていくうちに、彼はだんだんとオレを「仲間」として見てくれるようになった。
見た目は女の子みたいでも、自分と同じ騎士を目指す仲間なんだと、そう認めてくれたんだ。
だけど、それでも。
ふとした瞬間にロイドが、オレを「女として」見ていることに気がついてしまう。
それは、今でもだ。
だからロイドは、オレを説得しようとしている。
少年姫士を辞退して、普通の騎士となるようにと。
でもそんなこと、よほどの事情がないとできないんだけどね。
ロイドはわかってないのかな?
それとも、わかってていってるのかな?
ロイド。オレは「少年姫士」なんだよ。
これを、この場所を目指してきたんだ。
たぶん、この世界に生まれる前からオレは、「少年姫士」になりたかったんだ。
きみにはわからないだろうし、きっとわからないほうがいいんだろうけど。
だけどオレたちは、騎士になった。
ロイドは下級騎士に、オレは少年姫士に。
そうしてオレは、ロイドにも「手がとどく存在」になった。
ロイドにとっては、なってしまったんだろう。
ロイドだって、オレと「しよう」と思えば「できる」立場にあるんだ。それは彼自身がわかっている。
だけどそれが、彼を苦しめているのかもしれない。
そんな気がした。
ダメならダメで仕方ない。諦めばいいし、そもそも望まなければいい。
だけどオレは、ロイドが「手を伸ばせは届く場所」にいる。
ロイドは新米とはいえ騎士だ。
オレは騎士の性欲処理を任務とする存在で、オレに性処理を頼むのは悪いことでもなんでもない。
誰にも非難されないし、オレと「関係を持つ」ことは、ロイドにとってもオレにとっても何も悪いことじゃない。
オレたちは、「そういう立場」になったんだ。
3
騎士の中で「少年姫士」を可愛がりたいと思う人は、半数もいない。
多くても三分の一くらいかな。
それはそうだ。いくら見た目が女の子みたいだからって、少年姫士は男なんだから、男に手を出すくらいなら自分で処理すると思う人がいるのは当たり前だ。
そういう理由もあって、オレに少年姫士として任務が少ない日だって、珍しいことじゃない。
今日オレは、三人を手で導き、二人を口で慰めただけで、それ以降の任務はない。
特に夜は、誰からも指名されていなかった。
だから急に入ってきた夜の任務も、なんの問題もなく受けることができた。
ただ、今夜オレを求めてきた人物が、友達のロイドだったってだけで。
少年姫士の「姫部屋」。
「来てくれたんだね、ロイド。嬉しいよ」
オレは初めて、少年姫士としての夜の姿をロイドにさらした。女性用の身体が透けるような薄い服を着て、下半身には女性の下着をつけている姿をだ。
薄暗い姫部屋では、オレは日の光の下以上に女に見える。顔も身体も、男のそれとは違っているように。
オレは少年姫士となるべくそういう努力をしてきたし、そもそもオレは女神様の力で「女性的な美少年」として誕生しているんだから、完全に女性ではないけど女性に見える男ではあるはずだ。
ロイドの手を引いて、ベッドへと誘う。ロイドはオレに手を取られたまま、ゆっくりとついてくるだけ。
先にロイドをベッドに座らせ、オレも彼に身体をくっつけて座る。
ロイドは動かない。
彼の身体にしなだれかかってしばらく待ってみたけど、なんのアクションもない。
「ねぇ、どうするの? しないの?」
ロイドはまだ16歳になったばかりの少年で、こうして近くで見るとまだ子どもみたいだ。
「僕を……わたしを、可愛がりにきてくれたんじゃないの?」
オレは繋がったままのロイドの手を握り、彼の目を覗きこむ。
怯えと期待。
ロイドの目には、それが混ざり合っていた。
「したくないなら、いいよ。でも、帰ってくれる? ここは、わたしを可愛がってくれる人だけがいていい場所なの」
ロイドだってわかってる。
この部屋は、少年姫士が任務をはたすところだと。
オレが騎士として、任務をする部屋なんだと。
ロイドが激しく息をしだす。
混乱しているような、慌てているような、怖がっているような。
「落ち着いて、ロイド」
ロイドを抱きしめるオレ。
彼は震え、鼓動も速い。
「ねぇ、ロイド。ここにはわたしたちふたりしかいないわ。あの頃と、学院でのわたしたちの部屋と同じ。誰も、わたしたちを見ていない」
ロイドは何度か深呼吸をして、
「わ、わたしって……僕じゃないのか? お前はいつも、自分のことを僕といっていただろ」
ロイドの指摘に、
「僕のほうがいい? だったら、そうするけど」
「そいうことじゃないッ!」
大きく目を見開くロイド。オレはその唇に、
ちゅっ
触れるだけのキスをした。
「落ち着いて。このくらい、嫌じゃないでしょ?」
ロイドは苦しそうな顔で歯ぎしりをして、
「嫌じゃないから……嫌なんだよッ!」
そう、吐き捨てた。
オレはロイドの頭を胸に抱き、
「嫌じゃないなら、ちゃんと抱いて」
その言葉をいい終えると同時に、ロイドがオレを押し倒した。
ベッドに仰向けになり、上になったロイドを見つめる。
少し首をかしげて愛らしく微笑み、オレはまぶたを閉じた。
わかる……よね?
ロイドはわかったようで、
くちゅっ……
オレの唇を自分のそれで塞ぎ、それだけなく舌まで伸ばしてきくる。
オレはロイドの身体に腕をまわし、身体を密着させて彼の唇と舌に応えていく。
湿った音が室内に響く。ロイドがオレの胸に手を当て、なでる。
もっと柔らかな膨らみがあればよかった?
それとも、これがいいの?
ロイドとの初めてのキス。
4年間タッグを組んでいた、友達とのキス。
だけどオレは、それほど特別なものは感じなかった。
それはきっと、オレがロイドに特別な感情を持っていないからだろう。
大切な友達で、大好きな友人。
それに違いはないけど、それ以外の感情的な部分で、ロイドは他の騎士たちと同列だ。
激しく、貪るようなキス。
乱暴で、男の子らしい。
こういうのは嫌いじゃない。
オレもロイドを貪るように、彼の舌を吸った。
長いキスのあと、ロイドが身体を持ち上げてベッドに座る。
股間が大きく盛り上がっているのが、ズボン越しでもわかった。
「大きくしてくれたの? 嬉しいわ」
オレが彼の股間の膨らみをなでると、
「な、なんでそんな……女みたいにッ」
ロイドはオレのジャマはしなかったけど、自分の股間に置かれたオレの手からは目をそらせた。
「だって今のわたしは女だもの。姫なのよ?」
オレは笑顔でロイドの顔を両手で掴み、自分へと顔を向けさせる。
彼の目をじっと見ると、ロイドは目をそらせた。
「ねぇ、ロイド。服、脱ごうよ」
オレは率先して服と下着を脱ぎ、裸になる。
呆然とオレを見つめるロイドに見せつけるように、彼の前に立って大人しいままの股間を置いた。
オレのは、正直いって小さい。
小さくていいんだけど。オレが男として求められることは全くないから。
固まったまま、動かないロイド。オレは彼の前に膝をつき、服のボタンを外していく。されるがままの彼は、すぐに上半身を裸にされた。
ロイドの身体は、正直見慣れている。一緒にお風呂に入ったことも、数え切れないほどある。
「ズボンも、脱がせてほしいの?」
ロイドはハッとなったように、
「じ、自分でできるッ」
はい、いい子ですね。
でも、見られていると恥ずかしいかな。オレは後ろを向いて、彼が裸になるのを待った。
「もういい?」
「あっ、あぁ」
なんだろう? 男としての意地かな?
ベッドで立ち上がったままのロイドは、大きくなっているモノを隠すことなくオレに突きつけてきた。
「こんなにしてるロイド、はじめてみる」
「い、今のお前は、女なんだろ」
女になら、こうなってても恥ずかしくないってこと?
「うん、嬉しい」
オレはロイドの正面で膝まづき、硬くなってる肉に手をそえる。
そして、
くちゅっ……
彼の先端を自分の口の中に迎えた。
ロイドは驚いたように腰を跳ねさせたけど、それだけでじっとしている。
他の騎士たちと同じ。ロイドのモノは、特別な味はしなかった。
だけどオレは、胸が苦しくなるほどの何かを感じた。それが何かまでは、わからなかったけど。
ちゅくっ
まだ口に入れただけなのに、ロイドは味を滲ませていた。
この様子だと、すぐに出ちゃうだろうな。
ぬちょ、ねるぬろぉ~っ
ロイドの先端を舌で転がす。上も下も、全体を舌でなでてあげる。
腰が引けていくロイド。出ちゃいそうなんだろうな。
オレは一度彼を外に出し、
「いいの。飲ませて」
そうつげて、すぐにしゃぶりついた。
彼の硬い肉をしゃぶり、先に舌を這わせる。
根元のやわらかな袋をなでると、ロイドは一瞬逃げようとする動きを見せたあと、
ドビュッ! びゅっ、びゅくびゅるっ
彼の精を、オレの口の中へと溢れさせた。
4
ドロリと濃厚な、若い子の味。
おれはロイドの肉をしゃぶりながら、濃厚な汁を飲み込んでいく。
さすがに若いだけあって、一度出したくらいではロイドのモノは治まってくれないみたい。
汁をすすってお肉を外に出しても、彼のは口に入れる前と何も変わらない状態だった。
「ロイドは初めてだよね?」
これで終わりじゃない、ここからが本番。おれの言葉の意味をロイドは理解できたのか、無言でうなずいた。
「だったら、後ろからのほうがいいかな」
オレは前かがみに四つん這いになって、ロイドにお尻を差し出す。
「入れる前に、ちゃんとほぐしてね。できないなら、自分でやるけど」
ロイドがオレの入り口を、じっと見つめているのを感じる。
「恥ずかしいんだけど?」
ごめんね、ロイド。本当は気持ちいよ。もっと見て欲しいと思ってるけど、さすがにそんなこといえない。
ロイドが膝を折り、オレの入り口へと顔を寄せてくる。
ほぐしてといったからだろうけど、何するつもりだろ?
両腕はベッドに置いて身体を支えるのに使い、顔だけを近づけてくる。
さすがに、何をしようとしてるかわかった。
「汚いよ?」
お口でほぐしてくれるつもりなの? 嬉しいけど、そんなことしてれくる人、ほとんどいないよ?
「汚くない。それに少年姫士は、する前には身体を清めるんだろ?」
「うん、そうだよ。そう……だね、ちゃんときれいにしてあるよ。ロイドに可愛がってもらえるのが楽しみで、ドキドキしながら身体を清めたんだよ」
ウソでないけど、本当でもない。
今夜の相手がロイドだと知っても、オレは特別な感情を抱かなかった。
いつも通りの準備をして、いつも通りの心構えをした。
それだけ。
「それじゃあ、お願いしちゃうね。楽しみだな」
そっと、オレのお尻に顔を埋め、底の穴に舌を伸ばしてくるロイド。
彼の滑りがオレに与えられ、恐る恐るといった感じのわずかな蠢きがオレを攻める。
「いやなら、いいんだよ?」
「嫌じゃない。お前こそ、気持ち悪くないのか?」
「ううん。いいよ。ロイドに舐めてもらえて、嬉しい」
「だったら……」
再びロイドが、オレの入り口に唇をつけ、
ちゅくぴちょちゅくちゅぴっ
激しく唇と舌を使ってきた。
「ぁん♡ い、いいよ、きもちいい……よ?」
貪るようにオレの入り口をしゃぶるロイド。それだけでなく、舌を埋めようとまでしてくる。
オレは、自分のモノが大きくなっているのを感じた。
ロイドに舐めらながら、そっと自分のモノを弄る。
唾液が……ロイドの唾液が中に入ってくる。
これだけ緩めてもらえたら、
「もういいよ、ロイド。もう……できるよ」
オレの言葉に、ロイドが上半身を持ち上げる。
「大丈夫だから、思い切り入れてね」
お尻を突き上げるオレに、
「お前の顔を見ながら、したいんだけど」
ロイドがいったきた。オレは身体を起こしてロイドを向き、
「前からがいいの? 初めてでしょ? ちょっと難しいよ」
ロイドは首を横に振って、
「お前の顔を見ていたい」
はっきりと、そういった。
正直なところ、オレには彼の気持ちがわからなかった。
それは多分、本質的なところで彼が男で、オレが女だからだと思う。
女のオレには、男のロイドの気持ちが理解できない。
「うん、わかった」
オレは彼が望む通り、正面からの挿入を迎える体制をとる。
ベッドで仰向けになって大きく股を開き、両腕をそれぞれ左右の膝裏に置くようにして脚を持ち上げ、お尻を上げて入り口を露出させる格好だ。
この姿、初めてのロイドには刺激が強くないかな。
「きて、ロイド」
ロイドがオレの正面に身体を置いて、開いた股の間に下半身を入れてくる。
「わたしあまり動けないから、位置は自分でお願いね」
いわれた通り、挿入ポイントを探っていく。彼の先端がオレのお尻の谷間を行き来して、くすぐったい。
だけど、
……くにっ
ポイントを見つけたロイドの動きが止まり、オレの入り口が彼の先端を捕まえた。
「押しこんで……大丈夫だから」
グイッ
強く押しつけられる。オレの入り口は自分からロイドを飲み込むように広がって、先端は軽々と埋まった。
「痛く……ないのか?」
オレは笑ってしまった。
声は出さなかったけど、顔は笑みを浮かべただろう。
「大丈夫だよ? 心配してくれて、ありがとう」
ロイドのくらいじゃ、なんともないよ。
もっと大きくて太いのを、何度も飲み込んでいる場所なんだよ?
「入ってるよ。わかる?」
ロイドは、何も答えなかった。
「わたしの中に入ってるの、わかる?」
オレはもう一度聞いてやった。
「わ、わかる……」
何、顔赤くしてるの? 可愛いね。
「気持ちいい? わたしの中」
「わ、わからないよ。お前は、その……いいのか?」
オレは意識して可愛く微笑んで、
「もっと奥まで来てくれないと、気持ちよくなれないよ?」
ロイドは何かいおうとするように唇を動かしたけど、言葉にして何も聞こえてこなかった。もしかしたら自分の中だけで、オレに何かをいってくれたのかもしれないけど。
ぐっ……ぐいぃッ
腰を動かし、オレの奥へと向かってくるロイド。
「ぁ……ロ、イドぉっ」
まるっきり演技というわけでもない。自然と彼の名を口にしていた。
深く、奥まで。
少なくともロイドにとっては、ここが最深部なんだろう。
オレの名を呼びながら、激しく腰を動かすロイド。
初めてなのに正面からなんて、動きにくいでしょ?
そう思うけど、ロイドは無心に腰を動かして、オレを突き刺してくる。
苦しそうな顔。
辛そうな顔。
でも、少しは気持ちいいでしょ?
オレを見つめて腰を動かすロイドに、オレは笑みを返した。
「きもち、いいよ?」
そうつげて、演技だけど喘ぎをプレゼントする。
喜んでくれればいいけど。
そう思うけど、よくわからない。
男を求める男の気持ちはわからなくないけど、ロイドは違う。
彼が求めてるのはオレで、他の男じゃない。
きっとロイドは、オレよりも女性らしくて美人な少年姫士が目の前にいたとしても、全く興味を示さないと思う。
そのくらいには、オレはロイドという友達のことを理解している。
もう、限界だね。
男がイキそうな顔は、わかるよ。
「ロイド」
オレの声に、彼はかすかに微笑んだ。
そして深く突き刺して、
ドプッ、びゅくびゅるびゅくン……ッ!
オレの奥へと、熱いものを注ぎ込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
オレとロイドが、同じように息を整える。
オレを見下ろすロイド。こいつ、こんなに幼かったっけ?
本当にまだ少年だ。16歳なんだから、当たり前か。
オレなんか前世で30年、今世で16年だからな。
オレの中で、小さくなっていくロイド。やがて自然に、オレたちの結合が解かれる。
ロイドがオレの腰から手を離し、身体も離して距離をとる。
オレと完全に離れると、ロイドは両手で顔を覆って泣き始めた。
「泣かないで、ロイド」
彼の腕に手を置くオレ。ロイドは腕を振ってそれを跳ね除け、
「俺はお前と、こんなことしたいわけじゃなかったんだッ!」
悲鳴のような声だった。
自分で自分がわからない。なぜこんなことをしてしまったのか、理解ができない。
そんな気持ちなんだろうと、想像はできた。
オレだってきみに、こんな声を出させたくなかったよ。
「うん、わかってる」
この少年は、オレと肩を並べて戦いたかったんだろう。
騎士として、国のため国民のために。
だけどオレは違ったんだ。
オレは最初から、こうして強くてカッコイイ男性に抱かれたかっただけ。
ロイド……きみのような素敵な騎士と交わりたかっただけの、そんなやつなんだ。
「立派な騎士様になってね、ロイド」
ロイドは急いで着替えると、オレを一瞥して無言で部屋を出て行った。
あの目。
あの顔。
ロイドとはこれが最初で最後になる、オレにはそれがわかった。
油断すると溢れそうになるロイドのプレゼントを、オレは力を込めて体内に留める。
ロイドとは4年間、一緒の部屋で暮らしたんだ。
オレの青春時代は、ロイドとともにあったんだ。
剣を交え、励ましあい。同じ目標へと、騎士への道を一緒に走ってきたんだ。
涙が溢れる。
オレだってロイドのこと、友達だと思ってたよ。
泣きたいわけじゃないけど、オレは今、この世界での青春時代が終わったことを理解した。
そうだ。
オレはこの瞬間に、本物の少年姫士になったんだ。
EX
第一章を読み終わり、おれは本を閉じた。
「最初はまだシリアス路線なんだけど、話が進むごとにだんだんアレな展開になっていくところがまたいいのよっ! とくに騎士団長と恋人のふりして敵国に潜入したときに、敵国の王子に捕まって監禁されてたときの王子とのロマンスがまた最高にアレなのよッ」
と部長さんはいってたけど、最初でもう十分アレだと思いますけど?
というか監禁されてロマンスって、意味がわからない。
これ、咲久耶お姉さまが書いたんだよな?
車坂さんは、これを読んで感動したの? 泣けたっていってたけど、とりあえずここまでに泣ける要素はない。
おれにわかったのは、おれはたとえお話の中でもむさいオッさんが相手なのは嫌だなということと、これが書けるお姉さまは、おれたち三兄弟の従姉で間違いないということだ。
表紙を見る。
なんでこの主人公の元おっさん、こんなにロリっ娘みたいな顔で描かれてるだろ? さすがに可愛すぎだろ。完全に女の子じゃん。あと絵だと16歳には見えない。もっと幼く見える。
いろいろとヤバイなこの本。
17歳の親戚のお姉ちゃんが書いた話だというところが、一番ヤバイけど。
とりあえずオレは、これ以上この本を読み進める勇気が持てなかった。
本をパラパラとめくって、表紙の元おっさんの男の娘が肉ダルマみたいなヤツに襲われてる感じのイラストを見て、挫けた。
せっかくのサイン本だし、フリマサイトに出品してみようかと思ったけど、お姉さまは余計なことにサインの隣に、
「いとこのコウきゅんへ おねえさまより♡」
と書いていた。
いや、ホントに余計なことしてくれるなあの人。
これじゃ、売りに出せないじゃないか……。
本棚に置くのも嫌なので、机の一番下の引き出しに放り込んで、オレは勉強することにした。
おれ、むさいオッさんはイヤなんだってッ!
[End]
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